2021年 その曲がり角の先に

Okamoto Ken
BlockchainLock
Published in
Jan 2, 2021

人類が今まで経験したことがないようなパンデミックに襲われた2020年。夏場以降コロナ以前に戻ると思いきや、感染者数は未知の領域に突入。先が見えない中での2021年の始まりとなりました。思い起こせば去年の今頃マスクを付けるつけないという判断を、多くの人が自分なりの判断基準でしていました。1年経った後、マスクをするのは一部の「気にしない」人々を除けば当たり前となりました。個人的には人生で初めて一年以上風邪をひきませんでした。いかに手洗い、マスク、そして人と接しない、会食をしない、という新しい生活様式が感染症に効果があるのかを実感した次第です。

非対面でもビジネスは進みます。非対面であることが多くの新しいイノベーションを生みました。今では会社勤めをする方なら誰しもZoomという単語、サービスを知っています。これも驚くことですが、1年前は一部のIT系の会社以外は誰も知らなかった単語です。同じく、オンライン展示会やライブ配信など、技術的には何年も前からできていたのに、なかなか流行りきらなかったそれらの新しいビジネスが、あっという間に浸透しました。

それらのテクノロジーの進化に伴い、今まで、出向かなければ対応できなかった商談が、オンラインで平然と行われ、それに対して文句を言う人もいなくなりました。東京ー大阪間を山手線に乗るように移動していたビジネスマンも、今では果たして電車代3万円の価値とは何だったのだろうかと考え出しています。

同時に日常生活においては、店に入る際に体温を測られ、アルコール消毒することが日常へと変わりました。今まで平気で触っていたドアノブやエレベーターのボタンを押すのをためらう人も多くなったはずです。コロナ前までは自動化といえばタッチパネルでしたが、もう誰もタッチパネルを触りたくなくなりました。代わりに音声案内や案内ロボットが増えていくでしょう。店で手持ち無沙汰に両手を前に合わせて、笑顔でお客様を待っているのは、不要なだけではなく、もはや対面を避けるという意味で迷惑ですらあります。

このように世の中が大きく変わった一方で、未だにモノを売るには実物を見たいと考える人が大半です。そのような中でも過去を振り返りオンラインショッピングが流行ってきたのは、1.返品保証の業者が増えたことと、2.ダメ元でも利便性の引き換えに知らないものを買う人が増えたことが大きな理由です。人それぞれの財布事情にも依存しますが、私の場合は1万円くらいまでは失敗してもまあいいかと思い、見たことも触ったことも無いものをネットの情報だけで買うことがよくあります。これは、実際に見に行く時間的コストが割にあわないことと、まあ、使えるだろうという正しい判断を鈍らせる正常性バイアスの仕業です。

しかし世界を広く見てみると、1,000万円近いのものがオンラインで何十万台と売れています。そうです、イーロン・マスク氏が率いるテスラの車です。既にオンラインへの全面移行を実施して1年以上経つ、テスラはショールームを除き順次実店舗を閉鎖していっています。もちろん世界の主要都市では一等地にテスラショールームがあり、そこで実際のテスラを見ることができます。しかし伝統的な試乗というスキームもイーロン・マスクにはコストのかかる無駄な投資のようです。テスラでは購入後7日間、もしくは1600キロ未満の走行であれば返品可能というスキームを1年ほど続けてきましたが、昨年末にそのサポートも終了しました。これによりテスラのオーナーになりたい人は何百万円の車の購入を、実車に乗ることなく決めなければならなくなりました。それでもテスラの販売台数と業績は堅調に推移しています。

このような事例から我々は何を学ぶべきでしょうか?全てがオンラインにシフトしており、今まで当たり前であった対面ビジネスが非対面となっていきます。「おもてなし」というおまじないワードで、自身の高コスト体制を肯定し、消費者に高額な請求をしてきた日本のビジネスは大きな岐路に立たされています。丁重に頭を下げられるよりも、自分の空き時間に必要な契約を自分のスマホからできることの方がよほど付加価値があるということを、若い消費者は既に気づいています。昨年ドコモのサポート業務の一部が有料になりました。これは、上記の笑顔で両手を揃えてお客様をお出迎えするのがいかに時代錯誤であったかをドコモ自らが認めたことになります。楽天モバイルの脅威にドコモ自身もオンライン専用のプランを提供するに至りました。月額2,980円と、8,000円、違いがドコモショップに行っていろいろ質問できる「だけ」であるならITリテラシーが高い若者が前者を選ぶのは必然です。

ブロックチェーンロック社ではビジネスプロセス全てをオンライン化することに注力しています。これは営業担当と話したい一部の顧客からすると非常にストレスを感じることなのは事実です。一方で、限られたリソースを最大限に活用するという文脈で考えると、全てをオンライン化し、サポートチケット化した方が「確実に」対応できるチケットの数が増えます。対応できるチケットの数が増えれば、多くの事象に接することができ、結果より多くの課題を解決し、サービス品質全体が向上することになります。営業担当という職種自体が存在しない当社ですが、お客様には名刺交換した担当に電話する前に、チャットやチケットで解決を試みていただくことが、全体のサービス品質向上に繋がることをお伝えしております。

