ユース世代における日本とベルギーサッカーの育成方法の違い

Shunsuke Mori
chunkeke-nikki
Published in
7 min readDec 10, 2015

日本のFIFAランキングは53位。国民的スポーツとして成り上がるには、到底満足できる状態ではない。

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香川真司、本田圭佑、長友佑都。彼らがビッグクラブでプレーしようが、日本サッカーは、まだまだだと感じる。なぜ、だろうか。個人的に理由はただ1つだと考える。

「勝負にかける思いが世界レベルでない」ということ

最近の代表戦を見ても、基本的なテクニック、スピードはそこそこであるが、目の前のボールをどんな手段を使ってでも取りに行く。ロスタイムで負けていても、死に物狂いで点を取りに行く姿勢は感じられない。オーディエンスはあまり面白さを感じないし、ボクシングを見ているかのようなエキサイティングで、熱狂できるような感情にはなれない。ロスタイムに同点!みたいな劇的な展開にならない。戦術や形にこだわっていて、どこか機械的に淡々と試合をしているようにしか見えない。そういうチームはなかなか結果として勝ちきれない。

なぜだろうか。それは、一瞬一瞬の戦いに日本の選手自身が熱くなれていないからであると考える。つまり、勝負にこだわる。勝負強さがある。とは今の日本代表、そしてJリーグにはお世辞にも言えない。

この現状はどうして生まれたのか。それは、幼少期のサッカーの取り組み方、ユース世代における育成システムの違いが起因していると考える。

僕は、幼稚園から高校まで15年間サッカーに打ち込んだ。幸いにも日本サッカーと欧州サッカーの両方をユース時代に経験した。小学生のときには、千葉の地域クラブに所属ひ、東関東大会優勝するなど、そこそこ強いチームでプレーした。中学になると日本の独特な文化でもある学校の部活動でサッカーをした。そしてベルギーでは、2部リーグに位置するチームの下部組織U16, U17のユースに所属した。このユース世代における育成システムの違いが、勝負強さの違いにつながっていると考えている。

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ベルギーには、部活動はない。ユースクラブのみだ。ほとんどのクラブにトップチームが存在し、基本的には各世代に分かれて、U-18, U-17….U-8と存在する。リーグは、1部、2部に限らず5部、6部とたくさんの階層がある。そのため、自分の技量やサッカーへの情熱の強さによって、クラブを選択し、ユースに入団する。練習は、週に2~3回で、1度の練習時間は1時間半から2時間程度、週末にはリーグ戦がある。あまり練習量は多くないと感じるかもしれない。

では、なぜこの育成システムが勝負強さに日本のユースと差がでると考えるのか。
上記を見たら、システムは日本のユースとそんなに大差ない。しかし、これから説明するいくつかの点において、勝負強さに差が出ると考える。

まずはじめに言えることは、結果を出せば、それなりの良い待遇が待っていることである。

目立った活躍をすれば、上の世代への飛び級ができることはもちろんのこと、トップチームへの練習生としての参加ができる。これは大きい。いくら3部、4部とはいえ、トップチームはトップチームだ。頑張れば、クラブの顔になれる、というモチベーションが働く。そして、トップとユースが身近に感じるというのもかなり大きい。

また、クラブに所属するための年間費が無料になったりもする。この仕組みは日本にはあまり見られない。なぜ、欧州のクラブチームはそのようなシステムをしているのかというと、たとえユースであっても引き抜きが起こっているからだ。
僕のチームメートも数人が、リーグ戦で戦っていた相手監督に口説かれ、トライアウトを受けた末に他のチームへと移籍してしまうことが起こった。

それなりの結果を出せば、それ相応の待遇が待っている。
選手は向上心をもって練習に、試合に、取り組むようになる。
練習時間はそこまで長くない。それが逆に、短い時間で質の高い練習を心がけるようになる。球際の激しさは、そこから生まれる。

このようにユース世代から勝負に対する執着は、極めて高かった。スライディングは13歳から鋭かった。ゴールパフォーマンスもプロ顔負けで一丁前。絶対に負けないという精神が小さいときから根付いているからこそ、その先にあるプロのリーグは球際の激しさや個々人の勝負に対する熱さがそのまま存在している。

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一方で、日本にはユースはユース、部活は部活として、独立している。そこには、Jの下部組織やJFLの下部組織など以外は、トップチームは存在しない。そのため、部活でプレーする選手は、香川や本田などの選手、また欧州で活躍するトッププレーヤーを目標に日々の練習に取り組んでいる。最終的な目標としては、問題ない。しかし、プロという領域は、彼らを基準にするよりももっと開けてた存在である。※もちろん年俸や名声は無視してだが。

しかし、トップがないクラブチームや部活で練習する選手には、「身近」に目標とする先が「個人単位」ではない。欧州と違い、個人がまずはここの4部のトップチームに入るんだ、このレベルの選手にはいつまでになるんだ、という目標を持ちにくい。最初から香川なわけだから。だから、現実と目標への乖離があまりにも開き過ぎていて、目標が身近ではない。身近な目標でいうと「チーム単位」では存在する。県大会でベスト4とか、全国大会出場とかはある。でもそれはチーム力であって、個人のスキルの集合体+戦術によって勝敗がきまる。必ずしも個人単体でどうこうという問題ではない。

このチーム意識が、互いをライバル視するというより互いに強くなるというモチベーションへと変化させてしまう。日本人のサッカーをする少年には、「自分がプロになる。」というより、「チームで全国大会を目指す。」という考えの人が多い。部員数の多い名門チームやJのようなトップがあるチームには自分がという精神が選手にはあるかもしれないが、それらのチームは、名門であるがゆえ結果が求められ、自由はきかない。つまりこれらの要素から、日本の育成システムでは、チームメートにライバル視をもって、蹴落としたり、削ったりしなくなってしまうのである。むしろ大切にし、お互いに高めようとする。このような経緯を経たユースの選手がやがてプロになり、代表へとなる。

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しかし、そこには球際の強さや一瞬の勝負強さはない。日本人はそのように育成されてきたが、Jではそこそこ活躍できる。でも海外では主役にはなれない。ベルギー時代のコーチは、よく「Intensity」と叫んでいた。ユースではあまり戦術の指示はなかった。目の前の相手とどれだけ1対1に勝ったか。どれだけ威圧できたか。が一番評価される。それを実現するためにはどんなテクニックが必要なのか。戦術が必要になるのか。ということであると考える。

今の日本のユース育成は、テクニック先行、戦術先行になっている。個の力とは、テクニックが優れているかじゃない。いかに目の前を倒せるか。これだけなのだ。

そこを気づいている指導者や選手は増えてきているが、まだまだという印象は拭えない。もしも、上記に述べたことを重要視する指導者や選手がマジョリティとなった時、日本サッカーはまた一歩進化するかもしれない。

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Shunsuke Mori
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Joyz Inc. Product Sales Manager/ Sophia Univ./givery Inc. Web Marketing and Sales/Rarejob CS&English counselor/EDUCA co-founder