※この記事の続編を書きました。それはこちら。
コワーキングに関わってきて、早いものでそろそろ7年になる。この間、いろんなヒトと会い、いろんなトコロに行き、いろんな場面に遭遇し、またいろんなコトをしてきた。
有難いことに沢山の仲間に恵まれ、心強いネットワークもできたし、そのネットワークは昨年から始めたコワーキングツアーのおかげで更に拡張し続けている。
そんな中、いつもぼくが関心を寄せているのは、単にコワーキングスペースだけのことではなくて、コワーキングをあくまでひとつの要件とした、これからの働き方、生き方のこと、もっと言うと社会のこと。
で、ここへ来てそのひとつの方向性を指し示してくれているのが、Colivingだ。(※海外でもCo-living とハイフン付きで書く場合もあるが、Coworkingに倣ってなしでいく)
その前にCoworkation(コワーケーション)について、おさらいしておこう。
ヨーロッパで盛んに行われるようになってきたCoworkationは、以前、「Co+Work+Vacation=Coworkation、やろう。」でも書いたように、数名の参加者が一緒にどこか海外に滞在して、各自が仕事する(つまり、コワーキングする)という行為のことを言う。
いわゆるデジタルノマド、あるいはリモートワーカー、もしくは起業家(ビジネスオーナー)がこの対象になり、今わかっているだけで少なくとも56のプログラムがあり参加者を募集している。
特定の場所に設定されている場合と、世界各国で展開している場合と、主催運営者によってまちまちだが、ポイントは、
・日常から離れて違う環境に身を置く
・そこで休暇を愉しむ(つまり、アクティビティ)
・しかし、仕事もする
・ついでに、プチカンファレンスを開催して情報や知見を共有する
・でもって、参加者が新しいつながりを得る
後ろの3つは、日頃、コワーキングで普通に行われているものだ(そのはず)。それに「旅」つまり「休暇」をミックスしたのがCoworkation。
以下、代表的なプログラムをいくつかあげておく。各ページの画像を見るだけでも意味がわかると思う。
これらは、だいたいにおいて、その滞在地の(そこそこラグジュアリな)ホテルとコワーキングスペースを使う。かつ、アクティビティがパッケージされていて、参加者があれこれ調べたり予約したりしなくてもいいように、つまりリラックスして旅を愉しめるように主催者側がしっかりその日程を組んでいる。(最後のになると、旅というより、もはや冒険だけど)
つまり、「旅」であり「休暇」であるところがミソで、我々と違うのは彼らが長期滞在型の旅に慣れているということだ。ココ、あとの話につながるので重要。
ちなみに、ぼくらもCoworkationの準備を進めていて、残り、英語のテキストその他諸々を片付ければ、ようやく動かせられるようになってきた。
ドンタクハウス(※)というのがそれだが、海外からノマドワーカーを日本に呼び寄せて、日本の、特に地方都市に滞在して休暇を楽しみつつ仕事もするという、57番目のプログラムを海外へ向けて発信する。
※このプロジェクトはいったん中止となり、その後あらたに、Trabizとして進行中。(2020年7月17日追記)
さて、Coliving。やっと。
書いて字のごとく「共に暮す」だが、そう聞いてすぐに思いつくシェアハウスとは、趣がまるで違う。やや過激な例だが、先にこれをあげておきたい。
Membership Based Co-Living | PodShare Los Angeles
会員制のColivingだが、まったくプライバシーなしのベッドとキッチン、シャワー、トイレ、それにコミュニティ・スペースで構成されている。馬鹿でかい倉庫を利用して、リノベーションというよりも、倉庫の中に部屋を置いたという、まさにアメリカが誇る2 X 4 の工法で作り上げた実に効率的な施設だ。
このビデオが判りやすい。長いので適当にスキップしてね。
で、ここを根城にして、この地(ここはLA)の住人になり、メンバー同士のコミュニティに参加し、ときにはイベントを開催し、各自、昼間は仕事に励む。驚いたことにカップルでも入居できる。(その場合は、ダブルサイズのベッドが使える)
ゲストハウスのドミトリの発展型とでも言おうか、一見、学生寮のようにも見えるだろう。しかし、ベッドだけで個室なしというコンセプトがすごい。ただ、まあ、この例はエキセントリックにすぎるかもしれない。
お気づきの方もおられるだろうが、先のCoworkationの事例の中には、「Coliving & Coworking」という表記のあるサイトがある。つまり、Coworkationと呼んでいるのは、実はColivingのいち形態であって、あくまで「旅」であり「休暇」だが、そこに滞在する期間、「共に生活する」という感覚が強い。
