ポストコロナとブロックチェーン

Okamoto Ken
BlockchainLock
Published in
12 min readMay 4, 2020

最後の投稿から早くも1年と3ヶ月が経ちました。人によっては岡本は何をしているのかと思っていた方も、そもそも忘れていた方もいるでしょうか。2020年5月現在、ブロックチェーンロック社も岡本も元気にやっています。最近の記事の殆どは自社メディアであるスペースレンタルトゥデイ(https://spacerental.today)に投稿しております。必然的にこちらMediumに投稿する時間が少なくなりお詫び致します。また、昨今の新型コロナ感染症の影響で、経営環境も非常に厳しく、ゆっくりと立ち止まって考える時間がないことも大きな課題となっています。

とはいえMediumはブロックチェーンロック社としてブロックチェーンの話をする唯一の媒体と考えているため、回数は少なくても継続して投稿をしていきたいと思います。

さて、その後1年とちょっと、新型コロナウイルスと共に、ブロックチェーンを取り巻く世の中はどう変わったでしょうか。前回の経産省の報告書のブロックチェーンの活用が期待される5つの項目に関して、ブロックチェーンロック社としての取り組も確認しながら、再度レビューをしていきたいと思います。

再掲:ブロックチェーンで社会変革が期待される分野

1.価値の流通・ポイント化、プラットフォームのインフラ化

2.権利証明行為の非中央集権化の実現

3.遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現

4.オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現

5.プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

1.価値の流通・ポイント化、プラットフォームのインフラ化

新型コロナでひとつ加速されそうな分野があるとするならば、「お金を触らない」という意味でのキャッシュレス決済です。一方で、ポイントシステム業界は楽天とTポイントを双翼にほぼ変わりなく成長しています。少しの利便差の引き換えに、個人情報を渡すのかという視点で考えた時に、この1年の動きを見る限りは、取られている情報の多さには驚きながらも、「その程度なら継続利用する」という意見がマジョリティのようです。実際に中国では日本からの想像を絶する監視社会ですが、新型コロナ感染症で明らかになった事実は、安全のためなら個人の人権は少々制限されえても仕方ないと考える人々が増えたことです。一般市民がスマホだけで感染者がどこの地域でどういう店舗に出入りしたかまで詳細に知ることができます。日本では東京23区レベルでの情報を出すのに2ヶ月程かかりました。この流れを考えると、中央集権者から独立した、人々のグロー−バルなデジタル通貨が世の中に出回る可能性は、昨年よりも少し後退したと言えるかもしれません。

ブロックチェーンロック社ではネイティブトークンのBCLの他に、そのBCL上で発行できる、「BCLポイン」というサービスを始めました。これは従前のポイントシステムをブロックチェーンで発行するという野心的な試みです。おまけとしてのポイントから初めて、前払い式支払い手段を追加する準備を進めております。特に、当社の場合物件を持つホストと、物件を利用するゲストがいるマーケットプレイスを運営していますが、各ホストが自分でポイントや前払い式支払い手段(所謂電子マネー)を発行できる環境を提供していく予定です。ここで課題となるのは、通常の商取引として、どうしてもキャンセル対応をする必要がありということです。P2Pのポイントをキャンセルするのは実はものすごく大変です。そもそも購入時はゲストは自分のウォレットの資産に秘密鍵で署名してポイントを送信しています。P2Pでホストにポイントが渡ると、仮に何らかの条件で自動キャンセルを走らせたい場合でもそれはシステムからはできません。クレジットカードでしたら、システムがカード会社のAPIを叩くだけでできてしまうのことが、ブロックチェーンではできません。ホストに一旦届いたポイントを払い戻すには、ホスト自身が自分の秘密鍵で再度送信の指示に対して署名をしないといけません。これを考えるだけで、ブロックチェーンのポイントの社会実装が当面先か、そもそもそのような利用はフィットしないのかということが分かってくると思います。

2.権利証明行為の非中央集権化の実現

新型コロナ助成金関連で、納税証明や、登記の重要事項説明書等多数のお役所系書類が必要となりました。いざ役所まで取りに行かれた方は分かると思いますが、大変な混乱です。もちろん書類を取りに来た経営者も社運がかかっていますので、当然と言えば当然です。

