MyCryptoHeroesのヒーロー取引を深掘りして分析する

Naochika Hanamura
catabira-japan
Published in
8 min readMay 29, 2019

こんにちは。catabiraの花村(Twitter: naomasabit)です。前回の記事「NFTマーケットをブロックチェーンデータから分析する」ではセカンダリーマーケットのNFT取引金額推移を分析しました。その中で多くの割合を占めるMyCryptoHeroes(MCH)をOpenSea取引から深掘りしてみます。

目次

  • 目的と分析条件
  • 1. 全体の取引金額を時系列に分析する
  • 2. 取引単価の影響要素と時系列変化を分析する
  • 3.ヒーロータイプ毎の取引ランキングを作り、傾向を見る
  • 4.OpenSeaマーケットのプレイヤー推移を見る
  • まとめ

目的と分析条件

【目的】

前回、MCHのHeroでは取引金額が上昇している傾向がみられました。取引金額を取引単価と取引数量に分解して見ることや、取引単価に影響する要素を深掘りすることでMCHのHeroに関する知見を深めていきます。

【分析条件】

・分析期間は 2018/10/01~2019/4/30です。

・分析対象はOpenSeaのMCH Heroの取引です。

・バルク取引は除外しています。(OpenSeaでは複数のNFTをセットで売却する事ができます。その取引では個々の単価が不明になるので除外しています)

・分析対象としている金額はETHの取引のみであり、Wrapped Etherや独自トークンによる取引金額は含んでいません。

用語:ヒーローの属性について

MCHではヒーロー毎に属性を保持しています。特に価格を決める要素として影響する属性は以下3点などがあります。

  • HeroType: MCHは4桁のヒーロータイプが決められています。2001はライト兄弟、4012は沖田総司といった具合です。
  • Rarity: MCHでは4つのレアリティが定められています。レア順にlegendary > epic > rare > uncommon の4種類があり、基本的にはレアリティの高いヒーローは強く、高値で取引される傾向にあります。(common,noviceレアリティもありますがメインネット放出はできません)
  • SupplyLimit: MCHではヒーロータイプごとに供給量が設定されています。基本的には強いヒーローは供給量が少なく設定されています。ヒーローを発行する権利のある運営アカウントでは供給量を変更する事ができますが、その変更は供給量を少なくする変更のみが許可されており、かつ変更されたログはありませんでした。

1. 全体の取引金額を時系列に分析する

1–1.全体として取引金額は増加し、特にepicのヒーローが押し上げている

レアリティ毎の取引金額を可視化しました。このビジュアルをみると、2019年4月は少し下がったものの、それまでは右肩上がりで売上が上がっています。特に正式リリース後の12月頃から急激に増加し始めています。

特にepicのレアリティが最大の取引金額を占めています。

下にヒーローが作成された累計種類を並べてみます。(時系列を合わせるために取引金額のビジュアルは時系列を縮めています)

epicは豊富な種類が作成されている事がわかり、epicについてはヒーローの種類の増加に連れて、取引金額の増加しているように見受けられます。rare,uncommonの種類は増えていますが、OpenSea上での取引は比例して増えているわけではないようです。

1–2.取引数は1月に一時的に急増、全体的な取引単価は増加傾向

取引金額を取引単価と取引数に分解してみましょう。以下は週単位での取引単価と取引数の推移です。10月末に単価が跳ねているものはありますが、取引数が少ないため外れ値と考えて良いでしょう。時々落ち込みはありつつ全体としては取引単価は上昇してきました。

レアリティを色付けしてみると、1月に増えた取引はrareとuncommonがほとんどである事がわかります。epic,legendaryは供給量がそもそも少ないこともあり、取引量は大きく変化していないようです。

全体として取引金額、取引単価は上昇しています。

2. 取引単価の影響要素と時系列変化を分析する

これまでは全体の取引金額、取引数と取引単価を概観してきました。取引単価について影響を与える要素を深掘りしてみます。

2–1.取引単価はレアリティによって明確に取引レンジが異なる

以下はレアリティ毎に分けた単価の箱ひげ図です。粒はヒーロータイプで、値段はトレード金額の中央値を示しています。Legendaryの取引中央値は1500ドル程度で、epicは350ドル、rare、uncommonは75ドル、40ドル程度となっています。

左は全てのレアリティを並べた箱ひげ図、右はLegendaryを抜いて並べた箱ひげ図です。

取引金額の過半を占めるlegendaryとepicのヒーローについて、単価の中央値推移をプロットした図が以下になります。4月後半以外はいずれも単価上昇はしていますが、legendaryは元々単価が高い事もあってか、上昇率ではepicの方が高いようです。

epicの単価と取引数推移
legendaryの単価と取引数推移

レアリティの高いヒーローは強力かつ供給量も限られているので、レアリティによって単価は大きく影響されている事が見て取れます。

3.ヒーロータイプ毎の取引ランキングを作り、傾向を見る

3–1. 供給量の多いヒーローか単価の高いヒーローがランキング上位に登場している

以下はヒーロー毎の取引金額ランキングです。(選択しているヒーローの画像を表示するようにダッシュボードを作っています。)
レアリティ1位はuncommon(ピンク)ですが、上位はepic(緑)の占める割合が多い事がわかります。

レアリティ毎の取引高ランキング

ランキングではグリム兄弟(uncommon)が1位、ベートーベン(epic)が2位でした。グリム兄弟はエアドロップされたヒーローであり、取引数が多いために一位に乗ったと思われます。

ベートーベンは直近の単価が800ドル前後と非常に高額となっているため上位にきていると考えられます。また、ダッシュボードの下のシートでは取引単価の中央値を表示しています。これによるとグリム兄弟、ベートーベンの単価は大きく上昇していました。

グリム兄弟の取引単価と取引数推移
ベートーヴェンの取引単価と取引数推移

その他もいくつかみてみましたが、uncommonで取引金額上位のものは供給量が多いもの、epicで取引金額上位のものは取引単価が多いものという傾向が見られました。

4.OpenSeaマーケットのプレイヤー推移を見る

4–1.maker(売り手)、taker(買い手)共にアドレスの種類は増加して、マーケットのプレイヤーは増えていると考えられる

最後に、MCHのOpenSea取引は少人数の参加者が回しているのか、多数の参加者がいるのかを調べました。重複しているアドレスは1つとし、アドレスの種類を数えています。

累計のmaker(売り手)、taker(買い手)のアドレス数推移を見ると、綺麗に上昇しています。

maker(売り手)、taker(買い手)のアドレス数累計推移

個人が複数のアドレスを運用している可能性は十分ありますが、これを見る限りプレイヤーは増えていっているように見えます。

まとめ

2019年の4月は少し下がりましたが、全体の取引金額、取引単価は上昇傾向にあります。

取引単価はレアリティによって影響し、取引単価レンジもレアリティによって大きく異なります。ヒーロータイプ毎の取引金額ランキングでは、高額な取引単価または多くの供給量のヒーローが上位にきている事がわかりました。

アドレスの種類から見えるMCHのヒーローマーケット参加人数は増えてきており、流動性が上がっていると言えるでしょう。マーケット参加人数と、供給量バランスをうまく働かせることで取引金額を増加させていく事ができるのではないでしょうか。

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