暗号資産市場規模、他の市場と比べてみたら

toraneko

Published in

boarding bridge

14 min readSep 26, 2022

そりゃ、ラグプルも起きるよねって思ったって話。

※この記事は翻訳後、読みやすくするために編集・追記したものです。（以下の記事は2022年1月4日のデータを元に寄稿されました。）

2021年は暗号資産にとって飛躍の年になりました。業界の総市場規模は初めて2兆ドルを超え、暗号資産全体の価値は、2021年第4四半期に3兆ドル近くに達しています。

この事実を目の当たりにし、きっとあなたはこう思うでしょうね。

『従来の投資先はもう古い！これからは暗号資産だ！！』

こう考えるのは自然なことですが、今こそ一歩立ち止まって考えるべき時ではないでしょうか。人間の悪い癖で、私たちは数字に捉われるあまり、その背景を正しく理解しようとしないことがあります。暗号資産の時価総額2兆3500億ドル、という数字の意味を理解するには、他の産業や資産、他の投資対象と比較するのがわかりやすいかもしれません。

暗号資産を他の投資対象との比較
暗号資産は、多くの人々にとって多くの意味を持つものです。トークンを価値の貯蔵と見なすか、交換媒体と見なすかについては色んな意見が暑かなと思います。そんな中ただ一つ、おそらくみんなが同意することはこれです：デジタル資産と言うのは、やっぱり、”資産” だよね。

このことを念頭に置いて、暗号資産市場の価値を評価するために、貴金属、不動産、株式、負債証券など、他の資産価値があるものと比較してみることにします。

まず比較する際に、下記の2つの数字を念頭に入れておいて下さい。

暗号資産市場の時価総額：約2.35兆ドル（2021年4半期）
ビットコインの時価総額 : 約814億ドル

暗号資産の市場規模 vs 貴金属の市場規模
暗号資産の王様、ビットコインは「デジタルゴールド」として多くの人に認識されています。まずは比較対象として、貴金属から見てみましょう。現在、金の時価総額は11.4兆ドルで、暗号資産の約5倍、ビットコイン（0.88兆ドル）の13倍の規模となっています。もちろん、金は何千年も前から存在し、宝飾品や電子機器など、数多くの用途があるので、これは驚くことではありません。

貴金属と暗号資産時価総額の比較。金11.4兆ドル、暗号資産2.35兆ドル、銀1.28兆ドル

それでも、ビットコインのプログラム上の希少性から、投資家はビットコインを比較的健全な安全資産と見なすようになってきています。2021年、貨幣の印刷が進む中、ビットコインが史上最高値を記録したため、ゴールドのファンドから100億ドルが引き揚げられました。ビリオネアで知られるヘッジファンドマネージャー、Paul Tudor Jones氏によると、デジタルゴールド・ビットコインはその他の現物資産と比べて「勝っている」のだそうです。

また、暗号資産市場は、銀市場1兆2800億ドルのほぼ2倍の規模であることが興味深いところです。

暗号資産の市場規模 vs 不動産
約10年前に始まった暗号資産産業と世界の不動産全体を比較することは、残酷なことのように思えます。そして全世界の不動産の価値を測るのはやや難しいのですが、世界のGDPの約4倍、暗号資産の時価総額の少なくとも160倍と考えられています。

商業用不動産（34兆ドル）を含む世界の不動産（340兆ドル）と暗号資産の時価総額（2.35兆ドル）の比較

不動産市場は、340兆円という途方もない価値があり、人類が知る限り最も大きな富の貯蔵庫となっています。ちなみに、商業用不動産は全体の約10％を占めています。

暗号の市場規模 vs 株式の市場規模

暗号資産市場は、世界株式市場の時価総額122兆ドル（2021年10月）に比べれば小人のような存在であると同時に、米国株式市場の50兆ドルや欧州株式市場の14兆ドルとは大きく異なる世界であることは確かです。

