もう一つの地球

Okamoto Ken
BlockchainLock
Published in
6 min readSep 3, 2018

私事ですが、2011年から5年間東京から見た地球の裏側、ブラジルのサンパウロにて生活をしていました。当時は年に3から4回日本へ一時帰国しており、出張する度にブラジルの家を出てから日本でチェックインするまでに30時間以上を掛けて移動をしていました。地球は大きいのです。

2008年にトーマス・フリードマン氏が「フラット化する世界」という有名な本を出しました。その中で、氏はインターネットの発展や、中国、インド経済の発展で世界は一体化し同一の条件で競い合う世の中になると主張しました。

それから10年、確実に氏の主張は現実のものとなってきています。ソフトウェア開発に限っていうともはや国境はありません。ソフトウェア開発のエンジニアは住みたい都市の英語が公用語の会社を選び移住していくのです。もしくは移住自体が古い概念かもしれません。そういった開発者は家から働き、インターネット上のコミュニケーションツールがあればパソコン一つで仕事を受けます。そして開発者自らが参加したい、モチベーションの湧くプロジェクトを選び参加していくのです。副業解禁を議論している会社はそういうスマートな開発者のモチベーションが 湧く選択肢から外れていることを認識する必要があります。

さて、ブロックチェーンの本質は度々説明していますように価値の移転です。上記のコンテキスト考えるとどのようなことを意味するのでしょうか?

インターネットの功績は世界を情報網でつなぎフラット化したことです。インターネットの力により世界の情報格差がなくなり、時代の潮流をしっかりと読んだGoogleやFacebookなど情報を基軸としたインターネットサービス企業が世界有数の規模の企業に成長しました。奇しくも「フラット化する世界」が出版された翌年に、サトシ・ナカモトという名乗る人物がビットコインの論文をインターネット上に公開することでブロックチェーンの時代は幕開けました。

サトシ・ナカモト氏が目指したのは国境や障壁のないP2P型電子マネーシステムです。その野心的な試みにしては謙虚なインターネットへの論文の公開は、熱狂的信者により瞬く間に世の中に広げられ、2017年の仮想通貨バブルを作り上げました。

ビットコインの内在的価値については多くの議論がされてきましたが、そのほとんどが、その適正な時価総額の話です。しかしながら、我々が考える主要なビットコインの発明は、参加者が自分の利益しか考えていない環境下で民主的にコンセンサスが得られる仕組みを考え出したことと、そのコンセンサスが得られる仕組によりP2Pでの価値の移転を実現させたことです。

ではこの価値の移転とは何でしょうか?ビットコインを例に取ると、ビットコインが資産価値であり、その移転とはビットコイン枚数がAさんからBさんにP2Pで移転することです。P2Pで世界中に繋がる点がポイントです。その事により国境や障壁のないブロックチェーンネットワークでできた価値移転の世界がもう一つできたことを意味します。

もし、このもう一つの世界で労働契約が結ばれたら、もし、このもう一つの世界で不動産が取引されたら。20年前にメディアがこぞって自らのビジネスの守るためにインターネットという得体も知れないものの研究を始めたように、今銀行が必死にブロックチェーンの研究を始めています。それは、潜在的には銀行がいらない世界がもうそこにあるからです。

クリプトをやっている一部の人々を除き殆どの人がまだ気づいていませんが、実際に既にTelegramの向こう側にはもう一つの世界がありそこで、労働サービスや金融サービスの提供が既存の仕組みを飛び越えて行われています。

参加している人々の中でそれが脱税目的である人は殆どいないと思います。皆が参加するのは、それが理にかなっているからです。メッセージ一つで責任者と繋がり、必要であればその場で音声会議、もしくはビデオ会議で話します。そして対価はビットコインかイーサリアム払いです。

インターネットの時代は地球の反対側の情報が見つかってもその先に行くのが非常に困難で、一部の勇気ある冒険家か体力のある大企業だけがその利益を享受できました。今は世界のどこかの街角の少年が英語を話せればプロジェクトチームの一員になれるのです。

この動きは政府がいくら目くじらを立てても、それをあざ笑うかのようにP2Pで広がり、それは誰にも止めまれらません。政府に必要とされるのはその現実を理解し、そのもう一つの世界に適合する形で、ブロックチェーン市民のための規制をグローバルな視点で作り上げていくことです。

例えば将来ある日本企業がイーサリアムのスマートコントラクトでインドのフリーランサーに仕事を頼んだとします。このイーサリアムがサービスの提供に支払われたと証明する手段はありません。世界のどこかの口座にマネーロンダリングのために送りつけたのと取り引きの履歴上は変わりません。国税局はスマートコントラクトのコードを読むのでしょうか?必要であれば読むでしょう。しかし取引相手の情報はイーサリアムのアドレスだけです。それが日本在住者のものなのか、地球の裏側の国の居住者のものなのか誰も分かりません。それでも発注側は申告者としてできることをせざる得ないので、手作業で仮想通貨取引履歴を管理し、誰にいくら何に基づいて送金したかを記録していくことになります。同じことを受け取り側が行ってくれることを祈るだけです。

このように、考えなければならないことの難易度も、スケールも格段に拡大してきています。それを仮想通貨という無価値なものを売りつける詐欺師たちの話だと見るのか、このもう一つの世界をその世界に一歩先に踏み入れた人たちと共に探索するのか、それはそれぞれ人々の自由な選択肢です。

我々には、自分たちが1990年代の大学時代に初めてインターネットのネットワークの可能性を見た、その時以来の興奮と、それを上回る可能性としてのブロックチェーンの世界が見えています。なぜなら、我々のスマートフォンの向こう側にある、情報だけではない価値が移転するもう一つの地球が既に存在するのを知っているからです。

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