CfJ Summit 2016 レポート: 2日目

Hal Seki
Code for Japan
Published in
11 min readDec 1, 2016

Code for Japan が行った年次のカンファレンス、Code for Japan Summit 2016 のレポートです。

プレイベントと1日目のレポートはこちらです。

サミット2日目は、Code for America の Monique Baena-Tan さんによるキーノートスピーチから始まりました。

Moniqueさんは Code for Americaで、地域活動の取り組みのユーザー調査を指揮してきました。主に組織的な最優先事項とコミュニティのニーズを明らかにする参加型デザインの調査プロセスの開発をブリゲイドと行ってきました。またCode Across やNational Day of Civic Hackingといった全米中の行動を促す日(national days of action)のプログラムの開発やコーディネーションなど、ブリゲイドのネットワークマネージメント支援も行ってきました。

内容については Naoさんが詳しくレポートしてくれていますので、そちらもご覧ください。

行政と地域コミュニティが協働をするための具体的な方法やヒントが満載のプレゼンテーションでした。

1. 一般的な言葉、その場にいる人が理解のできる言葉を使いましょう
2. 期待値をコントロールしましょう
3. コミュニティの中間で引き合わせましょう

という3つの方法論や、各地のブリゲイド向けの活動のアドバイスもありました。情報発信や内部のコミュニケーションツールとして、

・ 外への情報発信として Meetup, Medium
・ 内部/外部への情報共有の手段として Slack, Loomio
・ 内部での作業の効率化の手段として Google Docs

を活用しているそうです。

最後に締めくくりの言葉として言ってくれた、

You are not alone.
あなたは一人ではありません。

この課題に向き合っているのは我々だけではありません。

行政の中にも市民の中にも行政に限らず様々なバックグラウンドを持った人たちがいて、それぞれ今の政治がうまくいくように取り組んでいます。

それを忘れないでください。

という言葉は、多くの人の心に響いたようです。

コミュニティの土壌づくりのTIPS

セッションが終わった後も、多くの人からたくさんの質問が出ていました。

Monique さんは、サミット期間中、自分のセッション以外にもいろんなところに顔を出して、コミュニケーションを取ってくれる、とても素敵な方でした。ありがとうございます!

その後、さくらインターネットさんがコミュニティへの関わりについてお話いただき、1日目と同じく分科会セッションに入りました。私が参加したセッションからいくつかご紹介します。

公共システムの開発を成功させるには

Code for Japan初のフェローとして2014年から福島県浪江町に勤務し、町民向けアプリの開発をおこなった後、2016年4月からはIT専門官として神戸市に勤務している吉永さんがセッションチェアとなり、同じく浪江町の町民向けアプリ開発プロジェクトに関わった、合同会社インフォラウンジの肥田野さん、千葉市でオープンデータ施策やちばレポの立上げに関わり、Code for Chiba の活動にも積極的に参加している千葉市役所 広報広聴課長の松島さんにお話を伺うセッションでした。

公共システムの開発は、通常の企業が行うものよりも制約がたくさんあります。随意契約が難しく開発企業を好きには選べない問題や、アジャイル開発に向かない契約形態、異動などの影響で役所側とベンダー間の知識の非対称性が大きくなりがちで丸投げになってしまう、など。

吉永さんから、浪江町のシステム開発で実際に体験した話をシェアしてもらいました。

吉永さんからの公共調達に関する提言として、以下の内容を言っていました。

  1. オープンにしよう
    ・オープンソースは必須、真のオープンソースに
  2. 得意な企業に頼む
    ・アプリ開発はその道のプロに。実績重視
    ・基幹系の開発はSIer
  3. 契約
    ・小規模の会社でも受けやすい「準委任契約」。ともにつくる
  4. 開発プロセスを2段階に
    ・プロトタイプを作る→Code for やブリゲイドがカウンターパートになれるとGood!
    ・仕様書を作ったら発注先獲得プロモーション
    ・IT系のネットワークを使って紹介でエントリー

松島さんが言っていた印象的なこととして、

システム調達の面から考えると、役所のフロント部分のシステムはブルーオーシャン。多くのベンダーが入り込んでいる既存部分を攻めるより、シビックテック側は外側の部分を攻める方が良いのでは

役所の内側のシステムを変えていくには、シビックテック側の人が役所の中に入っていく必要がある。CfJの関さんが神戸市のCINOになったり、吉永さんが市の職員になったりという動きがもっと起こると良いのでは

という点がありました。

Code for Japan は、自治体の発注の支援やプロトタイピングのサポートを実施しています。

  • 行政案件に明るい
  • 専門家が揃っている
  • システム受注を前提としない「発注支援」
  • 戦略コンサルよりも安い
  • プロトタイプまで作成
  • 企業の紹介も
  • 職員の育成効果も

