イーサリアムのハードフォークに対するカルダノラボの見解

※こちらはCARDANO LaboメンバーとMorikawa氏が行った議論の内容をもとにMorikawa氏が執筆した寄稿投稿です。

The DAOへのハッキングから始まった一連の騒動にも決着がつく見込みだ。イーサリアムコミュニティは、The DAOへのハッキング事件の対応としてソフトフォークまたはハードフォークを行うか、はたまた何もしないか、3つの選択肢をつきつけられた。

その後の幾度にも及ぶ議論の末、ハードフォークの実行が候補に上げられ、その是非を問うコミュニティ内での投票結果は、以下のように90%近くが賛成という結果となった。

追記:その後、最終的な集計結果は約80%が賛成となった。
2016/07/13 16:00 調べ|参照:http://carbonvote.com/

ハードフォークについては様々な意見が出ているが、ブロックチェーンのサービス提供そして推進をしていくCARDANO Labo(カルダノラボ。以下、「CL」。)と私が行った議論の内容を紹介していきたいと思う。CLの立場としては、ハードフォークに対して賛成とのことだ。

CLが賛成する理由は以下の通りだ。

①イーサリアムはあくまでサービスプラットフォームとしての本質を守る決断を行った点。

②一部の者の恣意的な判断ではなく、あくまでコミュニティ全体の総意として決定が行われる点。


イーサリアムの本質はサービスプラットフォームである

今回の議論について、イーサリアムの本質は何かという部分が非常に重要だ。

たしかに、今回のハードフォークに対しての反対意見の多くは、分散化プロトコルであることや分散化社会の実現といった観点だったように思われる。

イーサリアムの本質を、コインの価値を実現するのではなく独自のブロックチェーンとスマートコントラクトを有したサービスプラットフォームであるとすれば、今回のハードフォークへの賛成もうなずけるのではないか。

また、CNN.LAでも以下のように述べられている。

If all goes smoothly, Ethereum may show to the world that it contains safeguards when things go wrong.
ハードフォークへの移行が全てがうまくいけば、Ethereumは世界中に「何か問題が起きてしまった際の安全装置」を備えていることを提示できるだろう。
The first safeguard was the smart contract’s lock in period which trapped the funds and the thief, giving the ecosystem the option to revert the theft. If this was a transaction based hack in bitcoin or ethereum, the funds would have long since dispersed in tens of thousands of addresses, making any enforcement action impossible. As counterintuitive as it is, therefore, this may show that smart contracts are actually safer.
1つ目の安全装置は、資金と盗難に対するスマートコントラクトを用いたロック期間だ。これがあったおかげで、盗難の対処についてコミュニティでの合意形成を行う時間があった。これがもしビットコインまたはイーサリアム上のある取引に対するハッキングだった場合、どんなに努力をしたとしても、数万のアドレスから資産が消えてしまうことになっただろう。つまり、予想に反して、スマートコントラクトの安全性が証明されたとも言える。
The second safeguard is the community itself which has shown to the world that they treat ethereum as a technology, rather than as an ideological tool, and are therefore willing to intervene in unison when the circumstances are sufficiently exceptional and highly beneficial to the ecosystem and its people. Making ethereum and its community fundamentally different from Bitcoin.
2つ目の安全装置は、コミュニティーがEthereumをただ観念的なツールとしてではなく、技術としてみなしているということを提示したことだ。そしてそれが、エコシステムとそこに参加する人々が十分に例外的で、利益があると判断した際に一斉に介入できるという意志を示した。一度数万のアドレスから資産が消えてしまえば、どのような努力をしても取り戻せないのだ。これはEthereumをBitcoinとは根本的に異なるものであるということを確実にした。

分散型台帳上のデータに金銭的価値を実現したビットコインとは異なり、イーサリアムはあくまでもワールドコンピューティングを目指すプラットフォームだ。この点において、コミュニティの動きもコインとしての価値ではなく、後者のプラットフォームとしての意義を尊重した対応を取ったのだろう。

