Okamoto Ken
BlockchainLock
Published in
Jan 8, 2022

より良いインターネットに貢献できる小さな一歩を

新年あけましておめでとうございます。恒例の一年に一度きりのブログになりましたが、2021年度を振り返り、2022年を見通してみたいと思います。

2021年度は引き続きパンデミックが世界を襲い、新しい生活様式、新しい仕事形体が定着してきました。一時潜めていたコロナも、年を明けてオミクロン株が増加してきたという報道ばかりとなりました。テレワークは続きそうです。都内の電車は年末にかけていわゆる満員電車に戻りつつあったものの、パンデミック前に比べると圧倒的に空いていると実感されているのではないでしょうか。

社会はより分断が進み、所謂大手町の大企業に務める上級国民の皆様は在宅ワークが定着し、その主たる輸送手段である東海道線は比較的空いている一方、下級国民の輸送手段と乗客自らが卑下する京急線はパンデミック下でも満員であったようです。遠くを見ると、アメリカのバイデン大統領就任によるアメリカの分断、近くを見ると東京オリンピックでの担当者の過去を暴き出してのバッシング。もう少しミクロで見ると、街角で頻繁に起こるの罵り合い。世界の分断化は進み、人々はイラつき、日本はかくも住みにくい国になりました。

社会の分断で言えば、個人的に今の社会の示唆に富むニュースはは吉野家を始めとする、ファーストフード店の値上げです。低賃金にあえぐ多くの国民と、資本家である経営者との見解の違いが明確になりました。安い牛肉のグローバルな買い負けであるとのことですが、そもそも買い負けるということは、日本の経済成長が他国に負けているということです。日本国の将来を考えた時に、それは日常のコストが上がること以上に、危機的な経済動向だと思います。

私は新卒で住友電気工業という会社に務めました。本田技術研究所向けのワイヤーハーネスの営業活動に従事していまいました。新卒ながらに感じたことは、自動車メーカー側のコスト削減要望に従い続ければ、日本はみんな貧乏になってしまうということでした。まだまだ学生あがりでしたので、この値下げ要請がいかに日本の国力を削ぎ、1億層貧乏をもたらすかという論文を書いた記憶があります。

それから20年経ちましたが、若き日の青年が危惧した社会が現実のものとなりました。ファーストフードの値上げはされども、従業員の賃上げはされないというデストピア社会の到来です。従業員も勤務を終えればいち消費者です。賃金を据え置き、商品の値上げだけが行われるということは、その消費者の購買力が落ちたままで、買える量が減ったということです。

流行りのSDGsの文脈で考えると、こういった企業活動自体がサステナブルではありません。地球環境は大事なことですが、そもそも自社の社員を犠牲にして企業活動もSDGsも成り立つわけはありません。もし従業員に賃上げするために商品価格を上乗せすると公言する企業があれば、その商品を買いたいと思う方も一定数いらっしゃるのではないでしょうか。それがサステナブルではないかと思います。

リモートワークが日常となると、人と会えないことに対する人間の欲求を解決するソリューションが出てきました。WEB会議ツールが一般的なものになりました。「Zoomで宜しいでしょうか?」が営業活動の往訪を体よく断る代名詞となりました。多くの会社がメタバースの話を始めました。Facebook はその社名をMetaに変更し、来るべきメタバースの可能性に全力で舵を切りました。

Facebookを嫌う人は多いようですが、「人と人とがより身近になる世界を実現する」ことをミッションとするFacebook が、メタバースに全力で取り組むのは理にかなっています。宇宙もロマンがありますが、人は人と繋がり生きていくものです。個人的にはGAFAMという意味で巨大テック企業は嫌いですが、巨大テック企業だからこそできることとして、宇宙ではなく、メタバースを残りの人生のミッションとするザッカーバーグ氏を全力で応援したいと思います。

実はブロックチェーン業界では中央集権の権化であるFacebook の評判はすこぶる悪いようです。通貨バスケットでビットコインに対抗しようとしたザッカーバーグ氏渾身のリブラが、ドルに代わる通貨を作ろうてしているとして政府権力者を始めとする既得権益者を激怒させました。同時に分散化社会を目指すブロックチェーン業界からは、ブロックチェーンの中央集権版的な真似事として大きなひんしゅくをかいました。今回のメタバースでも、ブロックチェーンのアイデアを流用して仮想空間内の通貨を作ろうとしていることは明白です。Metaはどこへ行くのでしょうか。

ひとつブロックチェーン業界の人間として言えることは、このメタバースと暗号資産は非常に相性が良いということです。例えば我々の目指すところの、P2P空間の貸し借りに関しても、現実世界の空間が無い方がよほど簡単です。我々が一生懸命開発しているスマートロックも不要です。メタバースの世界に広がるホテルにはいつでも瞬間移動ができて、その世界で通用する通貨的なものを払えば簡単に泊まれます。

もしメタバース自体がブロックチェーンの技術でできているならば、スマートコントラクトでお金を払った瞬間に鍵が飛んできます。そしてそれを実行するために、中央集権的なサーバや機関は不要になります。

「これって私たちがやりたかったことだよね?」って最近よく思います。

同時に最近良く思うのが、「インターネットの力でビジネスをするのはいいけど、インターネットとはもともと無料なものだよね。。。」1990年代に、京都の田舎の青年が感じた感動は、「こんな有用な情報がタダで手に入る場所とはなんて素晴らしい世界なのだろう。」という、知的好奇心に対する人生最大の刺激でした。ビジネスをしているとどうしてもプラットフォーマーとして囲い込みの方向に行きやすくなります。そういった動きをするプレーヤーに物を申すには、私たちはあまりに小さい。しかし、明日を変えるために今日の何かを変えなければいけません。ですので、そうした行動に対して自戒的な意味も含めて、今年度改めて自問したいのは、「自分達はインターネットに何を貢献しているか」ということです。

今までインターネットやブロックチェーンはコミュニティの力で進化を遂げてき、今後もコミュニティが進化を加速させていきます。流行りのSDGsを謳うのも良い。地球環境は何よりも重要です。しかし、メタバースを可能性を探求するザッカーバーグ氏のように、あるいはそれと違ったやり方でインターネットの可能性を探ることでも、世の中をより良くすることができると思います。私たちはテクノロジー集団です。私たちなりの方法で、より良い世の中を作るため、インターネットに貢献することが私たちの使命だと感じています。私たちなりのSDGsとも言えるかもしれません。

その貢献対象は、ブロックチェーンやメタバースを含めた広義のインターネットとしてとらえて、自分たちのできる小さな貢献を続けていきたいと考えます。それはブロックチェーン技術を利用した分散化システムでもよく、メタバース上の新たな資産へのアクセス権でもいいかもしれません。あるいは、ブロックチェーンへの敷居を下げる何らかのサービスでも良いでしょう。もっと身近なものでいえば、私たちのビジネスに利用されているソフトウェアのオープンソースでもいいと考えます。より良い世の中を作るために、自分達のソフトウェア資産の一部を何らかの形でインターネットのコミュニティに貢献できれば、大きな世界の進化の小さな一歩となるはずです。

2022年は、より良い世の中に向けた小さな一歩を自分達の信じる方法で推進していきます。

本年も宜しくお願い申し上げます。

ブロックチェーンロック株式会社
代表取締役 岡本健