AIよりも「人」を大事にしたい、米国のコールセンター事情

Toshi Koike
AppSocially Blog
Published in
11 min readNov 2, 2017
夕方からはEXPO会場にカジノが登場し、活発にネットワーキングをしていました

・カスタマーサポート業務にAIやチャットを導入する際は、新たな人を採用するつもりで準備をしよう

・今まで以上に従業員満足度向上を考えることが、人とテクノロジーの統合には欠かせない

・早期にチャット型コミュニケーションを事業に導入するには、同時に複数の課題を解決する必要がある

2017年9月26〜27日、米国ラスベガスで開催された「ICMI Contact Center DEMO」に参加して、アメリカのコンタクトセンターに携わる業界の人たちと、今後の課題やトレンドについて意見交換してきました。

・名称:ICMI Contact Center DEMO
・日時:2017年9月25日〜27日
・場所:ラスベガス マンダレイ・ベイホテル コンベンションセンター
・主催:ICMI (International Customer Management Institute)
・参加人数:800名(速報値)※97%が北米からの参加

ICMIとは、米国におけるコールセンター・コンタクトセンターの主要団体の一つで、毎年春と秋にカンファレンスを開催しています。

参加者の主要な業種は金融やヘルスケア、小売業のカスタマーサポート部門やコールセンター・BPO事業の方で、EXPOやSessionの出展者はSalesfroceなどの大企業からクラウドソリューションのスタートアップまで幅広い企業が集まっていました。コンテンツは、Keynote、EXPO、Session(Work Shop)という一般的なカンファレンスの構成です。

さて、全体を通して会場でよく話題に出ていたことを紹介します。

どうすればAIをカスタマサポート業務に取り入れることができるのか

文字通り、毎日絶えず運用し続けているカスタマーサポート業務の中に、いかにAIやチャットを組み込んでいくかという議論です。

日本でも、単独で問い合わせ業務をAIで完結させる事例はチラホラ出てきていますが、現時点で「人」が対応している業務の中にAIを統合できている成功例はまだまだ少ないのが実情です。
(実際の活用事例は世の中にたくさん記事が出ているので、ここでは割愛します)

一方で、急速に発展する技術を無視することもできません。
誰もが「おい、お前の会社ではどうやってAIを使っているんだ」と聞き合っている姿に象徴されるように、解決策の糸口を誰しもが欲しているのです。この点は、日本の現状と大差がないように感じます。

また、実際に米国企業のコールセンター担当者と数多く話をして一番強く感じたのは、やっぱり「人=オペレータ」が一番大切であり、テクノロジーはきっと優秀な従業員には追いつけないだろうと考えていること。

・人とAIは対立軸にある
・人でしか「優しさ」や「(顧客に)感動を与える」ことはできない

これは日本でも米国でも、特に大企業において多く見られる考え方です。AIに限らず新たなテクノロジーが拡大される際には、既存の慣習や領域からそれらを捉えてしまい、なぜか敵対心のような感情を抱いてしまうようです。

そこで、私はこういった話を聞いたときには必ずこう伝えます。

「AIとかテクノロジーとか考えるのは一旦置いておき、新たに優秀な人材を採用すると思って、業務フローや運用体制を考えましょう」

つまり、AIを使ったテクノロジーを活用するということは、(そのレベルはさておき)新しくスタッフを採用するつもりで受け入れ準備をすることと同義である、という意味です。

そうすれば、

オペレータの仕事を奪うかもしれない
機械的な対応だとクレームが入るかもしれない
今のオペレーションを変えることになるかもしれない

といった考え方にはなりません。むしろ、新たに入ってくるスタッフの力を最大化するためにはどうすればいいか、という視点で導入を検討できるため、本来そのテクノロジーが持つポテンシャルを十分発揮させられるようになります。

もちろん、考え方一つで成果が変わるわけではないのですが、導入を決断するのも運用するのも結局は人が行うわけであり、どのようにそのテクノロジーに向き合っていくかという考え方は、今後のビジネス開発担当者のパフォーマンスに大きな影響を与えることは間違いありません。

互いに自社でどういったテクノロジーを活用しているのかをディスカッション

従業員(オペレータ)の満足度をどのようにして上げられるか

AIを敵ではなく「人格あるテクノロジー」として捉えることが重要である、と言った直後ではありますが、マーケットの現実として、この話題はカンファレンス全体を通して最も活発に議論されていたテーマです。

基本的にこの課題は、ただお金をかけたり、テクノロジーを使ったりするだけでは解決できないものであり、唯一の答えがあるものでもないので、多くの参加者が熱を持って議論をしていました。

これまでも業界では、コールセンターのオペレータ満足度向上を図るために、個別ブースを大きくしたり、駐車場を建物の近くにしたり、福利厚生を充実させたりと、さまざまな手を打ってきました。

しかしながら、今後はコールセンターに対するテクノロジーの参入は不可避であり、今回のカンファレンスにおいても、いかにその(ネガティブな)影響を軽微に抑えるか、が議論の中心でした。

