「若手起業家による、創業からExitまで」| Onlab Meetup Report

Chika Takei
BLUE DOTS
Published in
14 min readMay 24, 2019

Open Network Lab (以下、Onlab)は「世界に通用するスタートアップの育成」を目的に、日本初となるSeed Accelerator Programを2010年4月にスタートしました。

5月9日にOnlab Meetupイベントを実施し、Qiita創業者海野さん、MAKEY創業者中村さんをお招きし、学生起業家の創業から株式売却までの体験談をお話しいただきました。今回は、参加者に特に好評だったトークセッションを中心にレポートします!

左からIncrements 海野氏、Makey中村氏、Onlab佐藤氏

Increments株式会社 代表取締役 海野 弘成氏(Onlab4期参加)
1988年兵庫県生まれ。京都大学工学部情報学科卒業。 プログラマとしてGoogleやはてなのインターンを経験し、在学中の2011年にプログラマのための技術情報共有サービス「Qiita」をリリース。大学卒業後の12年2月、Increments株式会社を設立し代表取締役に就任。17年にはForbes under30 エンタープライズ部門に選出される。2017年12月エイチームへ株式を売却し、グループ入り。

株式会社MAKEY 代表取締役 中村 秀樹氏(Onlab10期参加)
1992年8月17日生まれ。慶應義塾大学法学部在学中にLabit Inc[すごい時間割]、Howtelevision,Inc[外資就活ドットコム]でそれぞれインターンとして半年ほど勤務。その後、在学中に2014年8月に株式会社MAKEYを創業、2015年1月に「MAKEYメディア」アプリを正式リリース。その後資金調達を行い、2017年11月よりYouTuberマネジメント事業を開始。2019年2月エイベックスへ株式を売却し、グループ入り。

創業メンバーは就活やビジコンで意気投合

−まず、どうして起業することに決めたのか教えてください。

海野:大学を卒業するタイミングでチームもアイディアも揃っていた。就職はいつでもチャンスがあるが、ちょうど良く創業チームと取り組みたいアイデアが揃うことはないだろうと決心しました。

中村:元々DeNAに内定していて、副業的に自分の事業に取り組もうと考えていたが、内定式で守安社長がペロリの中川綾太郎さんの活躍に触れ、自身もこうしてはいられないと内定を蹴って自分の会社に集中しました。

−一緒に起業したメンバー/役員はどう決めましたか?

海野:ビジコンで出会ったメンバーと起業。僕がエンジニアで、デザイナーが1名、セールス1名の3人で始めました。

中村:就活の時に出会った仲間と一緒に起業しました。就活中にあった人って、同じ業界を目指している、思考が近い人たちが多いので相性がよかったのだと思います。最初はエンジニアが不在だったのですが、後に IVSの学生版をSFCでやっていた時に隣に座っていた人がエンジニアで、のちに僕の共同創業者になりました。

佐藤:お二人とも、出会いの場は学生ならではの就活やイベントといったところがきっかけだったんですね。メンバーを集めるにあたり、目指すゴールや価値観、スキル等、いろんな評価軸があると思いますがどういったポイントが重要だと思いますか?また、例えばスキルセットがフィットしなくなりチームを離れるなどありましたか?

海野:創業メンバーは目指す方向性が重要だと思います。創業者、経営者である限り、どういう会社であるべきか、そのためにどういう方向に持って行くのか、何が必要なのかという会社としてのストーリーを考えるべきだと思うんです。もともとはそこに共感してくれた人と創業したけれど、同じ方向性やゴールをみれなくなった時に、チームを離れる人がいた、というのはありましたね。

中村:僕も同じ考えです。僕の場合は創業者2人が結果的に抜けてしまったんですが、正直最初はビジョンとかミッションとかなくてふわふわしてました(笑)。その裏には何かを決めて固執してしまうのが怖いという気持ちがあったと思います。目指す方向性やビジョンがなかったこともあり、アート思考で考えるメンバーと、分析思考で考えるメンバーとで対立してしまったんだと思います。

興味を持てるものから少しずつ情熱を育む。気になってしょうがないものに没頭する

−取り組む事業はどう決めたんでしょうか?アイディアの見つけ方のアドバイスなどあればお願いします。

海野:最近読んだ面白い記事で「情熱を探そう」というアドバイスはもうやめよう、というものがあります。元々スティーブ・ジョブスのスピーチで、寝る間も惜しんででも好きなことで起業するといい、みたいな話があったと思いますが、その記事が言っていたのは、情熱を持てるものを探すのではなくて、興味を持てるものから少しずつ情熱を育む、その技術を身につけるべきだ、ということなんです。

実際僕もそうだったな、と思って。Qiitaは、最初から情熱レベルがめちゃくちゃ高かったわけではなく、ビジネスとして成立しそうだったからやりはじめて。創業当時はソーシャルゲームバブル、つまりエンジニアの需要が高まっていた時代だったのでエンジニアが集まるようなコミュニティを作って、サービスをやったらいけるんじゃないか、って考えたのが原点でした。

