「諦めないことが大事」SmartHR宮田昇始がスタートアップに語るメッセージ|Road to Success Onlab grads vol.4

Open Network Lab
Jul 31, 2020 · 13 min read

Onlab第10期の卒業生である株式会社SmartHRは、人事労務業務を効率化する労務管理クラウドサービスでシェアNo.1の「SmartHR」を提供しています。当時は「労務手続きができる」サービスとしてスタートしましたが、現在では、社員名簿や人事データの可視化といった、従業員が手続きするたびに更新される人事データを活用できるような機能開発も進めています。IT業界を中心に広がったSmartHRですが、最近は飲食や小売り等、規模や業種問わず2万社以上の企業が登録しています。珍しいところだと医療業界や学校法人でも使われているそうです。

プロダクトの素晴らしさはさる事ながら、組織的で積極的な情報発信や、リモートワークの時、機を得た広告、大型の資金調達等でも話題を集めるSmartHR。しかし代表の宮田さんが「Onlabに入ってSmartHRに行き着くまでに、11回ピボットした」と語るように、その立ち上げは必ずしも順調とは言えませんでした。

今回のRoad to Success Onlab gradsでは宮田さんに、Onlabで経験した出来事や、卒業生として後輩に対するアドバイスを伺いました。

11回のピボットを経て、SmartHRに辿り着く

— Onlabのプログラムで得たものがあれば教えてください。

宮田:一番学びになったのは、ちゃんとユーザーや世の中の課題から事業を作らないと、そもそも事業は上手くいくはずもないということですね。

SmartHRをリリースする前に2つのサービスを出していたのですが、全然ヒットしなかったんです。Onlabに入るまでは「10回バットを振って1回当たったらラッキー」ぐらいの感覚で事業を考えていましたし、その当時の先輩起業家も「当たるかわからないから10回やって死ぬまでに当たりを見つけましょう」という感じでした。

しかし、そういう考え方をしていると、どうしても机上の空論になってしまう。自分たちができることから事業を発想してしまい、考え方が狭まってしまう。なかなか本当にユーザーに刺さる事業が作れなかったんです。

そんな状態でOnlabに参加したので「あなたたち、あまりユーザーヒアリングしていないでしょう」とすぐに指摘されました。Onlabの担当メンターに「これって本当にユーザーは欲しいんですか」「ユーザーはどういう課題を持っているんですか」という毎回のOfficeHourでの質問に対して、僕たちは「~だと思います」と答えていたんです。「『思います』と言うけど、あなたの仮説ではなくユーザーの声が知りたいのです。」と突っ込まれたんです。

確かにユーザーヒアリングはしていなかったので、ヒアリングを始めると、自分たちが当初考えていた課題なんて存在しないことがわかりました。ただ想像できることから都合のいいことを発想していたのです。それからは課題の仮説を立て、ユーザーの声に耳を傾けるようになりました。

— Onlabに限らずですが、成果を出すために大切なことは何でしょう。

宮田:SmartHRが採択された第10期は、確か7〜8社のスタートアップが参加おり、その中で僕たちが一番必死だった自覚があります。毎日デジタルガレージのオフィスまで行ってメンターの人にしつこくいろいろフィードバックをもらったりしてましたね。時には喫煙者ではないのに喫煙所にまで付いていき、「宮田さん、本当にしつこいですね(笑)」と言われるぐらい食らいついていました。

Onlabはもちろんいいプログラムなのですが、入っただけですべてがうまくいくわけではありません。結局は成長のためには自分達で何でもやらなきゃいけない。実際途中で来なくなったチームもいましたし、反対に最後まで食らいついているチームほど結果が伴っていました。遠慮やプライドは捨て、Onlabのメンターや、提供してくれる様々なプログラムを活用して、自分達の成長に繋げていくのが重要だと今でも思っています。

— Onlabで過ごす中で、印象に残っている出来事はありますか?