そのような中で、竹本直一IT相がハンコ文化がなくならないのは、「所詮は民間の話」といい大きな反響を呼びました。その反響のほとんどが、「民間より役所だろ、デジタル化が進んでいないのは!」という憤りです。もちろん上記の納税証明や、謄本等をオンラインで申請することは可能ですが、初心者がいざ申請しようとしてすんなりと申請できることはまずありません。そのような立場で発言される方は、民間の企業がどれほどUI/UXに執念とコストをかけて改善してきたかという事実をご存じないのだと思います。そのUI/UXが「いけてない」のは、国や自治体としてデジタルサービスをどういう方向に持っていきたいのかというビジョンがないからです。数年前にビットコインが流行り、ブロックチェーンが流行った際も、地方自治体の首長や役人はその実態を勉強して、口々にブロックチェーンがどうのと言っていました。それから3年もう誰も言う人はいません。ここにきて、急遽テレワークやリモートワークという流行り言葉で、デジタル化を進めさせようとしていますが、流行りものに乗るだけでもともとの国としてのビジョンがないため成功するわけはありません。個人的には「公共サービス」 as a Serviceくらいの、劇的な取り組み方で行政システムのIT化を民間に委託しないと、現状は当面は大きく変わらないと思いす。

3.遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現

ここが実社会でブロックチェーンが一番活用しうる分野だという確信の元に、ブロックチェーンロックを創業しました。2年経った今、自分の通信簿を見ると、5点満点の2点くらいでしょうか。1点はブロックチェーンは難しいものだということを実際に触ってみて、開発してみて理解できたこと。2点目はシェアリングの際に必須となるIoTデバイスの開発は終了したということです。ブロックチェーンロック社では現在「KEYVOX 」というブランドでスマートロックと、スマートロッカーを販売していますが、これはこれで非常に良く出来た製品、サービスだと自負しています。例えそれがブロックチェーンの可能性のほんの一部しか利用していないとしてもです。

結局、ブロックチェーンの力でシェアリングをしようとすると2つの大きな課題をクリアしないといけません。

1つ目は、P2Pのデジタル通貨必要なことです。この1年で、PayPayやLINE Pay等多数のQR決済が興隆してきました。しかしこの中央集権的デジタルマネーを使っている限りはブロックチェーンは不要であり、それは従前の中央集権的電子マネーとIoTプラットフォームの組み合わせで終わります。ブロックチェーンが素晴らしいのは個人が巨大なネットワークの一翼を担いメッシュ状のネットワークを作っていくことです。そのネットワークの実現には、既存の電子マネーではなくビットコインのようなP2Pのデジタルマネーが必須です。

もう一つが、秘密鍵の管理です。自分の家のカギのように、ネットワーク上にある資産の秘密鍵を自分が保有することは素晴らしいことです。一方で、自由には責任がついて回ります。秘密鍵を無くしたら全ての資産がなくなります。当たり前といえば当たり前のことですが我々現代人はその深刻さを理解して生きていません。確かに現金をなくしたら諦める人は多いでしょう。金塊を盗まれても諦める人が多いかもしれません。それは所有権が物理的に保有している人に属するという資産の性質だからです。一方で、銀行預金や不動産などはどうでしょうか?銀行には預金保護が働き1口座1,000万円までなら政府に保証されます。通帳や印鑑を無くしても、本人ということが何らかの方法によって証明されればその預金にアクセスできるでしょう。不動産に至っては更に明確で、家のカギを無くしたところで登記が抹消されるわけではありません。また破錠して家に入ることもできます。このようになんらかのバックアップ手段が存在する過保護にされた世の中に生きる現代人にとり、ある日突然「秘密鍵」は命の次に大事です、無くしたら終わりです。と言われても、どうすることも出来ないし、そんな資産怖くて持ちたくないというのが普通の人の心です。

この2つの課題に対する回答が用意された時、P2Pでのシェアリングは爆発的に増えていくと思います。ブロックチェーンロック社では通信簿の残りの3点をこの課題を乗り越えることで実現していきたいと考えています。