だんだんアイディアや方向性を練って、可能性が具体的になっていく中で、熱量をあげて取り組むことができんだと思います。だから、正解がどこかにあるんじゃないか、ではなくとりあえず興味があるからやってみよう、をスタートラインにするといいと思います。

中村:僕も同じ考えで、取り組む事業自体は何でもいいんじゃないかなと思っています。僕の場合だと、やっぱり男性なのに何でメイクやってるの?っていう質問があると思うんですけど、学生時代に肌荒れに悩んでいて、どうして男性だと美容に興味をもっちゃいけないんだろうと疑問に思ったこと、あとは結構女性誌みたいなキラキラした世界観は結構好きだったので(笑)大学に入ってもし事業をするならこの領域かな、そういった世界に影響を与えたいと思ったのがきっかけです。

僕の場合は「これがあったからMAKEYを続けてこれた」って思えるくらい指針にしている言葉があるんです。Dropbox 創業者がMITの卒業式で語った有名な3つのキーワードの話の中でも、特に「テニスボール」のエピソードについてです。どういう話かというと、成功する人は、犬がテニスボールを夢中で追いかけるように何かに心を奪われ夢中で追いかけているという話です。事業をやっている途中って、本当にこれでいいんだろうかとか悩んでしまうときもやっぱりあったんですがこの言葉を聞いて、気になって仕方がない問題を解決することに没頭しててもいいんだ、って思えましたね。

− 最初の資金調達をする時、誰から、どのくらい欲しいといった知識は持っていたんでしょうか。

海野:最初は業界知識、全くなかったです!たまたま創業期にOnlabに入れたからよかったですけど、悪い大人に捕まってたらどうなっていたんだろうとちょっと思いますね(笑)ただ、VCを選ぶ際はこの先数年単位で一緒に時間を過ごすことになるので、”人”を結構見てました。サービスがどんな方向にいっても伴走してくれそうか、逆に厳しく詰めて来る人は自分たちのために意見してくれるので攻めた方がいいな、とか。

中村:僕も知識がなかったですね。それこそ、Onlabの前に100万円出資するので数十%保有させて、と言っていた方がいたんですけど、やっぱり当時は学生だったので「え!100万円くれるの!」と安易に考えていたところはありました。なので、Onlabにある種いわれるがまま(笑)アドバイスを取り入れたり、必要な知識を吸収しながら事業のスタートが切れたので、よかったなと思っています。

海野:中村さんは、今だったらどういった点を気にしておくべきだったと思いますか?

中村:例えば、大きなラウンドに繋いでくれそうか、Exit先を紹介してくれそうか、Exitが決まった後にバリュエーション交渉をしてくれそうかなど…といった、絶対にやって欲しいことは考えておいて後々損はないと思います。グループ入りの交渉に関してはイメージが湧きづらいかもしれませんが、起業家はその後グループ入りし、お付き合いが続くこともありハードな交渉をしづらいので間に入ってくれると大変助かります。

海野:資金調達は採用とかと違って修正不可能なので、絶対に詳しい人に聞いたり、人をよく見るのが大切だと思います。一度決めたバリュエーションとか、誤るとマイナスの影響が響き続けるので、失敗できないです。

佐藤:そうですね、今は起業家がVCを選ぶ時代になってきたので、VCが投資を検討するだけでなく、起業家の方も興味のあるVCを知っている人や既存投資先からレファレンスを取って選んでいかれると良いと思います。

海野:そういった中で、OnlabのDemodayは投資家と繋がれるいい機会だと思います。一度にOnlabが既に繋がりのある投資家数十社と会えるので、コスパはいいです(笑)

中村:僕もそれで結構助けられて。後々のラウンドでミーティングをしたVCさんが初対面かと思ったら実はDemodayで僕たちのピッチをみてくれていたので、話がすごくスムーズに進みました。

学生だからこそ、教えてもらえる立場をフル活用して

−そういった中でやはり学生起業だったからこそ経験不足を感じた瞬間はあったのでしょうか。

海野:いや、経験不足を感じることしかなかったですよ!当然、事業計画、資本政策って何…っていう0からのスタートなので。ネットワークに関してはOnlabで投資家、起業家と話す機会があったので広がっていった印象です。契約書とか事業計画とかの難しい話は、どんどん詳しい人に聞いたり本を読んでキャッチアップして行きました。

中村:僕も知らないことだらけだったんですが、学生起業家であることの下駄を履かせてもらって、色々チャレンジさせてもらいました。知識不足は感じつつも、学生であることを逆手にとってガシガシ突っ込んでいけるのはメリットだったんじゃないかと感じます。

−起業当初の意思決定で誤っていたことや後に方向転換したものはあったんでしょうか?

