地球の気温は400ヶ月連続で高温記録を更新中。その算出方法をご紹介

データをダウンロードして、手を動かせば実際に検証できる温暖化の様子

ほりまさたけ (Masatake E. Hori)
気候はいま
6 min readMay 18, 2018

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400ヶ月前、つまり33年と4ヶ月前、みなさんはどこにいたでしょうか? そもそも生まれていないというひとも多いかもしれませんね。

400ヶ月前は、1984年の12月。日本は中曽根内閣の最中でしたし、アメリカの大統領はロナルド・レーガン。ロサンゼルスオリンピックが開催された直後で、年としてはマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」、ヴァン・ヘイレンの「JUMP」が人気となり、映画でいうと「アマデウス」や最初の「ターミネーター」が封切られたのも1984年でした。

このようにずいぶん前のことになるわけですが、NOAAの発表によれば、地球が最後に平均以下の気温をマークしてから実にそれだけの年月が経ってしまいました。実に400ヶ月連続で、地球の気温は高温の記録を更新中なのです。

全球気温で考える

このように書くと「え、冷夏の年も厳冬の年もあったじゃないか?」と質問される人がいるのですが、日本が寒くても他の場所は高温であったりといったように、地球の気温は場所によってさまざまに変わります。

そこで、温暖化について語る場合は「全球平均気温」つまり地球全体で平均した値を利用します。

また、この場合の「平均以上の気温」というのは「20世紀の平均気温」以上だったということを意味しています。しかし本当のところ、この通りになるのか気になる人もいると思いますので、実際に調べてみましょう。

まず、NOAAがこの報告につかっているのは、陸上の気温と海上の気温をマージした、NOAA Global Surface Temperature (NOAAGlobalTemp)というデータセットです。こちらは無料でダウンロードして、誰でも利用することが可能です。

このデータは生の気温ではなく、すでに「アノマリー」つまり平均からの偏差のデータになっています。

気候学では説明する必要がないくらいに常識なのでことさらに書かれてはいませんが、1月ならば1月の平年からの差、2月は2月の平年からの差という具合にデータが作られています。データの形式は NetCDFという、データ自身が自分自身のメタデータをもっているフォーマットで提供されています。そこでNetCDFを直接扱うことができるGrADSというアプリケーションで、このデータをひらいてみましょう。

いろいろ書いてありますが、このデータが1880年から始まる、1659ヶ月分のデータであることがわかります。

さて、ここでちょっと問題があるのは、このデータは「20世紀平均」からの偏差ではなく、1970–2000年平均からの差で作られている点です。そこで、これをすこし調整してあげる必要があります。

このデータで1900年1月は253番目、2000年12月は1452番目になっていますので、この数値を利用して1901–2000年について新しい平均値を作成してあげます。偏差のデータで計算していますが、あとで引き算をすれば1970–2000年の平均値は相殺されますので問題ありません)。

さて、これを使って、データ全体の全球平均気温の偏差をグラフにしてみましょう。GrADSというアプリケーションの都合上、緯度・経度をある一点に固定した上で、時間だけを1980年から2018年まで範囲をとって作図してみます。

結果はこのようになります。

0 のところが「20世紀平均」ですので、1984年12月を最後にずっと温暖化傾向が続いているグラフがでてきます。たしかに400ヶ月連続ということになっています。

ちょっと極端すぎない?

ここで、「20世紀平均」に対する偏差という見方はすこし温暖化を強調しすぎでは?という指摘も可能といえば可能です。生の数値は変わりませんので結果も変わらないのですが、もっと近年のデータがふんだんにある時期に対する偏差で図を描きなおしたらどうなるでしょうか。

というわけで、1970–2000年を平年値とした場合で描き直すとこうなります。グラフの形は変わらず、y軸の位置だけが変わりました。

これによると、最後に0度以下になったのは1990年代前半のことで、やはりそれ以来20年以上、地球全体の気温は温暖化傾向が続いているわけです。

グラフの最後の部分が落ちているようにもみえますが、それ以前の部分が高すぎた影響でそう見えてもいるわけで、小さな上下よりも、全体の傾向のほうが重要になります。

よく話をしていると「温暖化って実際のところどうなのですか?」と聞かれることがあります。そしてこのグラフのさまざまな変動にはそれぞれ論文が何本もかけるほどに詳細な話もあるわけです。

しかし、まずは生データを御覧いただき、数字として納得していただければと思ってざくっと作ってみました。

また気が向いたら、詳細な点についてご紹介するとします。

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ほりまさたけ (Masatake E. Hori)
気候はいま

Blogger, Writer, Scientist in Japan. Editor of Lifehacking.jp. Tech, Culture, and Lifehacks in Japan. IT ツール、ガジェット日常を楽しくすることについて書いています。2011年アルファブロガー・アワード受賞