過去と未来をつなぐもの

Okamoto Ken
BlockchainLock
Published in
4 min readJun 28, 2018

サトシ・ナカモトのビットコイン(Peer-to-Peer Electronic Cash)の主要な発明は、複数のお互いに信用ができない環境下でどのようにコンセンサスを取るかというコンピューターのコンセンサスのとり方に関する課題を解決したことです。それぞれが自己の利益のために行動しつつも、民主的に合意を得るという形で長年の課題を解決しました。

一方で、ビットコインのコンセプトをベースに通貨の台帳を様々な取引の台帳に進化させることで、世界のコンピューターになろうという野心的なプロジェクトとしてイーサリアムは誕生しました。その後大きな発展を遂げましたが、イーサリアムが抱える根本的な2つの課題は未だに解決されていません。

一つ目の課題は、例えば不動産取引が代表的な例となります。不動産取引をブロックチェーンに載せる事の課題は、ある不動産の現物が台帳上移転されたと保証する第三者がいないと成立しないということです。必ず政府機関など中立な第三者がその取引を保証する必要があります。不動産取引へのスマートコントラクトを利用した不動産台帳の実装を試みている政府は世界にいくつかありますがまだまだ少数派です。

もう一つの課題は、本格的なプログラム環境を持つことにより、バグやセキュリティホールの出現が不可避だということです。強力なコミュニティがあるとはいえ、企業がサービスとして使う際にセキュリティに対してコントロールを持てないのは致命的です。

我々はブロックチェーンとスマートコントラクトの特徴を活かしつつ、スペースレンタルビジネスを通してこの2つの課題に取り組みました。

不動産取引に中立な第三者が必要なのは、その土地や建物を所有権に関わらず物理的に開放されていれば誰でも利用できてしまうためです。最終的に居座った時、居座られた時に紛争を解決してくれる行政機関がなければ世の中、醜い言い合いや争いが絶えなくなるはずです。しかし、もしその入口に権利を持っている人しか開けられない鍵があればどうでしょうか?支払いと同時に所有権が移転し鍵が開けられるという理想的なスマートコントラクトのユースケースが実現できるはずです。デジタルでないものの所有権を移転させるには、デジタルと非デジタルの行き来を保証する何かが必要でであり、スペースレンタルビジネスの事例においてはそれは鍵です。

一方、鍵が物理的に壊れたらどうなるでしょうか?また、その鍵はそもそも誰が作るのかという問題が残ります。我々はこの課題をイーサリアムの2つ目の課題であるセキュリティの問題と同時に、サービス提供者を明確に定義することで解決を試みます。すなわち、信用を担保する第三者が全く「いない」状況ではなく、第三者がいない状態でも動くようにサポートする企業がいるという状態です。例えば鍵が壊れたら鍵を直す業者が必要です。いくらP2Pのトランザクションだからといって、自ら鍵を製造してメンテナンスも実施することは現実的ではありません。結果、どこかのメーカーが製造した鍵を使うことになります。何かのトラブルがあったらその鍵の提供会社が問題を解決します。同様にネットワークのセキュリティホールやバグであっても、鍵を通してサービスを提供している企業がサービスのプロバイダーと定義され、その企業が責任を持って自社のサービスが安全に完全に提供されるように努力することとなります。このようなサービス提供者の概念を、今までの中央集権者からブロックチェーン上のP2P技術のサポート技術提供者に置き換えることで、スマートコントラクトの実用性は飛躍的に向上します。

これをビットコイン原理主義者や無政府主義者は、結局は中央集権的な企業に命運を握られているとか、シングルポイント・オブ・フェイラーがあるので分散技術ではないと言い立てるでしょう。しかしながら、社会にとり重要なイノベーションとは、将来の技術を現実的なソリューションに落としていく過程であり、その第一歩を踏み出す強い志しと、裏打ちされた技術力、そしてそれを遂行する実行力であるはずです。このような努力を通してブロックチェーンインフラは過去と未来をつなぐ共通の社会基盤として進化を遂げていくのです。

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