海野:プロジェクトとして立ち上げてから、いつかはこうしたいとふんわりした方向性で進んできて、その過程の中で共同創業者と目線が合わなくなってしまったことに対しては、日頃から共通認識をあわせつづける努力をできたらよかった、と感じます。日常業務の話はしていたんですが、もっと俯瞰して事業をどうして行きたいのかについて話す機会をもっと作るべきだったのかもしれないです。

中村:僕は共同創業者、男4人で一緒に住んでたんです。けど、それは失敗でしたね(笑)一緒に住むことでわかることっていっぱいあると思うんですけど、接し方がわかる反面、どうしてもわからないとこも見えてくるので、それを必要以上に感じてしまった。仕事の波長は合うけど、生活面では違う、知る必要のないところまで知らなくていいと思います(笑)

−起業し事業を推進する中で、役に立った経験は?

海野:サービスを作る前に、はてなにインターンをしていたんですけど、そこで実際のWebサービスの作り方、リリースした後のユーザー反響のキャッチの仕方などを学べたので、実際に動いているサービスの裏側を前もって知っていたのはよかったと思います。

中村:僕もインターンをしてる間に、実際に働いている人から刺激を受けて、起業に踏み出す一歩の後押しをしてもらえたのはよかったと感じてます。

−大企業のグループ入りはどのように意思決定したのでしょうか?

海野:自分のマネジメント力を伸ばしながら組織と事業を補うためにどういったリソースが必要か、と考えた時に、時間も力も足りないことに気づいて。だからこそ、そこは手を差し伸べてくれるところに頼ろう、と決めたのが経緯ですね。そこからファイナンシャルアドバイザーに相談して、合いそうなところに掛け合った感じです。

中村:普通売ろうと思って売れるものじゃないのですごいっすね、計画的(笑)僕は全く違って、メインでやっていたサービスよりピボットした方のが軌道に乗って、黒字化してきたタイミングでバイアウトしました。既存の投資家から新しい事業を進めたいならレガシーな芸能界系にコネクションがあるといいから、そういった企業に掛け合うといいのでは、と話を進めてもらいましたね。最初は出資していただくつもりだったんですが、グループ入りを提案していただけたので、素直に認めてもらえたような気がして嬉しかったです。

僕もファイナンシャルアドバイザーには頼ってみたことはあったんですが、結局彼らは僕たちがサービスに対してもっている熱量の半分以下で候補先へ交渉を持ちかけるわけじゃないですか。面談をセッティングしてもらっても、淡々と数字の話だけをされるのが仕組み的に僕は嫌で。「お願いして買ってください」みたいな構図が全くくずれなかったんですけど、そんなことはなかったですか?

海野:僕はあんまりそういったことはなかったですね。もうサービスが黒字化しそうなタイミングではあったので、最悪流れても痛いけど潰れはしないか、というスタンスだったというか。ただ、このまま行けばサービスも伸びていくので、協力しあえるパートナーが見つかればさらにアクセルをかけていけるのでは、という見方をしてもらえていたのかもしれません。

−今、自身が学生であったら起業するでしょうか?

中村:絶対起業します、早ければ早いだけ得だと思うので中学生からしたいですね!100%自分だけでやりたいって人もいるかもですが、僕は誰かと同じ思いを共有しながら物作りをするのが好きなので、また創業メンバーを必要とすると思います。結構寂しがりなのかもしれません(笑)

海野:僕もしますね。早ければ早いほど、早く現実にぶち当たって成長していけるので。稼げる、とかそういうベクトルではなく同じ目線で同じゴールに向かって一緒に頑張っていけるメンバーとまた始めたいです。何か変えるとしたら、最初は自分だけでやるかもです。柔軟さとか、コントロールがその方がやっぱり効くので、ある程度形に骨子ができてからチームを作りたいです。

−最後に若くして起業する方へアドバイスをお願いします!

海野:まず自分が興味を持てるものが何かを見つける、小さな一歩から始めるといいと思います。あんまり今の流行りが、稼げるから、とかではなく自分の中でちょっとでもしっくりこないものにしてしまうと結局続かないです。

中村:僕はOnlab10期の同期と今でも繋がりがあって、いいピアプレッシャーを受けながら、自分も頑張ろうって気になるんです。Onlab以外でもコミュニティの同期 — 僕の場合だとクラシル、ハゲラボの方なんかがそうなので、そういった切磋琢磨できるような人と交流することで「結果を残すことが当たり前だ」と常に刺激を受けることがポイントになるんじゃないかと思います。

Seed Accelerator Program 19期 〆切間近!

Onlabでは次期19期の募集を開始しました、ご興味のある方はこちらからご応募ください!19期募集期間は、5/27(月)までとなります。

Onlabは定期的にSNSでアップデートを行っています。引き続きTwitter/Facebookなどフォローよろしくお願いします!🔥

--

--