今回のパンデミックは、非対面、非接触ソリューションを提供する当社から見ても多くの学びがありました。先述のタッチパネル端末はその最たる例で、多くの事業者がタッチパネル式自動化端末を検討していましたが、昨年の後半からやはりスマホでという話を多く聞くようになりました。今後顧客のスマホで、自社サービスの業務をやってもらうというう意味では多くの試金石的プロジェクトが走っています。この方向性には概ね賛成ですが、ポイントが2つあると考えます。

ポイント1.インバウンド向けの民泊等で一時流行ったチェックインタブレットは今後廃れていくでしょう。もともと長距離飛行機で飛んできた訪日観光客は、スマホの電池もWiFiやセルラーネットワークも無いだろういうことで、予約番号さえあればチェックインできるチェックインタブレットが重宝されました。しかし、当面外国人が来ないこと、技術の進化で、エコノミー機内でも給電できたり、格安のローミングサービスで、空港に到着して直ぐにインターネットが使える環境も当たり前となってきました。このような環境を鑑みるとチェックインのような短時間しかかからず、文字入力や写真撮影が多い業務は実は顧客の使い慣れたスマホ端末が最適とい結論になります。

ポイント2.一方で、長時間専有する業務はどうでしょうか?長時間専有する業務で当社に関係あるのはスキャン式ショッピングカートです。これはヨークベニマル様にご利用頂いていますが、顧客がスキャナーと重量センサーがついたショッピングカートでスキャンしながら買い物をし、最後に自動レジや自身のスマホで決済して退店するというソリューションです。このモデルは非常に伸びると見ていますが、一方で他社に顧客のスマホでスキャンしてもらうというソリューションもいくつか存在します。これに関しては既に中国で実績があり、顧客はスマホを必要な自分のタスクをするために持っているのであり、買い物中ずっと専有されることは非常に嫌がるという結果が出ています。その店舗では結局、顧客スマホでの買い物への不満が非常に大きかったため追加でスキャン型カートの追加購入を決めました。

このような事例から分かることは、顧客は短時間の文字入力や決済であれば自身のスマホを使うことを望む。一方で、長時間のスマホの占有は、自分がやりたいことをできなかったり、バッテリー残量が気になったりで、敬遠されるということです。

このように社会の流れと局所的事象を整理していくと、2021年はあらゆるビジネスのビジネスプロセスがより洗練されたものになっていくでしょう。そしてそのプロセスを通して顧客満足度を上げるポイントは下記の2点です。

1,顧客の満足度はいかに自分のやりたいタスクを自分の空いている時間で完結できるかにかかっていること

2.顧客は短時間のタスクであれば自分の端末を使いたいこと

最後に「ブロックチェーン」という名前を冠する会社ですので、我々が見る2021年をご紹介して終わりにしたいと思います。

多くの方が忘れていると思いますが、昨年末にビットコインの価格は300万円を超えました。これは仮想通貨バブルと言われた2018年を1.5倍も超えるものです。実態のない詐欺的なプロジェクトがあったことは事実ですが、多くの開発者の貢献により確実により価値がある資産に変わっているには事実です。そして何より相場は水物であり、相場が大きく動くのはそもそもビットコインのせいではありません。株式に関しても同じような歴史を何度も繰り返して現在の相場が形成されてきました。テクニカルや、財務指標分析で適正価格をはじき出す仕組みが出来たことと、各国政府の不断の金融安定化の努力で不正ができない仕組みを築き上げてきたことが相場安定化の理由です。それでも集団恐怖心理による暴落や、インサイダー取引、未公開株の不正取引の可能性ゼロではありません。ビットコインを代表とする暗号通貨も、相場の荒波を超え、二番底、三番底を経て、投資人口の増加と共に価格が安定化していくでしょう。実際に昨年後半から世界中の多くの伝統的金融事業者がビットコインという資産を自社のポートフォリオに追加し始めています。

私個人的にはビットコインの最大の発明は、参加者全員が自分のことしか考えていないのにコンセンサスが取られるという仕組みそのものだと思っています。ブロックチェーンロック社のビジネスに関して考えると、ドアの先の空間を悪用しようとして利用しても、何故か社会全体に役立ってしまう、そのような仕組みと世の中です。そんな世の中は来ないでしょうか?来るかどうかは我々の努力と社会情勢次第です。壮大な構想も第一歩である自由に動かせるIoTデバイスがなければ始まりません。そのような思いで日々非対面テクノロジーに磨きをかけています。

未来は誰にも予想できません。しかし、2021年は昨年より予想できる部分が多いのは事実です。ブロックチェーンロック社では、この曲がり角の先に「見えている」部分での地の利を最大限に活用することで、非対面テクノロジーをリードしていく所存です。

本年も変わらぬご指導、ご愛顧の程、宜しくお願い申し上げます。

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