仕事に効く教養としての「世界史」

倉岡 寛
3 min readMar 12, 2014

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週末、何気なく本屋に行ったら平積みされていた。「仕事に効く〜」とかいかにも自己啓発臭がするタイトルで、しかもそれを「世界史」と結びつけているあたりが、なんだかなぁ、という感じではあったのだが、ライフネット生命CEOの出口氏が著者ということだったので購入してみたら、これがものすごく良本でのめりこんだ。おすすめ。仕事に効くとかそういう話ではなくて、人間としてどういう心構えでいるべきなのかということが、歴史のロマンを通じて示唆されている。ような気がする。

昔は、歴史なんて詰め込み教科で何も面白くなく、とはいえテストがあるということで一夜漬けで全てを詰め込んでとりあえずテストに臨む、ということを繰り返していた自分にとっては、世界史や日本史という分野は社会人になってようやくその面白さが、それこそ自己啓発をきっかけに、感じるようになっていた。ビジネスマンあるある話ではあるが、幕末や坂の上の雲の時代はやはり胸熱な想いがする。

とはいえ当たり前のことなんだが同じ史実であっても、グローバルで見た観点と日本から見た観点は異なってくる。本の中でも印象的だったのだが、「幕府が崩壊したのは、維新の志士による働きよりも、そもそもペリーの目指していた方向性や、日本が為替レートの決め方を誤ってどんどん貧しくなっていったことによる」といったことや、「共産党の毛沢東がソ連側についたからこそ、アメリカはアジアのパートナーとして中国ではなく、当初は全く眼中になかった日本と組まざるを得なかった (そして、そのことが日本にとって幸運の始まりだった)」といったくだりは、改めて、日本から見た観点とだいぶ違うなと。同じ史実は、日本の文脈から見た場合、同じアジア諸国が西欧列強に支配されている中、他国に征服されることなく維新を達成したことや、敗戦国として何もかも失った後で高度成長し経済的に西洋列強と肩を並べることができたことに対する日本人としての自負につながっているわけで。

また、この辺りの日本人としての自負は、西欧に対するある種のコンプレックスから来ている部分も少なからずあると思うのだが、そもそも西洋列強が植民地時代に、それ以前に中国やモンゴル帝国、イスラム国家が西欧を圧倒していたという史実にも関わらず「最初から西洋は東洋よりも優れていたということにしておこう」という、自分が見たいものしか見ようとしない視点 (そして、この傾向は西欧に限らず歴史上どこでも見られるわけで)で書き換えた世界史をベースにした世界観に由来することを考えれば、本質的に存在するものは、視点の問題やどっちがどうとかという価値観、それをベースにしたコンプレックス等ではなく、史実としての「歴史」という一つの流れだけなのだ。

出口氏のこの本は、本当に歴史が好きなんだろうなというのがビシバシ伝わってくる本で一気に引き込まれた。

と、本を読み終わって歴史を俯瞰できた気分になった後でも、大河ドラマを見ると、自分の置かれているミクロな状況をそこに投影し、やはり胸熱になりますな。にしても、岡田准一ってあんなにかっこよかったっけ。

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