暗号資産市場規模 vs GDP、公的債務、学生ローン
各国の国内総生産（GDP）と比較すると、暗号資産市場は極めて良好な状態にあります。実際、フランス（2兆6300億ドル）とイタリア（1兆889億ドル）の間に位置し、実質トップ10に入り込んでいる恰好になっています。日本（5兆5800億円）、中国（14兆7230億円）、米国（20兆8940億円）が上位を占めています。

世界のGDP（84.68兆ドル）とビットコインの時価総額（814億ドル）を含む暗号通貨時価総額（2.35兆ドル）の比較

一方、ビットコインの現在の時価総額（814億ドル）は、世界のGDPで17位となり、オランダ（913億ドル）とスイス（752兆ドル）に挟まれることになる。全世界のビットコインの価値は、スイス、アルゼンチン、サウジアラビア、スウェーデン、タイといった国々のGDPを上回っています。

世界の公的債務（226兆ドル）、米国の学生債務（1.7兆ドル）と暗号資産時価総額（2.35兆ドル）の比較

暗号資産市場の価値と国家債務の比較はどうでしょうか。

英国政府の債務は2.2兆ポンド（約2.97兆円）で、これと同じレベルです。ちなみに世界の債務残高は、政府、家庭、銀行の借入金が雪だるま式に増加する中で、過去最高の226兆ドルに達しています。(現金と民間の金融機関が銀行に預けた合計額は2008年のほぼ5倍）

世界の暗号資産の時価総額は、2021年の米国の財政赤字（2兆7700億ドル）に及ばず、米国の学生負債の負担（1兆7000億ドル）よりも6億5000万ドル高くなっています。

暗号通貨の市場規模 vs 量的緩和政策
昨年初めに量的緩和策が導入されて以来、連邦準備制度理事会の貸借対照表 にざっと目を通すと、それは見るに堪えないものであるとわかります。FRBは昨年3月以来4兆ドル以上を経済に投入し、その貸借対照表は8兆5600億ドルに膨れ上がっています。

2008年から2009年にかけての金融危機を契機に導入された量的緩和についてはどうでしょうか。当時，FRB は国を上げての消費景気に踏み切り，当初はほぼ2兆1,000 億ドル相当の国債と住宅ローン担保証券を買い上げました。2010年から11年にかけての第2次量的緩和を経て、FRBは貸借対照表にさらに6000億ドルの債券を追加し、その総額は2兆7000億ドルとなりました。

もちろん、FRBの拡張政策が本当に止まったわけではありません。だからこそ、多くの人が不換紙幣に背を向け、暗号資産（特にビットコイン）を受け入れています。

イングランド銀行は、複数年にわたる「資産購入プログラム」によって1兆2500億ドルの債券を購入し、現在のビットコインの時価総額と同程度の規模に達しています。

暗号通貨の時価総額と戦争法案との比較
アフガニスタン戦争についてです。ブラウン大学のCost of War Projectによると、米国は2001年以来、この紛争に2兆2600億ドルを費やしており、これには政府借入の利払い5300億ドルも含まれています。

暗号資産の時価総額（2.35兆ドル）と2001年以降のアフガニスタン紛争における米国の出費（2.26兆ドル）を比較

米国に次いで強力な軍隊を駐留させた英国とドイツは、戦争期間中にそれぞれ推定300億ドルと190億ドルを費やしました。

暗号資産を無価値だと言う人がいたら、現在存在するすべてのデジタル資産の価値は、アメリカの史上最長の戦争のために費やされた金額を上回っていると教えてあげましょう。一方、イギリスとドイツの出費を合計すると、2020年5月にローンチした第8位の暗号資産Polkadotと同程度の時価総額になります。

暗号資産の市場規模 vs 世界の年間送金額・グリーン投資額
世界銀行によると、昨年の世界の送金額は約7020億ドルでした。送金（外国人労働者から貧困国の家族への送金）は、そのボーダーレスな性質、迅速な決済時間、低手数料から、実は暗号資産の有望なユースケースと考えられています。

