品位について

azusa yamamoto
book list of the future
3 min readMay 21, 2017

眞子さまが婚約されたそうだ。

しかし、なぜ皇族に「さま」づけしないといけないのかということは子どものころから疑問に思っていて、いまだによくわからないのでここでは「眞子さん」と呼ぶことにする。

というわけで、眞子さんが婚約したそうだ(正確には「婚約が決まった」ということらしいけど)。連日の報道を目にするにつけ、いきなり世間の注目を浴びる立場になってしまった小室さんや、出会いの場はもちろん、“愛を育んだ”デートの場所やその内容まで晒されてしまう二人には、正直気の毒だと思う。どうかそういうものに倦むことなく、きちんと愛を育んでいってほしい。

それらニュースの中で、いちばん驚いたのが「結婚一時金」の話だ。女性の皇族が結婚して皇籍を離れる際に、そういったものが国から贈られるらしい。そういえば、前回出雲大社の人と結婚した人のときにもそんな話題があったなあと思ったけれど、詳しいことまでは知らなかった。

どれくらいの金額が贈られるかというと、直近の過去2回はそれぞれ1億円超。まあちょっとした…じゃすまない額だ(庶民にとっては)。だけどそれより、贈る理由のほうにショックを受けた。それは「皇族であった者の品位保持」のためだという。

はたして「品位」というのは、お金で買えるのだろうか。そうではない、とこれまで信じてきたし、そう育てられたようにも思う。それなのに国は堂々と「品位保持のため」に多額のお金を用意する。それってどうなの?

「国から」ということは、もちろんそれはわたしたちの税金だ。こちらは生きていくのにもやっとかっと。いい歳して給料日前のデートがマックだったりもするのに、それでも世のため人のためと一生懸命払っている税金を、特定の個人の「いい暮らし」のために使われるなんて、なんか解せない。

そんな怒りにも似た感情を抱きつつ、一歩引いて考えれば、お金持ちしか持ち合わせない「品位」というものにうすうす勘づいている自分もいたりする。

彼らの言葉遣い、物腰、知性…。笑顔ひとつとっても、「育ちのいい人」はどこか違う。それはたぶん、私がこれからどんなに頑張っても、たとえお金持ちになったとしても、絶対に手に入れられないものたちだ。それこそ本当に「お金で買えないもの」に違いない。

彼らが浴する文化もまた、簡単には手に入らないがゆえに、なくならないでほしいと思う。豪華なホテルや洗練されたファッション、お金のかかるレクリエーション。もしかしたら、崇高な思想や人類の宝となるような芸術も。自分には決して手が届かないものだけれど、そんな彼らの営みがあることで、どこか自分が引っ張り上げられる感覚がある。

きっと彼らがいなくなったら、世界はひどくつまらないものになってしまうだろう。そう思うほどに、彼らの文化はもうわたしの一部なのだ。わたしのものではないにしても。

だから、せめてお金持ちの人たちよ、あなたたちだけは「品位」と呼ばれるそうした文化を、崇高な人間の営みを守り続けていってほしい、と願う。そのためになら、自分はデートの場所がマックになっても構わない、とも。

to read books #天皇論 #文明論 #民主主義 #古代ギリシャ文化

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