ICOと国内法規制(その2)

ICOはファンド規制に当たりうるか

概要

2017年は多数のICOが行われ、ICOによる調達額がVCからの調達額を上回るという報告もなされています。

シード段階のスタートアップとして、リスクなくこれほど巨額の金額を調達できる資金調達方法は魅力的でしょう。

一方で、無計画なまま、とりあえず資金調達をするためのICOや、悪意を持って詐欺的な目的で資金を調達するICOも後を絶たず、中国を始めとしてICOを禁止・規制する国も現れています。

2018年1月12日現在、日本国内でICOを直接禁止する法律は存在しませんが、既存の法律との関係でICOが抵触する可能性は十分にありえます。

先日は第1弾として、仮想通貨法との関係でICOの法的規制の可能性を論じました。

今回は第2弾として、ICOと金融商品取引法によるファンド規制の抵触の可能性について考察します。

金融商品取引法によるファンド規制

日本国内でファンドの募集を行う場合、原則として第二種金融商品取引業の登録が必要となる(金商法2条2項5号、同条8項7号等)。同法は複雑なため、詳細は各自公式サイトより確認してください。

以上の条文で、ファンドとは以下のように定義することができます。

ファンド(集団投資スキーム):

組合契約等に基づく権利で、出資者が出資・拠出した金銭を充てて行う事業から生じる収益の配当 などを受けることができる権利

特に、ほとんどのICOは、ホームページなどで不特定多数の人々に対して募集を行うため、公募ファンドにあたりうるのではないかと考えることもできます。

BitcoinやEtherで払込みを受ける限り、ファンドには該当しない?

もっとも、金商法上のファンド規制は、「出資者が出資・拠出した金銭を充てて行う」と明記しています。そして、BitcoinやEtherについては、仮想通貨であり、金銭ではないことが、仮想通貨法によって明らかにされました。

法 2 条 2 項 5 号

ー(略)ーのうち、当該権利を有する者(以下この号において「出資者」という。)が出資又は拠出をした金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)を充てて行う事業(以下この号において「出資対象事業」という。)から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利であつて、ー(略)ー

従って、法律の文言に忠実に解釈すると、仮想通貨によって払込まれるICOは、金商法のファンド規制によっては規制されないといえます。

従って、ICOを行うに当たり、第二種金融商品取引業の登録は必要ないと考えられます。

司法判断が異なる可能性も

もっとも、これはあくまで行政が定めた法律上の解釈であり、今後、ICOについて司法問題(=裁判)が起きたときに、どのように判断されるのかということは別問題です。

特に、今後BTCやETHの普及が進み、金銭とほぼ同様の機能を社会で果たすようになったときに、金商法上のファンド規制を仮想通貨による払込みの場合にも適用するという判例が現れても不思議ではありません。

また、金商法自体が改正される可能性もあります。

結論

ICOは2017年に活発化したばかりであり、まだ紛争になっているケースも国内では見当たらないため、しばらくはICOはファンド規制に当たらないという状況が継続するでしょう。

もっとも、長期的視点に立つと、どのように法令が変化していくかは不明なため、投資家の視点に立ち、誠実な事業を行うことが、事業継続のためには大事となるでしょう。

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