SpaciousはレストランをシェアするWeWork

シェアリングエコノミー、あるいは「食とコワーキング」の判りやすい事例

ito tomio
cahootz
7 min readNov 11, 2017

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Photo by Spacious

以前もシェアリングエコノミーについて書いたけれども、この領域もものすごい勢いでたくさんのビジネスが生まれている。海外で。

そもそも、シェアリングエコノミーとは、

「十分に利用されていない資産にインターネット上のコミュニティからアクセスできるようにし、資産所有の必要性を下げることの価値」(Alex Stephany)

ということだそうで、だいたい以下の要件を満たすとシェアリングエコノミーが起動すると。

1.金銭を介しても物々交換でも取引により経済的価値が生じる
2.利用しきれていない資産がある
3.オンラインでアクセスできる(=インターネット)
4.コミュニティ(コミュニティ 信用、ソーシャルな関わり、価値の共有を通じて取り引きをスムーズにする)
5.所有する資産の減少(私有➔他者からの提供)

この2番めと5番めが判りやすい。買うんじゃなくて、あるものを共用(共有でもいいけれど)しようという発想。それも、日頃、十分に利用されていないものを共用する。

でもって、そのユーザー間でコミュニティが組成される。もちろん、オンラインでもつながる。いい感じですね。

そんな中、ハイエンドなレストランを共用するシェアリングエコノミーで注目の事例がある。

「レストランを共用?どういうこと?」とお思いだろうが、要するに、レストランの非営業時間(アイドルタイム)を他の目的に利用しましょう、という仕組み。団体割引とか、そういう話ではなくて。

で、ナニに利用するかというと、それがなんとコワーキングなんですね。以前もどこかで書いたかもしれないが、ちょっとした動きがあったので書いておきます。

いま、一番注目なのはここ

発祥はニューヨークで、現在14のレストランと提携していて、夜の営業までの昼間にコワーキングスペースとして利用されている。

ここにそのレストラン(=コワーキング)のマップがある。だいたいマンハッタンのロウアーサイドに適度に距離を持って集まっていて利用しやすい。ま、そういうロケーションのレストランを選んでるんでしょうけれども。

ハイエンドなレストランだから室内はどこも落ち着いた設え。テーブルはそのままデスクとして、あと、電源とWiFiさえあれば、とりあえず仕事はできる。ゆったりと。ついでに、毎日、コーヒーと紅茶は無料でふるまわれる。

また、コワーキングとして営業時間中はSpaciousからコミュニティマネージャーが派遣されて、場を取り仕切ってくれる。これをレストランにやれと言っても難しいだろうなと思ってたら、案の定。ここ、大事ですからね。

だいたい平日は8時か9時から17時、あるいは18時まで。コワーキングというとフリーランサーが多いためか、夜型のユーザーをイメージしがちだが、ワークライフバランスに留意して規則正しい就労時間を持つ人も案外多い。そういうニーズにマッチする。

ちなみに、メンバーのレストラン(=コワーキング)の利用状況は、現地へのチェックイン、チェックアウトですべてデータ化されている。

で、レストラン側にはどんなメリットがあるのかというと、まずは文字通り何も生み出せていないアイドルタイムに人を呼び込んでランチを提供できる。憶測だが、ディナータイムのような手の込んだメニューではなく、定食みたいなのをいくつか用意しているのだろう、それでも売上にはなる。もちろん、ランチを注文しなければならないというルールはない。

加えて、ひと仕事終えたコワーカーがそのままハッピーアワーに突入してビールやワインを賞味する、ついでに晩御飯も食べていこう、となる。そこで馴染みになれば仕事に関係なく食事に来るだろうし、パーティなんかの相談もあるかもしれない。

メンバーの利用料から何%かがレストランに支払われているのかと思って調べたが、いまのところその情報は公開されていない。

これがなんと、月$95で利用できる。もちろん、1ヶ月単位でOK。これは平均的なニューヨークのコワーキング相場から言っても結構リーズナブルかと。一週間の無料お試し期間つき。

なお、協働するコワーカーをゲストとして連れてきた場合、ひとりあたり1時間$6、一日$29の利用料。これも安いですね。ちょっとしたミーティングに使えるプライベートルームを用意しているところもある。

ウレシイのはメンバーになれば、市内のすべてのレストラン(=コワーキング)が利用できること。これ、言ってみれば、メンバーならどこのスペースも使えるWeWorkの「NY市内版」だなと思ったわけで。

で、新しい動きというのはこのSpaciousが次にサンフランシスコに進出する。

まだ詳しいことは公表されていないが、こっちも結構なスペース数になりそう。

Spaciousと同じコンセプトは他にもある。ここなんかは、なんと月$49でメンバーになれる。

ここも同じようなレストラン型。

ところで、ぼくは「食」とコワーキングは非常に親密度の高い取り合わせだと思っていて、6月にやったイベント「Beyond the Coworking」でもセッションテーマに取り上げた。

飲食を提供できるコワーキングがこれからは強い、というか、必要とされていくだろうことは間違いない。その延長線上で宿泊も、となるのだけど。

さてこれを日本でならどうやれるか、いろいろ考えているところ。まずはこのレベルのレストランと提携して、かつネットワーク化するなら、やっぱり東京かなと思うが、どうでしょうか?

もし、こういうビジネスに興味ある方おられましたら、ぜひ情報交換させてください。よろしくお願いいたします。

ということで、今日はこのへんで。最後までお読みいただき有難うございます。今回は、ブログJelly Vol.79 Revengeで、リベンジなのに一日遅れて今日書きました。本当に面目ありません。

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他にも、「カフーツ式BlogMagazine」に書いていますので、よろしければチェックください。

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ito tomio
cahootz

コワーキング・プロデューサー。メディア企画、執筆、翻訳、編集。2010年、日本で最初のコワーキングスペース「カフーツ」を神戸に開設。2012年、経産省認可法人コワーキング協同組合設立、代表理事就任。2014年、コワーキングマガジン発行。2016年、コワーキングツアー開始。訳書に『グレイトフルデッドのビジネスレッスン』他