宮田:3つあります。1つ目はOnlabに入ってすぐ、価格.comや食べログの方々にメンタリングしていただいたことです。食べログの創設者でもある村上敦浩さんという方がいるんですけど、プログラム直後のメンタリングでSmartHRにピボットする前のプロダクトに真剣にダメ出し頂いたのをすごく覚えています。プログラム参加直後で出鼻を挫かれた訳ですが、事業の捉え方を変えるきっかけの1つになりました。

2つ目はやっぱりSmartHRのアイデアに行き着いたときですね。実はOnlabに入ったあとSmartHRに辿り着くまでに10回ぐらいピボットをして、あるときSmartHRのアイデアが浮かんだんです。そのときにもヒアリングを繰り返し重ねていたのですが、今までと全く違う感触でした。それが一番印象に残っていますね。

3つ目は、SmartHRをリリースしてから1年半ほど経ち、そこそこうまく周り始めたタイミングでカカクコムの村上さんにバッタリ再会したのですが、僕たちのその後をきちんとチェックしてくださって「あの時ごめんね」みたいな感じですごいフレンドリーに接していただいたことです(笑)。ここまで頑張ってきてよかったなと思いました。

— SmartHRのアイデアに行き着いた時の「感触が違う」とは具体的にどんな感じなのでしょう。

課題のヒアリングには「こういうセグメントの人はこういうことに困っているはずだろう」という仮説があります。その仮説をヒアリングで検証するのですが、「困っていますか?」とは聞きません。例えばSmartHRの場合だと、「入社手続きは月何回ぐらいありますか?」「それは誰の担当ですか?」「1枚の書類作成時間は大体どれぐらいかかります?」「役所への往復時間は何分ですか? 何分待ちますか?」と具体的な質問をしていくんですね。

他の事業案のときにはこのような質問を投げかけても、みんな淡々と答えていくため、「これは困ってなさそうだな」というのがわかるんです。

ですが、SmartHRの課題検証ヒアリングのときは違いました。こっちの質問を少し聞くと、向こうの話が止まらないんです。「ちょっと聞いてくださいよ」みたいな感じで。「ペーパーワークとか、役所とか、印鑑を持ち出すのがめっちゃ大変!」っていう不満が爆発していたんです。そのとき初めて「ユーザーの課題を見つける」ってこういうことなのか」とやっとわかりました。

— その課題を発見できたのも活きて、DemoDayでは最優秀賞を獲得しましたね。

宮田:VCの人たちが100人ぐらい集まっており、そこで優勝できたので、嬉しかったですね。当時会社を設立して2年程経っていて「Open Network Labでうまくいかなかったら、会社をたたもうか」ぐらいの話を、共同創業者の内藤としていたんです。期間中にSmartHRを思い付き、最終的にPitchピッチで事業の成長性を示せたので、今に至れています。

10期の同期で参加していた企業はOnlabに採択された時のプロダクトで最後まで勝負していました。そんな中僕らだけが途中でゼロになってしまって、プログラム中もずっと最下位みたいな感じだったんです。だけど最後の最後で逆転できた。2年間ずっとダメだったので「この会社ダメかもしれない」と思っていましたが、それが「うまくいくかもしれない」と思えた瞬間だったので、このときは素直に嬉しかったですね。

スタートアップに集中せよ。諦めるな。

— 宮田さんはOnlab卒業後、今度はメンター等となって、後輩育成にも勤しんでいます。今のOnlab生を見て何を感じますか。

宮田:後輩育成というほど偉そうな話ではないんですけど(笑)、最近の若い人たちはすごいなと思いますね。僕らが起業したのは2013年で、Onlabに参加したのが2015年。その時は起業している人もまだまだ少なかった。

でも最近の若い人たちは本当にすごくて、20代前半で社員が200名いる人とか、資金調達額が20億円を超えている人とかも珍しくありません。話していても面白いし、こっちが刺激を受ける方が多いんですよ。事業はまだこれからだけど、行動がアグレッシブすぎてすごい人が多いですね。

