WeWorkJapanのCEOにちょいと話を聞いてきた。

その後のWeWorkをめぐるニュースに唸りつつ

ito tomio
cahootz
12 min readOct 12, 2017

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Photo by WeWork Gas Tower Commons(LA)

いよいよ東京にNY発祥のコワーキング「WeWork」が進出するとあって、9月はそれ関係のニュースが多かった。日本語サイトも出来ててそれはこちら

WeWorkって何?という方は、こちらも参照くだされたし。ちょっと前に書いたものだから数字は古いけれども、そのスケール感は掴んでもらえると思う。

で、そのWeWorkJapanのCEO、Chris Hill氏が登壇するイベントがあると聞いて、のこのこ東京まで出かけて行ったのが9月の25日。そのリポートを書こうと思っているうちに、ポツポツと入ってくる情報がこれまた刺激的だったので、今日まで手付かずだった。で、今日のブログジェリーで書く。

そのイベントは『WORK MILL with Forbes JAPAN』というビジネス誌の創刊記念パーティでいろいろメニューはあったけれども、ぼくの関心は主催者には申し訳ないがChris Hill氏が何を語るか、ただそれのみだった。

壇上でのHill氏の話はこちらに記事があるので、参照されたし。

前置きはここまで。以下、このブログの本題へ。

右:Chris Hill氏

ひととおりの演目が終わってステージを降りてきたHill氏と名刺交換した際に、いくつか用意してきた質問をしてみた。これが非常にオモシロイ回答だった。

Q1:WeWorkは海外ではクリエイター・アワーズ(※)を展開しているけれど、これを日本でも行う予定はありますか?

※世界中の起業家、アーティスト、スタートアップ、NPOなどすべてをクリエイターと捉え、彼らのさまざまな活動を対象に賞を授けるイベント。2017年からスタートして、今年は総額2000万ドルを提供する。最初のイベントは3月にワシントンDCで行われ、6月にオースティン、その後、ロンドン、ベルリン、テルアビブ、メキシコシティでも開催される。11月にニューヨークでファイナルを迎える。

A1:YES.

ほ〜、やるのか、やっぱり。東京にWeWorkができるのは、2月からなので来年はTokyoもその舞台になるわけか。

ちなみに、2月に森ビルアークヒルズ850席、3月銀座シックス750席、4月新橋ビル600席をオープンする。やっぱり、当面、東京以外はやる気配なしだと思う。

ぼくはWeWorkのターゲットは、ここ当分は大企業、それもグローバル企業だと思ってる。これまでの海外の動きを見てると、一昨年〜昨年あたりから積極的に大企業を誘致してきていて、有名どころでは、マイクロソフト、セールスフォース、DELL、IBMなんかがこぞって自社ビルのワークスペースを縮小して、それも一社数百人単位でWeWorkに移ってきている。

これも当然の動きで、これだけ変化の激しいビジネス界にあって、企業は時勢を読んでリソースを素早くシフトできる体制を持たねばならない。そうした中、◯年間のビルのリース契約に縛られて余計なコストを支払うよりも、1ヶ月単位で契約できるコワーキングは何かと使い勝手がいい。

例えば、今月、NYにいた350名のうち60名を来月からフロリダに動かしたいという場合、WeWorkのメンバーシップ企業はその土地のWeWorkを移動したその日から利用できる。しかもそれが、ワールドワイドで通用するとなれば、こんなに都合の良い仕事環境はない。

つまり、この話のキモは何かというと、リモートワークを前提にすべてが動いている、てこと。当たり前だ、「移働」の時代なのだから。

で、東京に集中的にスペースの開設を進めているのは、日本の企業もユーザーとして視野には入れてるだろうけれど、むしろ海外のグローバル企業が日本進出あるいは拡張のための拠点としてスペースを提供する、そういうスキームだと思う。

で、WeWorkは大企業とスタートアップとのアライアンスにも関心が高い、というか、そのつなぎ役の部分でポジションを取ろうとしているようにぼくは感じている。(追記:大企業同士の仲人役はすでやっている)なので、さっきの質問は、実は次の、ぼくが一番訊きたかったこの質問の前フリだった。

Q2:日本のスタートアップにファンドレイジングする予定はありますか?

この時、Hill氏はしばらく黙った。それから、ジっとぼくを見てはっきり力を込めてこう言った。

A2:YES!

なんと、投資の準備があるとはっきりそう言った!これは、日本のどのメディアも聞き出していないビッグニュースだと思う(というか、なぜか誰もそこを訊かない)。

WeWorkは一見、転貸業専門の不動産業者に見えるが、その実はテック企業であり、WORKという領域で新しい価値を社会に提供し、その社会をイノベートしようとしている、彼ら自身もベンチャーなのだが、すでに企業価値は200億ドルを超えるジャイアントだ。

その莫大な資金は世界中に版図を拡げるのにじゃんじゃん使われるのだろうけれども、大企業とスタートアップとのコラボなどに一役買ってるうちに、「君たち、イケるね」というようなシーンもきっとあるはず。

実はWeWorkはここまで大きくなる途上でいくつもスタートアップを買収している経緯がある。それもさっきの記事に書いたのでここでは繰り返さないが、だったら「これ」と思うスタートアップに投資することなど朝飯前じゃないか、というか、そっちでもビジネスできると考えているはずだ、とこう思ったわけで。当たりだった。楽しみだ!

