とても昔、ほんとうにとても昔にホルヘ・ルイス・ボルヘスの”Los Conjurados”という詩集を訳したことがある。1985年に出版されボルヘスの最後の著作である。
日本ではボルヘスは短編小説家として知られているが、スペイン語圏では同じくらいの比重で詩人として認知されている。ぼくはなぜか学生の頃に国書刊行会から出版された『鉄の貨幣/永遠の薔薇』という二つの詩集で初めてボルヘスを読み彼のファンになり、1992年にチリのサンティアゴでスペイン語を勉強しながら滞在していた頃、市内の本屋に通って少しずつ詩集を集めて読んでいた。この国では少し風変わりなボルヘスのファンであるだろう。
翻訳した”Los Conjurados”の最初でこの詩集は、ボルヘスのパートナーだったマリア・コダマに捧げられていることが記されている。ぼくは当時学生時代に大好きだった女性と関係があり、彼女は卒業してすぐに結婚して子供もいたので不倫関係だったわけだが、ここでボルヘスがその気持ちをマリア・コダマに捧げるような気持ちで翻訳を進めていたと思う。
とても昔というのは、インターネットもそれほど普及していない時代で、調べ物をすると言ったら図書館に行くのが普通だった頃の話だ。今、インターネットを使えば当時不明瞭だった固有名詞などかなり明確に意味が特定できるようになっている。また一昨年コロンビアののボゴタに行ったとき、とても詳しい注釈のついた『ボルヘス全集』が出版されているのを見つけとても安かったので、買って持って帰ってきた。こうしたものも利用しながら修正をして少しずつMediumにアップしていくことにします。
まずはそのマリア・コダマに捧げられた銘文から。
https://medium.com/jorge-luis-borges-los-conjurados/%E9%8A%98-f62a1e80833b