地方創生をなんとしよう

ito tomio
cahootz
6 min readNov 10, 2015

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いささか過激だが至極ごもっともな話

こんばんわ、ブログジェリーで今夜も相変わらずノープランで書きます。

唐突だが、ここ最近、天王寺区長の水谷さんのブログが熱い。

大阪市天王寺区長水谷翔太ブログ「ありがとう!!天王寺」

区長とは以前一度だけお目にかかったことがあるだけで、日頃から特に親しくしているわけではないが、ふと目にとまった11月2日の「図書館なんぞいらない街 」からその後のブログ記事が滅法オモシロイ。なにかが憑依したのか(失礼)と思うぐらい快調。ま、元々記者をされてたので文章がこなれてて歯切れがいいのは当然だが。

この記事では、『知のインフラ』と言われる図書館の存在価値に「利用者層は誰か」を根拠にグサッとメスを入れ、どこもかしこもTSUTAYA書店と手を組む地方自治体の「成功事例に右へならえ」ぶりを嘆くなど、ご自身そちらの側にあるにも関わらず、いやそれだからこそなのか、なかなか手厳しい。

で、タイトルを見て「え」と絶句したのは、これ。

地方創生より地方消滅でいこう!

いまどき、全国の地方都市のどこもが大声を張り上げてるのは、地方創生。確かに、一部の移住誘致が功を奏している地域を別にすれば、地方の人口は減少の一途を辿る。それに対して、「2040年には全国896の市区町村の半分が人口減により消滅の危機を迎える」との東大教授の予測を前提に、

その現実を踏まえて地方創生に取り組んでいる関係者はあまり多くないように見受けられる。潜在的な成長力に欠ける企業にいくら投資しても死に金になってしまうように、自治体も同じ。消滅手前の自治体が観光や定住促進をいくら頑張っても、単なる税金の無駄遣いになってしまう恐れが大きい。国が躍起になってブームを演出している現状では、国・自治体ともに無駄遣いが起きやすくなるので、よくよく注意した方が良い。

とこれまた言いにくいことをズバッとおっしゃる。前述の教授の主張に反論する論考もあるやに聞いているが、それはそれとして、「国が躍起になってブームを演出している現状」というくだりは、なんとなく皆が感じていることのような気がするが、どうだろうか。

むしろ都会の方がレア度が高いからこそ、観光客も人口も多く推移してきている。自然があるだけではコモディティ(差別化要素の少ない商品)であることを理解せず、PRすればなんとかなると思い代理店に多額の金を支払っても無駄。

(中略)

やるんだったら「こんなの今までの田舎になかった」というくらいのことをしなくてはだめだ。商店街のシャッターに絵を描いてみたり、空き家をオシャレにリノベーションしたり、ありきたりなアイデアしか聞こえてこない。

むろん、一生懸命に知恵を絞り汗を流し地域のために尽力している人も数多い。ただ、その方法論があまりにも定型化し、地域の貴重なリソースが浪費されていることに警鐘を鳴らすのはあながち無駄ではないと思う。

なぜこうも、同じような発想ばかりなのだろうか。そうは思いたくないが、もしかして「無策」だからなのだろうか。もっと地域の住民と一緒になって知恵を寄せ合うにはどうしたらいいのだろうか。いやもうその試みすら制度疲労を起こしているのではないだろうか。なんか、悲しくなってくる。

地方を目指す若者が増えているという報道をよく目にするし、その手の雑誌も人気のようだが、「意識が高いユニークな層の動きを一般化させて見せるのはメディアの常套手段だ」というご指摘も、元その業界の方だけに素直に聞いておこう。

そして、ここなのだが

移住の条件として上位にあがったのは教育、医療、福祉の充実、買い物拠点やイベントの充実・・・全て整備しきる行財政、民間投資があるならば頑張ればいい。

これらは人が安心して暮らす上でベースとなる最低条件だろうが、ぼくはそれに加えて、死ぬまで幸せに働くことができる環境を整備することもまた、地方創生の手がかりになると思う。

もはや定年退職、老後の年金生活などというものは20世紀の幻想に過ぎない。むしろ、元気にいつまでも自分の好きな仕事を自分の気に入るように続けられることの方を喜ぶ時代に入っていると見る。

そしてその礎となるのが、幅広い世代と分野の起業を行政が支援することだ。そのことを、11月10日のぶっとび!地方創生で、「自治体をVC(ベンチャーキャピタル)化」と、これまたズバッと提案しておられる。

市予算の1%のリスクテイクで10%の可能性で上場する企業が毎年3つも4つも誕生する。それはどこの自治体もがやっている定住促進フェアとか相談会より中長期的に見たら遥かに効果的。アーリーステージでは2、3人でやってても、成長していけば数百人、1000人以上の従業員数になる。大化けしたらさらに従業員数は増える。(中略)ゆるキャラにご当地グルメにPVに六次産業に空き家活用に・・・幅広いジャンルでだらだらやって、いたずらに予算を増やし続けるより、テーマを絞ってとことんやれば良い。

そうなのだ。地方行政は、地元で起業する人をもっとサポートすべきであり、それも一時的な助成金の分配などではなく、その事業の出資者としてともに地域を活性化する当事者意識を持って取り組むべきだと思う。

そして、起業家を輩出する環境としてコワーキングというスキームを地方自治体が取り入れて支援するのも、当然だが、アリだ。地方にはそのための人的、物的リソースが結構眠っていて、そのままでは勿体ない。そこに予算をつぎ込むかどうかが、これからの地方都市の明暗を分けると思う。

「地方創生というブームに踊らされるのではなく、成長力のない自治体が今なすべきは『地方消滅』のための準備だ」と言われっぱなしでは、あまりにツライ。まだまだできること、やるべきことはたくさんあるはず。そして、その土地、その土地の人ならではの取り組み方があるはず。早くそこに手を付けたい。

とうことで、時間が来たので終わります。ちょっと、引用が多かったけれど、最後までお読みいただき有難うございました。

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ito tomio
cahootz

コワーキング・プロデューサー。メディア企画、執筆、翻訳、編集。2010年、日本で最初のコワーキングスペース「カフーツ」を神戸に開設。2012年、経産省認可法人コワーキング協同組合設立、代表理事就任。2014年、コワーキングマガジン発行。2016年、コワーキングツアー開始。訳書に『グレイトフルデッドのビジネスレッスン』他