カスタマーサポート業務の成功にとって最重要なことは、従業員がロイヤリティ高くイキイキと働き高い、生産性を維持することです。そして、「オペレータの士気や意思決定基準」に悪影響を与えないようにするために、これまで以上に従業員満足度向上に力を入れる必要がある — この考え方は大変重要ですが、いまのAIやチャットバブルの世の中においては、実はあまり重視されていないように思います。

つまり、これまでもずっと重要視してきたことを意識の根底に置きながら=忘れずに、どうテクノロジーを統合していくかということを、並行して検討することが、これからのカスタマーサポート業務の構築において非常に大切であると言えるでしょう。

コンタクトセンターにおける課題やトレンドが多く紹介されていました

コンタクトセンターにテクノロジー企業は価値を提供できるのか

弊社はChatCenter iOというカスタマーサポートや予約・購買プロセスなどに会話型コミュニケーションを導入できるサービスを提供しています。

当然、コンタクトセンターやカスタマーサポートを持つ企業は潜在顧客になるわけですが、彼らに対してどのようにすれば価値を感じてもらえるのでしょうか。

先進のテクノロジーを目にした彼らは口を揃えて、

「素晴らしい製品だね、ぜひ導入してみたいよ」

という言葉をかけてくれます。

しかし、今回カンファレンスに参加していた米国のテクノロジー企業は、みなこう言います。

誰もが「素晴らしい製品だね」と言ってくれるが、導入されるのは早くも1年後、いや2年後なんだよね・・・

特に大企業の場合、なかなか具体的に話を進めるまでに時間がかかります。これは米国でも日本でも大きな違いはなく、たとえ導入の意思決定があったとしても稼働までには長い時間がかかることが一般的です。

このギャップはどこにあるのでしょうか?
どうすれば導入までのリードタイムが縮まるのでしょうか?

それは前述したコールセンター業界、カスタマーサポート従事者の気持ちを理解した製品やサービスを提供することがすべてです。

・カスタマーサポート部門はコストセンターと思われているから、新規投資の優先順位が高くない
・今でも業務自体は運用できているため、リプレイスするためのきっかけが作りづらい
・ITシステムを導入しようと思うと、オペレータから不審がられる
・業務フローを変更するのが大変そうだ

上記のような課題をいかに同時に解決できるか(=単一の課題を解決できる製品はたくさんあります)が鍵であり、最も難しいテーマです。

そして、今回のカンファレンスで多くのテクノロジー企業とディスカッションする中で、早期にAIやチャットを既存業務にうまく統合して価値を発揮するためのポイントを、よりはっきりと定義することができました。

カスタマーサポートにチャットやAIを導入したいという方も、逆にカスタマーサポート用のサービスを作っている方も、興味がある方はぜひお気軽にご連絡いただければご紹介いたします。そして、すべてのビジネスコミュニケーションがもっと快適で便利になるような世界を、この業界に関わる全員で作り上げていければ最高です。

ラスベガスにもUBERがやってきた

ホテルの看板に設置されたUBER乗車口の案内

余談ですが、最近はラスベガスでも当たり前にUBERが使えるようになっています。
私が、はじめてラスベガスに行ったのが今から17年前で、当時の交通手段は徒歩かタクシーのみ。若い頃はタクシーに乗るのがもったいなかったので、炎天下の中をひたすら徒歩で動き回っていました。

それから、幹線道路にはバスが導入され、そこそこ利便性は向上しましたが、ラスベガスはなんといっても一つひとつのホテルが広いので、ホテルの前にあるバス停で降りてもそこから目的地まで徒歩15分、なんてこともザラです。そのため、長らくタクシーが主要な交通手段として君臨してきたわけです。(ラスベガスのホテルはたいていバスが通る大通りから5–10分ほど歩いた内側に車寄せがあります)

そんなラスベガスも、マーケットの変化を受け入れて2015年にUBER(ライドシェア)の参入を認めたわけですが、今ではホテルの案内板にも掲示されるまでに!

いろいろと騒がれているUBERですが、この案内板が示していることは、まさに「社会インフラ」としてのポジションを確立したということでしょう。

とにかく、1ユーザーとしては高いタクシー代に悩むこともなく気温50度の中を歩くこともなく、快適に移動できることが、何より喜ばしいです。

2017年10月1日に発生したラスベガス銃乱射事件の犠牲となられた皆様に対しまして深く哀悼の意を表しますと共に、被害者の方々に心よりお見舞いを申し上げます。

・カスタマーサポート業務にAIやチャットを導入するにあたって大切な考え方を詳しく知りたい

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という方はぜひ、下記までお問い合わせください!

お問い合わせ先

本件へのお問い合わせ、または自社で会話型コミュニケーションの導入を検討していたり、チャット導入を社内でスムーズに進めるために必要なステップを知りたい方は、AppSocially Chief Operation Officer の小池敏弘まで、以下のChatCenterかEmail<hello@chatcenter.io>にてお問い合わせください。

https://app.chatcenter.io/lp/chatcenter/appsocially

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