いずれにせよ、世界の送金市場が今日の暗号資産市場に矮小化されているのは興味深いことです。

グリーン投資についてはどうでしょうか？2016年以降、世界市場は50％以上成長し、持続可能な投資資産は現在35兆3,000億ドル以上の規模になっています。しかし、国単位で見ると、暗号資産市場はそれ以上の存在感を示しています。

例えば、カナダのグリーン投資は約2.4兆ドル、日本の市場は3兆ドル弱です。一方、国際エネルギー機関（IEA）によると、世界の年間エネルギー投資額は2兆ドルに達しています。

暗号資産の市場規模と世界の産業との比較
2兆3500億ドルという数字は暗号資産産業全体を指しているわけではなく、現在流通しているすべての暗号資産の総額であることに留意する必要があります。しかし、この業界には、ハードウェアウォレット、マーケティングおよびメディアエージェンシー、マイニング企業、ブロックチェーンスタートアップ、決済ネットワーク、暗号資産に特化したベンチャーキャピタルファンドなど、トークンの発行に直接関係しない企業も多く存在します。

したがって、暗号資産産業の総額を推定することは困難ですが、概算して2兆3500億ドルから2兆9000億ドルの間であると思われます。では、他の産業と比較するとどうでしょうか。

暗号資産は、通信業界（1兆7400億ドル）を抑えて2021年のトップ10に入りましたが、自動車製造（3兆ドル）、石油・ガス探査・生産（4兆6000億ドル）、食品（5兆ドル）には遅れをとっている状態です。世界の金融サービス産業は、市場価値22.5兆ドルで首位となっています。

暗号資産業界の規模をトップ企業と比較してみる
最後に、暗号資産市場を世界で最もパフォーマンスの高い株式を持つ企業、すなわち世界のマイクロソフトやアップル、アルファベットと比較してみましょう。

本稿執筆時点で、アップルは時価総額2兆9800億ドルで、世界で最も価値のある上場企業です。マイクロソフトは2兆5100億ドル、アルファベットは2兆ドルをわずかに下回る時価総額で第3位につけています。

世界トップクラスの株式会社（Apple — 2.98兆ドル, Microsoft — 2.51兆ドル, Alphabet — 2兆ドル）と暗号資産市場規模（2.35兆ドル）の比較

世界の暗号資産市場は、世界最大のハイテク企業と評価額が近いだけでなく、その最も成功した資産であるビットコインは、それらの事業よりもはるかに速く、2021年に時価総額1兆ドルに到達しました。実際、このマイルストーンに到達するまでにかかった時間は、アマゾン（24年）の半分の期間（12年）でした。

ビットコインの時価総額はトップ10に入る一方、第2位の暗号資産イーサリアムの時価総額は、サムスン、LVMH、ウォールマート、P&Gよりも大きいです。

まとめ
12年前、ビットコインは一つのアイデアでしたが、2021年には地球上で6番目に大きなベースマネーとなりました。新しいユースケース（defi、gamefi、NFT、プライバシーコインなど）が次々と登場し、暗号資産市場全体に波が到来しています。次に地球を揺るがすようなマイルストーンがやってくるのはいつになるのでしょうか。

また、上記の比較から暗号資産市場規模は他の市場と比べると小さく、資金抜けが発生した際の暴落リスクや騰落率は他の市場のそれに比べて大きいかつより短時間で起こり得ることが容易に伺える。投資の際は、最悪の事態に常に備え、投資シナリオを自分の中に必ず用意して挑みたい。

翻訳（引用）元：https://medium.com/ngrave/too-big-to-fail-crypto-market-size-vs-traditional-assets-eff4bb2ec529

まとめツイート：https://twitter.com/toranekoec/status/1543796468422963201?s=20&t=0UtyLXQ2lGvSVR67jyYGEg

翻訳者：https://twitter.com/toranekoec