日本の高校生に見るICT教育の可能性

Shunsuke Mori
chunkeke-nikki
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6 min readJun 14, 2016

今回は、大東文化第一高等学校で生徒約100人に日本の生徒に対して初めて「スマホ×学び」を試みた。

どのように活用したのかというと、「Mentimeter」というサービスを活用し、質問に対して、生徒がスマホを用いて反応するという仕組みである。質問の回答パターンは、自由回答やYe/No回答など多様なパターンがある。非常に面白いサービスだった。

この仕組みを活用して、授業を行った。

結論としては、やはりICT教育への期待は感じられた。理由は以下の通り。

  • 生徒の参加率が高い
  • 純粋な意見を言える環境

< 生徒への参加率が高い >

これは言うまでもなかった。質問に対する生徒の参加率は常に8割超えであった。

「これ、わかる人挙手して」のような従来の手法では、1割未満の人が手を挙げて述べる(僕が高校だった時の感覚)のに対し、オンラインを用いた授業スタイルは圧倒的に参加率は高いことが言える。もちろん、従来の教育に対し、オンラインを活用するという”非日常的関心”が生徒にはあったとも言えるが、その分を考慮してもオンライン活用の方が参加率は高くなるだろう。

< 純粋な意見を言える環境 >

現代の若年層(10代~20代前半)はデジタルネイティブの世代と言われ、人と人がリアルに会話をすることよりも、SNSなどを通してのコミュニケーションの方が慣れている傾向にある。そして、今回の授業である程度、確信を持って、オンラインを介した方の意見の表現の方が親しみやすく、意見も、「鋭く」「本心」であるということ。

一般的に授業で発言することの懸念点として、「間違えたら恥ずかしい」「発言することでガリ勉だ、真面目だ、と思われたくない」などといったことがイコール『挙手をしない』、『発言をしない』という流れにつながっているのだが、オンラインを活用し、かつ匿名であれば、自信を持って発言できる。現代を生きる若者は、そんな日常の中を生きている。よって、意見を募った時も本来の授業では聞けないような本質をつく質問なども見られた。

日本のICT活用が遅れている理由

一方でICT活用による懸念点も顕著に授業の中で現れた。そして、この懸念点が日本における教育にICTの活用が本格的にできていない理由が少し垣間見ることができた気がする。実は、オンラインを活用したことによって、授業にふさわしくない発言があった。実際僕はヒヤッとする場面ではあったのだが、それは人間の純粋な行動パターンに基づいているのではないかと分析する。人間は新しい何かを認知し、定着するまで以下のステップを踏む。

  1. 新しい何かを認知する (今回は、Mentimeterの活用)
  2. いろいろ試してみる (面白い発言、際どい発言、間違った発言、真面目な発言)
  3. 飽き (発言しなくなる、際どい発言をしなくなる)
  4. 定着 (使い方を理解し、真面目な発言ばかりになる)
  5. 新しい何かを認知する

人間は上記のような流れで、新しい何かを知るたびに、繰り返し「認知→定着」までを行き来する。今回の授業で、見られた行動として、主に1と2がその範囲にあたった。特に2番「いろいろ試して見る」に関して生徒は行動していた。これは、上で述べた、「純粋な意見を言える環境」であるからこそのデメリットとも言える。実際に僕自身も焦ったりはした。

しかし、冷静に、客観的に分析してみると、当たり前の行動だったのかもしれないとも思えてきた。僕もSkypeを始めて知り、使ってみたときは、友達のアカウント名に変更して、面白い発言や際どい発言をしていた。それでもある一定期間使い続けると、やがて飽きて、本来の使い方をするようになった。おそらくMentimeterをこのまま1週間、1ヶ月と使い続ければ使い方を理解し、真面目な発言が集まってくるだろう。

ただし、今の教育機関が2のフェーズをどれだけ許容するだろうか。日本の学校は総じて規則の厳しい学校が多い。もちろん中等部、高等部は、未成年でセルフマネジメントができない時期であるということも考慮されているからこその現代システムなのであろう。しかしながら、今のシステムを柔軟に現代の生徒目線に適応する必要もあるのではないだろうか。上記に述べたように2点のメリットに関しては、現代(デジタルネイティブ世代の)生徒にとって絶大な影響力をもたらす。もちろん、2が過剰に行き過ぎないように事前にリスクマネジメントと対処をすることが必要で、今回の僕は十分に足りていなかったことは反省に値する。一方で、十分なリスクマネジメントができていれば、ICTの活用は積極的に行ってみるのも良いのではないかと考える。

現に、欧米諸国に比べて、日本のICT活用教育はかなり遅れをとっている。これは情報社会を生きる我々にとって致命的である。教育は長期的なものであるため、短期的にはその差というのは現れるものではない。だが、産業革命から続く、一方的な学びのスタイルはもはや現代流とは言えない。そのスタイルからの脱却、相互的なアクティブな学びが必要である。そのためには、学校として、リスクにも耐えることのできる体力が求められる。

ICTの活用については、未だに賛否両論さまざまな意見の渦中にあるわけである。それを実際に感じることのできた授業であった。そして改めて、「学校」は学校としてのビジョン、生徒からの評価、ご両親からの圧力、など本当に大変な立場にいると思った。それでもそのような状況下で、どうかこれからもより良い学びの場として頑張ってほしいと心から願っている。僕自身もこれからの日本の教育がどのように変わっていくのか、変遷を追いながら、関わっていきたい。

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Shunsuke Mori
chunkeke-nikki

Joyz Inc. Product Sales Manager/ Sophia Univ./givery Inc. Web Marketing and Sales/Rarejob CS&English counselor/EDUCA co-founder