ご相談がありましたら、是非 info@code4japan.org までご連絡ください。

セッションのグラレコ

Government x Startup

こちらは私が担当したセッションです。

福岡市、神戸市、大阪市など、スタートアップを支援する自治体が増えてきました。世界的に見ても、市職員がスタートアップとタッグを組んで共に解決に挑むサンフランシスコ市や4,500万ドル規模のスタートアップ支援を発表したホーチミン市など、自治体とスタートアップの結びつきが注目されています。
神戸市でスタートアップ支援を推進する多名部さんや、経済産業省でスタートアップと協働した経験を持つ津脇さんにお話を聞きました。

私からは、サンフランシスコの先進事例として、自治体が提示した地域課題をスタートアップが支援する Startup in Residence プログラムを紹介させてもらいました。

多名部さんは神戸市で500 Startups を始めとするスタートアップ支援施策を推進している人です。神戸市がスタートアップ支援は、市長から「なにかワクワクすることを企画してくれ」という話があったことからスタートしたとのこと。スタートアップが成長するには大きなエコシステムが必要という考えから、神戸市が支援するスタートアップは神戸市になくてもかまわないという姿勢で、神戸市外からも広くスタートアップを集めています。

神戸市の多名部さん

津脇さんは経済産業省のプロジェクトで、スタートアップとアジャイルプロセスのシステム開発を行ったのですが、その時に「発注側と開発側との信頼関係がないとアジャイル開発はちゃんと回らない」という点を強く感じたそうです。プロジェクト開始後、経産省側から「なにがどう進んでいるかわからなくて不安」という意見が出始めた時に、実際に開発現場に足を運んで、バックログの説明やタスクカンバンの作業内容の説明などをしてもらったところ、安心できたしコミュニケーションもうまくできるようになったとのこと。その時の経験を活かし、今進めている地域IoTのプロジェクトでは、企業側に経産省の担当がついて、規制緩和についての取り組みを進めるなど、「ともにつくる」側に回るやりかたを実施しているそうです。Code for Japan のコーポレートフェローシップでは、企業の人材が自治体に派遣されますが、その逆のパターンもあるのだなと勉強になりました。

経産省の津脇さん
プロジェクト支援をしながら規制改革を実施

シビックテックの観点から見ると、「スタートアップ」といっても、ローカルな課題解決を扱うシビックテックスタートアップは成長速度がVCなどが期待するスピードに比べて遅い場合もあります。ローカルな課題を解決したい起業家にとって、大きく成長するよりも持続的にサービスを提供する方が重要な場合があります。また、社会起業家的な取り組みには一般的なVCではない投資元を検討する必要があります。神戸市としては、そういったローカルスタートアップを支援することも検討中とのことでした。津脇さんからの意見として、地域課題を解決するビジネスも、同じソリューションが他の地域で通用する場合があり、海外に目を向けることでスケールする可能性もあるという事例紹介がありました。

お二人と話す中で、行政がスタートアップを育成する取り組みが広がるには、行政側とスタートアップが立場を越えて同じ目的意識を共有し、プロジェクトベースで協働をしていくことが重要なのだなと感じました。とはいえ、「行政と付き合うのは面倒」と敬遠してしまうスタートアップもまだまだ多いと思います。Code for Japan としては、スタートアップとの連携や起業家育成について、政府に色々と提言をしていきたいと考えています。

アンカンファレンス

“アン”カンファレンスとは、 講演内容や発表者が当日まで決まっておらず、来場者が自分の話したい内容を発表する、参加者が全員でつくりあげるカンファレンスです。Code for Japan では、「ともに考え、ともにつくる」というコンセプトで活動していますので、参加者が主体的に話たいことを持ち寄り、皆で話し合いを行うアンカンファレンスを重要視しています。

アンカンファレンスの模様
アンカンファレンスの模様

Code for Numazu の市川さんのファシリテーションのもと、同じテーマで話し合いたいひとでチームが組まれ、チーム毎に活発な意見がかわされていました。チームごとにレコーダーが付いて、こちらもグラフィカルにレコーディングされていきます。

皆のもやもやが解消されたら、「出航!」ということで、アンカンファレンス終了です。

ここで紹介したものの他にも、「マッピングパーティ大報告会」や「お祭り × シビックテック」といった、各地のブリゲイドが共通テーマについて事例紹介するセッションや、東大が行っている「チャレンジ!!オープンガバナンス」に参加する自治体同士の情報交換会、防災に関するワークショップや、マドレボニータさんが行った「住みたい・生みたい地域サポートを考えるワークショップ」など、様々なセッションが行われていました。

ワークショップについては、次の記事でご紹介します!

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