企業とICO(その1)

2018年は大企業がICOを行う年となるか

概要

2017年は、ICOの年となりました。

多くのスタートアップが、瞬く間に何十億円規模の巨額の資金を調達し、各々のプロジェクトをスタートさせています。

一方、2018年はここまで、既存の企業のICO発表が目立っています。

TelegramはICO史上最大規模となりそうなICOを発表し、フィルムメーカーとして有名なKodakは写真家向けのサービスを提供するために、ICOを行うと発表しています。

なぜ、既存企業もICOに目を向け始めたのでしょうか。

本記事では、既存の企業がICOに参加するメリット、デメリットについて考察します。

メリット

Bitcoinに対する人々の認知の向上

2017年が始まったとき、Bitcoinの値段はUS$1,000にも満たず、ブロックチェーンやBitcoinというアイディアは、まだ十分に普及していませんでした。

それが、今では連日のようにニュースメディアではBitcoinの価格が報じられ、ITに興味が無い一般の人でもそれらの名前を知っています。

現在の仮想通貨やブロックチェーンを取り巻く状況は、早くからブロックチェーンを支持してきた人々にとっては望んでいたものではないかもしれませんが、市場が広がりマネタイズが容易になったという点で、大企業が参加する条件が整ってきています。

エンジニアの成長

公開鍵暗号方式に支えられるブロックチェーンプロジェクトの開発チームには、特別な知識を持った特別なエンジニアが必要です。

2009年にBitcoinを発表したサトシ・ナカモトや、2013年にEthereumを発表したヴィタリク・ブテリンはとりわけ特別ですが、彼らに憧れるエンジニアが次々に登場し、日々学び、新たな地平を切り開こうとしています。

リスクマネジメント

各国のICOに対するスタンスが明らかになり、リスクマネジメントがしやすくなってきました。

中国ではICOが禁止されているため、アジアでICOを計画する企業は香港に法人を構えるようになっています。

世界で影響力が高いのは米国のSECですが、ICOに対して注意を喚起しているものの、現在のところ禁止はしていません。

これによって、企業はどこの国でどのようにサービスを展開することでリスクを抑え、リターンを最大化することができるのか、ある程度の予測が立つようになりました。

ユーザーの囲い込みが容易である

新規のサービスを始めるときに企業が頭を悩ませるのは、どうやって新規ユーザーを獲得するのかということですが、ICOではその心配はありません。ICOに参加し、トークンを保有する者が、自動的にサービスのユーザーとなるためです。

すなわち、新規ユーザーの誘導と課金を始めに同時に行っているようなものなので、企業のマーケティング部門にとってこれほど嬉しいことはないでしょう。

企業自体の知名度向上

米国Kodak社は、今回のICO発表で、多くのメディアに取り上げられ、1日で株価が2.5倍となりました。同社は2012年に破綻し、最近再上場を果たしたばかりの企業で株価も低迷していたので、この値動きには多くの人が驚きました。

ICOをいち早く行うことで、企業は自社が次世代技術に目を向け、積極的に事業を展開するつもりであることをアピールできるでしょう。

デメリット

もっとも、大企業がICOを行うリスクも依然として存在します。

各国の法規制機関の動向は必ずしも定かではなく、例えば米国SECがICO規制などを発表すれば、世界中のICOを計画する企業に影響が及びます。

また、ICOによって仮に多額の資金を調達することができたとしても、その資金を有効に利用できなければ、投資家の期待は裏切られることとなり、企業に対する不満が高まるでしょう。しかし、どのプロジェクトが成功するのか、まだ十分なモデルは確立されていません。

結論

既存の企業がブロックチェーン業界に参入し、ICOを行う環境は整いつつあります。

2018年はいくつかの先進的な企業がICOを実地するでしょう。

次回の記事では、どの業界・業態の企業がICOを実地しうるのか、考察を加えたいと思います。

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