4.オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現

この4つ目のサプライチェーンに関するブロックチェーンの社会実装に関しては、当社自身がフォーカスしていないこともあり、昨年も割愛をさせて頂きました。今年も同様ですが、ざっと世界を見渡しでも実際に使われ始めたという実例は聞きません。仮に使われているとしてもそれは伝統的データベースを分散型台帳にしたというものが殆どです。

とはいえ、当社も多数の貿易実務を実施しています。送金、船荷、関税、倉庫どれをとっても非合理的なやりとりばかりで、世界的な改善の余地は大いにあると感じています。

5.プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

新型コロナ感染症の影響で、大きな進捗が見られそうなのがこの分野です。ニューノーマルと言われる新しい社会生活は、今まであたりまえであったことがあたりまえでなくなり、新しい当たり前が生まれてくると言われています。それは、2メートル離れて話すソーシャルディスタンスであったり、食事を横向きに並んで食べると言ったことであったり、テレワークであったりすりわけですが、その根底にある理由はもちろんウイルス感染対策です。ウイルス感染対策としてそのようなニューノーマルが浸透するにつれて、人々の心の中には、自分は伝染りたくないという恐怖心が満ちていきます。そうなるとよりニューノーマルな社会生活が進み、「人と接触したくない」という新しい動機が生まれてきます。そのような中で、非対面、非接触のビジネスが増加するのは明白であり、そのビジネスを支える非対面、非接触のソリューションも活況となってくるでしょう。

簡単な例として、飲食店のデリバリーピックアップボックス型のスマートロッカーを考えてみましょう。ソーシャルディスタンスの一環として、どうしても飲食店内部で人と一緒に食事をするという習慣自体に恐怖心を覚える人が増えていきます。そうするとデリバリーの需要が増えると同時に、対面で受け取るデリバリーですら接触と考え、人から受け取りたくないという需要が出てきます。そこで活躍するのがデリバリーボックスです。スマホから注文した商品を店頭のフードボックスで受け取って帰る、とういったニューノーマルが普通な生活になるでしょう。

この時、このスマートロッカー自体が一種の自動販売機として機能して、お金を払えばカギが開くという役目を果たします。もともとイーサリアムのスマートコントラクトは契約の自動販売機というコンセプトで開発されていますので、相性が悪い訳はありません。このような新しい需要から、新しい経済が生まれ、その経済活動を回すために、新しいテクノロジーが生まれ、そのテクノロジーがブロックチェーンであってもいいのではないでしょうか。

確かに、先述の通り、まだまだブロックチェーンの社会実装には大きな課題があり、乗り越えないといけない山がたくさんあります。しかし、幸か不幸か、折角大きく世の中が変わろうとするこのポストコロナの時代に、新しい技術の社会実装があってもいいと思いますし、むしろそうあるべきだと思います。ブロックチェーンに繋がったデリバリーボックスは、現存するスマートロッカーとは何が違うのでしょうか?それはP2Pで音楽シェアリングを実現したNapstar的なものでしょうか?誰かが預けた何かが取り出せたりするのでしょうか?ビットコインのようなあらゆるP2Pデジタルマネーでの取引ができる機械でしょうか。いや、きっと何も変わらないと思います。むしろ既存のスマートロッカーより少し複雑でしょう。でもP2Pで繋がるスマートロックやスマートロッカーが世の中に増えてくると何かが変わると思いませんか?変わると思う人がいて、同時に変わらないと思う人がいる、それが世の中です。しかしながら、ブロックチェーンロック社はそのような少年的なワクワクする楽しみを満喫しながら、日々のIoTビジネスをやっています。理想を持って、実在する課題解決に取り組んでいると、答えが分からなくても、その謎解きをする過程で何かが見つかるかもしれません。もちろん何も見つからないかもしれません。次の記事を書くのに1年開ける気はないのですが、いずれにせよ1年後この記事を振り返った時には、ちょっとした何かが見つかっている気がしています。

非対面ソリューションはKEYVOX <スマートロック・スマートロッカー>
https://keyvox.co

ブロックチェーンロック株式会社
https://blockchainlock.com

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