暗号通貨を技術の観点から研究するCARDANO Laboとしても、イーサリアムとビットコインは異なる性質を持ったものと述べてようだが、これが世界的にも同じ理論で動いていることの証明がなされたと言えるだろう。

今回はプロトコル上で行われた取り引き(トランザクション)に対するものではなく、あくまでもThe DAOへ行われたファンディングへの盗難に対する保護策だった。これに対してコミュニティ自体が、救済することを妥当であると判断したというわけだ。


あくまでも分散型の合意形成によって実現した

このコミュニティが妥当であるという判断をしたということは、今回のハードフォークを実行するという意志決定として重要な要素だ。

今回のハードフォークによる巻き戻りが暗号通貨の分散型の取引としての「第3者により介入されない」という本質的なメリットが意味をなくすのではないかという意見が多く見受けられた。

確かに、今回のこの決定はコミュニティによる介入を許すこととなった。しかしこれは、イーサリアムコミュニティーへの参加者の過半数の意志によって決定づけられた分散的な合意形成だ。

これについて、Colony.io & Ownage.ioのファウンダーであるJack du Rose氏のコメントが的を得ているので、紹介してたいと思う。

Furthermore, it’s important to note that nobody has the ability to unilaterally force a hard fork. Not Vitalik, not the Ethereum Foundation, not Ethcore nor any of the other client teams. The considerable spirited debate on this topic within the community clearly demonstrates that concerns about a hard fork being the thin end of a wedge of arbitrary censorship are without merit.
重要なのは、誰も個人が恣意的にハードフォークを決定する力を持っているというわけではないということだ。Vitalik(イーサリアムのファウンダー)ですら、イーサリアム財団ですら、Ethercoreや他のチームですらその権限を持っていない。自由な議論がコミュニティー内でなされ、メリットがない任意の検閲性へ懸念の終焉をハードフォークによってデモンストレーションしたのだ。

分散型技術体系の特徴は、必ず検閲されない、第三者の手が入らないということが本質なのではない。プロトコルや、プロトコルを支えるコミュニティの総意によって合意形成が実現されているということだとも言える。

確かに、合意形成がされようが必ず巻き戻らないということを、本質的なメリットとしているのであれば、今回のことは大問題かもしれない。お金としての価値をここに求めるのであれば反対すべきだろう。

しかし、より良いサービスを実現するための技術として捉えられるイーサリアムのようなプラットフォームへの参加者の多くは、お金としての価値にのみ縛られているのではないということが証明された。

確かにVitalik氏がハードフォークの方法や可能性を示唆するように、有名な個人の発言が少なからず影響を与えたことは否めない。しかし、そうだとしても最終的に判断を下すのはネットワークに参加するユーザー個々人なのだ。

分散化技術が当初の技術的な特徴を守ることだけに価値があるのではなく、プラットフォームとしての存在価値を提示した例として、1つの歴史が生まれた瞬間と言えるだろう。

CLのCOO 山本氏も以下のようにコメントしている。

CARDANO Laboはブロックチェーンやスマートコントラクトなど、技術としての暗号通貨やマーケティングモデルを研究し、新たな可能性を提示する研究開発所です。暗号通貨がただトレードのための仮想上の通貨としての価値だけではなく、技術プラットフォームとして新たなイノベーションの為の可能性が模索されているということが世界のコミュニティーに支持されたこの日を誇りに思います。
ー CARDANO Labo COO山本より ー

また、今回の件に関して、Slock.itのStephan Tual氏は次のように述べている。

In my opinion, holding on to the stolen funds was never really the attacker’s end game. A fleeting, exciting possibility perhaps, but not the end game.
私の意見としては、盗んだETHを保有しておくことは、アタッカーの勝利には決してならない。つかの間見いだせた可能性に歓喜していたとしても、それでゲームの終わりではない。

今回の件で、イーサリアムは技術だけでなくコミュニティによっても支えられていることが、明らかとなった。これにより、イーサリアムを用いたサービス開発はより活発になっていくかもしれない。今後も、発展を続ける暗号通貨の動向を見守っていきたい。