で、次。

Q3:NYでは3つほどColivingもやっておられますけど、日本でもやりますか?

A3:まずはコワーキングをしっかりやりたい、Colivingはそれからだ。

まあ、そうでしょうね。あ、Colivingって何?という方は、これをお読みください。

実はぼくらも、徳島、淡路、和歌山でColivingの計画を進めてる、と話したら「お、そりゃいい、じゃ、組みましょうよ」と、まあ、マジかどうかは判らないけれど、これもいいレスポンスだった。

いずれ彼らもやってくると思うが、たぶん、NYでやってるような都市型のColivingで、ぼくらがやろうとしている地方都市型のそれはやらないだろう。そういう意味ではアライアンスを組むチャンスはあると思う。

ちなみに、いまある筋から年内に東京でColivingをテーマにイベントをいっちょうやりませんか、というお話もいただいているので、それもまたあらためてお知らせしたい。

ま、そんなこんなで個人的にはオモシロイ反応を引き出せたと満足してたら、そのあと、こんなニュースが入ってきていささか驚いた。

WeWorkが利用料をダンピングして他のコワーキングからユーザーを引き抜きにかかってるというブラジルでの話。なんとまあ。

「WeWorkに引っ越してくれたら50%割引する」なんてメールをガンガン送り付けてるらしい。おまけに、ビルの前にフードトラックを横付けしテントを張ってやってくるコワーカーにWeWorkのTシャツやコーヒーを手渡して勧誘してる、と。まさかそこまで、と思ったら、その現場写真が載っている。

WeWorkはNYでも固定席はUS$500–700と、どちらかというと高いほうだが、ブラジルではそれがUS$ 350と、そもそも低料金戦略を展開している。これはもちろんWeWorkの収益性を悪化させるが、5月に CEO のAdam Neumannは「ぼくらは成長することにフォーカスしていて、利益のことは心配していない」と明言してるように、グローバル化を推進する上では、莫大な資金力をバックにこの路線を突っ走る可能性はあり得るかもしれない。うーむ。

…と唸ってたら、今度はこれ。

一年間、利用料を無料にするという条件でライバルのコワーキングから引き抜きしているという話。だんだん過激になって来た。

マンハッタンの10ヶ所とブルックリンの3ヶ所で、2年契約したら1年は無料というセールスメールを送ってるんだそうで、最初の100社に限るとしているが、それもどうかわからないという観測もある。

さっきのはブラジルでのダンピングの話だったけれども、地元NYでもやってくるとは…、これが本当だとしたら、この先どう転がるか気にはなるが、なにか身もふたもないことになりかねないなと思わないでもない。うーむ、うーむ。

…と唸ってたら、ついにこれが来た。

WeWorkとAirbnbがチームを組んだ。Airbnbで宿泊先を確保したビジネストラベラーは、その近くのWeWorkのオフィスが使える。とりあえず、Chicago、New York、Los Angeles、Washington、London、Sydneyの6つの地域から。

パイロット・プログラムということだが、もとよりWeWorkはグローバル企業をメインターゲットにしてるので、瞬く間に世界中に拡げるだろう。というか、その戦略をこのチームワークでもって加速させるのは明らかだ。

旅するフリーランサーにとっては有難い話だが、リモートワークが当たり前になる時代、企業にとってもオフィスというものがどんどんテンポラリーになるのはほぼ間違いない。どこかにワーカーを固定するオフィスという概念はいずれなくなる。

それもこれも、「移働」の時代なのだから当たり前なのだ。

ま、ことほどさように、WeWork周辺はなにかと喧しい。

と思ってたら、WeWorkに30億ドル投資したソフトバンクが副業OKとなったというニュースが飛び込んできた。

この勢いで行くと、ソフトバンクの社員が大挙WeWorkに押し寄せる、というシーンも早晩見られることになるかもしれないなぁ。

「移働」の時代なのだから。

これ以外にもいろいろWeWork関連のトピックスには枚挙に暇がないがきりがないのでこのへんにする。名刺交換したので、今度は単独インタビューを申し込もう、そうしよう。

最後までお読みいただき有難うございます。今回は、ブログジェリーVol.78で書きました。

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他にも、「カフーツ式BlogMagazine」に書いていますので、よろしければチェックください。

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ito tomio
cahootz

コワーキング・プロデューサー。メディア企画、執筆、翻訳、編集。2010年、日本で最初のコワーキングスペース「カフーツ」を神戸に開設。2012年、経産省認可法人コワーキング協同組合設立、代表理事就任。2014年、コワーキングマガジン発行。2016年、コワーキングツアー開始。訳書に『グレイトフルデッドのビジネスレッスン』他