だから、Livingなのか、とはたと気づいた。つまり、暮らすという現在進行形の行為を指すのだ。
Coworkationは短くて2週間から1ヶ月、長くて2ヶ月ぐらい、Colivingはもっと長い、数カ月から1年という感じだ。
Coworkationができるのは、もちろんリモートワークを可能にするテクノロジーのおかげだ。休暇を楽しんでいるが、仕事もしっかりやりましょう。それには、Wifiとノートパソコンがあれば大丈夫、というわけだ。
そのリモートワークを、IBMや富士通のような大企業が、よりパフォーマンスの高い生産性を生む方法として取り入れ出した。つまり、フリーランサーのみならず、会社員もオンザロードで仕事する時代になってきた。
米ギャラップのリポートによると、昨年、アメリカの会社員の43%がリモートワークを実践している。リモートワーカーの31%は、週に4日ないしは5日、オフィスを使って「いない」。
ここなんかは、企業とパートナーシップを結んで従業員にリモートワークを勧めている。リモートワークする従業員ひとりあたり、年に平均$11,000の間接費が節減できるというから雇用する方も無視できない。
かつて、「テレワーク」と言っていたが、その当時は在宅勤務という言葉の通り自宅にいることを前提にしていた。だが、いまどきのリモートワークは「移動する」ことが前提だ。
つまり、「移働」だ。
このことは、先述の企業の雇用政策にも絡んでいるし、Airbnbなどの民泊の隆盛も背景にあるが、最も大きく反映しているのは、「働き方」「生き方」に対する人々の考え方の変化だろう。このムーブメントは、引いては社会の構造すらも変えるパワーを秘めているとぼくは思っている。
で、移動しながら仕事をする人が増えてくると、そのうち中長期的にその地に滞在する滞在型のリモートワーカーも数多く現れるだろう、その人たちはCoworkingを利用して仕事するが、そこに共同生活できるColivingも併設されていれば、コミュニティにも参加できるし、便利なことこの上ない。
と思ってたら、すでにあった。
例えば、これはカンボジアのそれ。いま、カンボジアにいる平尾さんが教えてくれた。
こっちはちゃんと個室が用意されていて、コワーキングスペースも24時間使える。空港からの送迎付きで、レンタルバイクもあり、4GのSIMも与えられる。ちなみに、1週間$105から利用できる。上手にLCCを使えば、日本からでも全然可能なプランだ。いいな、行ってみたい。というかコワーキングツアー海外編リストに入れておこう。
で、よく見ると、ここではインキュベートも行っているらしい。そこはコワーキングの役割のひとつでもあるから、特段驚かないが、それで先日、ドンタクハウスのパートナーの柴田さんと話していたことをふと思い出した。
こうして、移動しながら仕事する人の中には、もちろん起業家もいるわけで、もしかしたら訪れた地で彼の地の人と交流するうちにビジネスアイデアがスパークし、その地で起業するということも大いにあり得る。
つまり、起業もリモートで興す人が早晩現れるだろう。というか、ひとりで悶々と考え込むより、居場所を変えて新しい人と会うほうが、いろんなヒントを得てその後のその人の人生に大きく貢献する。コワーキングツアーをやってみて、つくづくそう思う。そして、そういう人たちのニーズに、CoworkingもしくはColivingが大いに役立つのは容易に想像できる。
余談だが、今では、世界中の有能なフリーのエンジニアを旅費と引き換えに募集する、というサービスもある。
スタートアップ企業がホスト役になり、フリーのエンジニアをゲストとしてマッチングする、いわばAirbnbのようなサービスだが、面白いのはエンジニアに支払う報酬は旅費、宿泊費、時には食事費つき、だということ。
スタートアップ企業は人件費を抑えられ、エンジニアは旅費を節約しながら旅を続けられるという、実にカシコイ仕組みだ。そういえば、昔、「一宿一飯の恩義」という言葉があった。若い人は知らないだろうが、ま、それはいい。
そのうち、そのままビジネスプランに参加して創業メンバーとなりつつも、また旅を続けるリモートワーカーも出てくるだろう、というのがぼくらの見立てだ。
「えーと、CTOは、いまどこ?」
「ニュージーランドです」
「あ、そ。じゃ、Zoomでやるか」
という感じ。というか、ぼくが目指してるのはそれなんですけど。
で、この話、このあと、インターネット以来の大発明と言われているブロックチェーンや、ぼくらのやってるCooperativeとも絡んでくるのだが、話が長くなるので今日はこのへんで。
ということで、最後までお読みいただき有難うございます。このブログは、ブログJelly Vol.69 Revengeで、また遅刻して書きました。ごめんね、ジェリー。
※この記事の続編を書きました。それはこちら。