海外在住と「手作り」作品の物販

手作りの好きな人が英語をしっかり学ぶと世界が広がる

Zoi
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Dec 14, 2021

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Georgiana Voiculescu via Unsplash

海外生活で広がるチャンスはいろいろありますが、世界中の手工芸を学ぶことができることもその一つ。

私は移動があまり好きではなく、ずーっとうちにいたい方。子供の頃から細かいことが好きで、作業をしていると自然と時間を忘れてしまうのです。それはどこに住んでいても同じですが、アメリカに住んで英語がしっかり身についた過程には、手作業が好きだったことがあります。

初めは日本で一般的な「手芸」でしたが、資料と材料の制約から、徐々に現地でできるクラフトを試すようになり、日本の手工芸とは違う新鮮さを感じながらも夢中になっていきました。

モノづくりにはスペースが必要

日本にいたときは、どうしてもスペースの問題があって、ミシンを所有することさえ一大事でした。そして、ミシンを買っても、それをしまう場所は、取り出す気持ちを削ぐような場所になってしまう。それに、日本はなんといっても手縫い文化。なので、アメリカに越して来るまで、私も主に手縫いや手編みなど、コンパクトに作業できる手芸が中心でした。

ちょっとした洋裁をしようと思っても、布を広げることさえできない環境では、やる気は起きません。アメリカも、全ての州の住宅事情が同じではありませんが、私が初めに暮らした州は、家のスペースに恵まれていました。そこでそれまで洋裁がうまくできなかった理由を実感したのです。90センチ幅の布を広げることができなければ、洋服はうまく作れない、と。

洋裁以外でも、スペースはものを作ることに直結します。アメリカは、車社会ですから車庫付きの住居が一般的です。そこに車を駐車せず、作業場・倉庫にする人がかなりいます。もともと車庫にはちょっとした作業ができるようなスペースがついている場合もあります。

余分なスペースがあると、確かに、それだけ余分なものが貯まることも事実ですが、必要最低限の条件の中では、なかなか新しいアイデアを試そうという気にならないこともまた事実。ですから、モノづくりに関していえば、余分なスペースは必要だと思うのです。

海外在住で手工芸に関して恵まれていることは、スペースの事情だけではありません。

会話だけではない英語

アメリカの場合、許せる程度の生活をするためには、日常会話以上の英語を身につける必要があります。勉強は大変ですが英語の、特に読み書きができるようになれば、日本では手に入らない情報や資料が簡単に手に入るようになります。私が知る限りでは、オンラインビジネスとウェブ上で機能するアプリ、代替医療やヒーリング、そしてアートや手工芸のエリアで特にそう思います。

スペースがあると作業だけではなく、使うツールにも選択肢が増えます。アメリカの生活でいつもワクワクするのは、ツールの豊富さと便利性です。どんなことも合理的に行おうという精神は、今でもツールの中で生きています。

ですが同時に、操作に関するプロセスが専門的になってきていると思います。私がアメリカに住んでほぼ20年(!)ですが、その間に何度も、モノづくりでものすごく才能のある人がたくさんいると驚きました。特に道具の使い方が非常にうまい。

豊富にあるツールに無駄を感じる人がいるのも事実。どちらかというと日本はツールよりも芸(技術)を尊重する傾向があります。ときに、ちょっと皮肉っぽく勘ぐることがあります。手工芸においての日本人の「手作業」や「匠の技」の自負は、合理性に伴う技術の更新への嫌悪や恐怖?せっかく高い審美感を持っているのですから、それを表現する過程が広く開かれるようになるといいと思います。また、使うことがもったいなくなるほどの芸術的な作品を作ることのほかに、実際に日常生活で使うのが楽しいとか、使うことで心が浮き立つようなモノづくりがもっと増えるといいと思います。

さてツール。新たな創造性を刺激するツールがたくさんあるのですが、それを使いこなすためには、ある程度はメンテナンスも含めて、当たり前ですが、自分で操作でする必要があります。車のような一般的なツールであれば、町中にメンテナンスサービス業者はいますが、ニッチの手工芸で使うツールは、自分で勉強する必要があるからです。そのときには、日常会話の英語だけでは役に立ちません。

他のエリアでは不満を感じることの方が多いアメリカのカスタマーサービスですが、手工芸の専門業者のカスタマーサービスは、ほとんど教育と呼んでもいいほど中身が濃く、まるで一緒にプロジェクトを行うチームメイトのように辛抱強く問題解決にあたってくれる会社が多いのが特徴的です。ただし、それももちろん、英語がしっかりできることが必要。

英語の勉強は大変そう、と思うかもしれませんが、日常会話をマスターしたあとに、多くの人がぶつかる壁は、専門的な内容のないことです。英語ばかり勉強していても、英語が上達しないのは、自分の専門分野がないことも大きな原因です。ですから、反対に、自分の好きな手工芸があれば、それを通して役に立つ英語を身につけることができる、というわけです。

オンライン物販とコミュニティ

日本にもフリマサイトが一般的になり、作品を作る人が気軽にそれを販売できるようになりました。英語圏には、早くからEtsyが個人作家がオンライン物販できる環境を構築してきました。今でもEtsyは圧倒的に有名で、今でも本当に手軽に誰でも作品を販売できます。インターネットが現れる前からアメリカではメールオーダーは一般的だったことも、早くからインターネットショッピングが定着しやすかった理由だと思います。

私も一時期Etsyに出店していましたが、ほとんど宣伝なしで定期的にオーダーがあり、とても楽でした。それ以上に便利だったのは、趣味の副業の出店から、自営業として育てるためのサポートや資料の充実です。Etsyには、出店者が参加できるオンラインコミュニティもあって、同じ手工芸をしている人にいろいろ質問できました。フォーラムのサーチも性能がよかったと記憶しています。

全ての趣味を事業にする必要はありませんが、環境は揃っています。ツールや材料にお金がかかりますし、腕を磨くためには自分で使う分以上の作品ができあがります。モノづくりの技術を真剣に身につけたいと思える環境は、ありがたいですね。

英語ができれば、インターネットを使って限りなく可能性が広がります。その上、ヨーロッパやアメリカには古くからギルド(同業組合)があります。アメリカでは今でもそれが地域のコミュニティとして、手工芸の情報を広める役目を負っています。そこでは、地域に在住する色々な背景の人たちが、作品制作の勉強会やイベントを行います。それらの費用は会費制で、共同出資として本当に少額で、ときには大学の講義並みのプレゼンテーションなどに参加することができます。

アメリカで色々な手工芸をしていると、日本の技法が紹介されるのを目にする機会があります。海のこちらでは注目されても、本国では直接目にする機会がなかったものも多くあります。また、言語の垣根によって広がりや浸透に限度ができてしまう状況が残念だと思うのです。

日本にいたときの「趣味」や「手芸」は、海外在住することで限りない可能性が生まれることがもっと知られ、いつかそれを目標に海外に住みたいと思う人が増えると楽しいだろうと思います。また、日本にいながらでも、自分の好きな手工芸を通して会話以上の英語の能力を身につけることで、日本の手工芸がさらに発展する可能性もあります。趣味でも技術がつけば、広い世界に作品を届けることができる今、収入源の一つとして、好きなことを学んで個性的な作品を作り発表することは、生きがいや幸せの源にもなるのではないでしょうか。

Originally published at https://zoiandmai.substack.com on December 14, 2021.

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