— Onlab生スタートアップからも、SmartHRがお手本になっているという声はよく聞きます。宮田さんからのメンタリングでの気付きが多いとか。

宮田:そうなんですね。ありがたい話です。Onlab生に対してのメンタリングは、簡単に事業の進捗をピッチをしてもらって、フィードバックしています。1対1でやることもあれば、複数社が一緒のグループ形式で実施したり、「ユースケースが狭くて市場が小さく見えるので、もうちょっと広くなるような手を考えた方がいいかもしれないですね」「いろいろ手を出しちゃっているので、対象を絞ったほうがいいかもしれません」みたいな話が多いですかね。役に立っているならよかったです。

— ここ数年メンタリングをしていて、傾向として感じていることなどはありますか?

宮田:SaaSが明らかに増えましたね。SaaSはSmartHRが参加していた5年前では珍しかったんですよ。そもそもSaaSという単語もあまり使われなかったですし、ベンチャーキャピタルがあまり投資しないものの代表例でした。それが最近だと一番人気ぐらいの分野ですし、世の中が変わったなと思いますね。

— そうですね。宮田さんにもSaaSビジネスの相談は増えてますか?

宮田:それはあまりないですね。SaaSビジネスのいいところでもあるんですけど、例えば「チャーンレートはどれぐらいだったら適正」のようにメトリクス等が共通化されているんですよね。面白いものだと「ARRに対してカスタマーサクセスの人数は何人が適正」とか。最近は細かい指標も検索すればわかったりするので、皆さん結構調べているので、相談に乗るっていう感じではないですね。

— 最後に、これから未来のOnlab生や、これから起業を検討されている方にメッセージをお願いします。

宮田:これはYコンビネーターを作ったポール・グレアム氏のブログ(翻訳)で僕もよく読み返しているのですが、彼は「半分のスタートアップはうまくいくけど、半分のスタートアップは上手くいかない。上手くいくかいかないかの違いは、諦めたか諦めなかったかだけだ」と主張しています。スタートアップが死ぬときは、サーバー代払えなくなるときではない。他のことをやり始めたり、スタートアップに集中できなくなるときだと。

スタートアップをやっていると、しんどいことがたくさんありますが、そういう時にはポール・グレアムがなんて言ったか思い出してください。「諦めるな」です。

SmartHRも、このサービスに辿り着くまでに11回失敗しています。なので今スタートアップしている人たちも、「SmartHRが11回やったんだったら、自分たちは12回チャレンジしよう」ぐらいの気持ちで頑張ってもらえたらいいなと思っています。

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< プロフィール >
株式会社SmartHR 代表取締役・CEO 宮田 昇始
大学卒業後、Webディレクターとしてキャリアをスタート。BtoBや、医療系を中心にWebサイトや、アプリケーションのディレクションを複数の企業で担当。
2012年、10万人に1人と言われる疾患を発症。完治の見込みは20%と宣告を受けるも、闘病期間中に傷病手当金(社会保険の一つ)を受給できたおかげで、リハビリに専念し無事完治。社会保険のありがたみを身をもって感じる。その後、2013年に株式会社KUFU(現株式会社SmartHR)を創業。自身の闘病経験をもとにした、SmartHRを発案。2015年1月にシードアクセラレーターである Open Network Lab に第10期生として採択される。
SmartHR 公開後は、TechCrunch Tokyo、B Dash Camp、Infinity Ventures Summit をはじめとした様々のスタートアップイベントで優勝。HRアワード 2016 最優秀賞、グッドデザイン賞 2016、東洋経済すごいベンチャー100にも選出。

(取材・執筆:pilot boat 納富 隼平、編集:pilot boat・Onlab事務局)

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「世界で通用するスタートアップ育成」を目的としたアクセラレータープログラムの運営やスタートアップコミュニティ活性化のためのイベントを運営しています。 プログラムへはFond, ラクマ(旧Fril), Qiita, WHILL, SmartHRなど120社を超えるスタートアップから参加いただいています。 #on_lab

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