シリアがパリ協定参加を表明して世界中の国が「すべて」揃ったことに
アメリカだけが2020年脱退に向けて交渉中
6月に、ホワイトハウスの美しいローズガーデンでトランプ氏が米国のパリ協定脱退の意思を表明してから約半年。その時点で協定に加盟していなかったニカラグアとシリアが参加して、かたちの上では世界中の国がパリ協定に入ったことになりました。
NYTは反トランプですので表題では「アメリカだけが反対」ということになっていますが、一応2020年までは脱退できなくて交渉中なのですから、まあ現時点では全世界の国が参加しているという表現だって、ありといえばありです。
さて、6月にトランプが脱退表明をしたときにパリ協定に入っていなかったのはニカラグアとシリアだけでしたが、そのニカラグアがパリ協定に反対していたのは「内容が十分ではないから」というのが理由です。
強制力がなく、それぞれの国の自発的な温室効果ガス削減にまかせるというパリ協定の枠組みは膨大な労力と予算を割きながらも結果的には「対策をしている」という幻想だけをいだかせる危険なものだという、きわめてまっとうな主張をしていたのです。
しかし、欠陥はあれども、いまはこの枠組から始める以外に方法がないというわけで、ニカラグアも先月参加を表明していまいした。
そこにシリアです。内戦で荒廃している状態で、どのような計算のもとにパリ協定参加を決めたのか理由は不明ですが、とにかくこれで世界中の国が参加しているという形だけは整ったことになります。
結果として「我が国の経済にとって不利益だ」と脱退を表明しているアメリカだけが浮いた存在になっていて、今後政治的にも圧力は強まるはずです。
共和党はこれからどう気候変動を扱うのか
そのうち、何度かにわけて紹介しようと思っていたのですが、ちょうど先週にはトランプ政権下で初めての気候変動に関する報告書、Climate Science Special Report が発行されており、政権の持っている非科学的なスタンスを強く否定する内容になっています。
この報告書は U.S. Global Change Research Program という13の省庁が参加して作成されているもので、政権によって内容がうすめられるのではないかという懸念もあったわけですが、さすがにそういうこともなく、そのままドカンと出ました。関係各位のみなさま、本当にお疲れ様です。
私が、アメリカ選挙ウォッチャーとして興味をもっているのは、しだいに温暖化の影響が顕著になるにしたがって、伝統的に気候変動に対して懐疑的だったアメリカ共和党がどのようにしてこの問題を受容するつもりなのかという点です。
気候変動に対するアプローチはさまざまにあっていいわけですが、そろそろ「そんなものはない」という否認から、戦略的受容にむけた動きがでてきても良い頃なのではないかと思うわけです。なにせ、アメリカにおいては温暖化の影響を特に受けるのは南部州、共和党の票田なのですから、あと数回の選挙のサイクルの中で何か変化があってもおかしくはありません。
先ほどの報告書に掲載されている2070–2099年の将来予測における降水量の変化をみていると、けっこう夏とか怖いことになっていますね。こういうデータを、それぞれの州の議員がどう受容し、政治的文脈において扱い始めるのか。
おそらく、その兆しは探せばあるのではないかと思うのです。