グラフィックレコーディングを依頼する際に主催者が考えるべきこと

Hal Seki
Code for Japan
Published in
8 min readJun 21, 2017

立ちすくむ国家WSでは、どのようにグラフィックファシリテーションを活用したか

先日レポートを公開した通り、6月13日に「立ちすくむ国家ワークショップ」を開催させていただきました。↓

今回のワークショップには約110名が参加しましたが、終了後のアンケートでは、回答いただいた52名中50名以上に満足いただく結果となりました。

参加者アンケートより

満足度の原因としては様々な要因があるのですが、その中でも、グラフィックレコーディングが寄与した部分が大きかったと感じています。(アンケート内容より一部抜粋)

運営プログラムが良く練られていたこと、記録・モデレーター等がシステマティックにサポートされていた点が秀逸でした。(企業からの参加者)

なかなか交わることのなかった官と民(普段から公共活動やってない人も)が互いを発見し、一緒に議論してる場面を見て、日本の未来に希望が持てた。ワークショップの設計や、グラレコも素晴らしかった。(企業からの参加者)

グラフィックレコーダーに感激。(行政からの参加者)

今回の模様を、RTM(リアルタイムドキュメンテーション)形式でもまとめてくれていますので、こちらをみると全体の流れがわかりやすいかと思います。

Code for Japan でグラフィックレコーディングを最初にイベントに取り入れたのは、2014年の Code for Japan Summit です。複数人のグラフィックレコーダーを集め、200人規模のカンファレンスでグラレコをしたのは、当時の日本では珍しいケースだったと思います。この時にグラフィックレコーディングの素晴らしさを実感し、大きなイベントの時には毎回グラレコをお願いをしています。現グラフィック・レコーダー・ネットワークのメンバーとも、共に試行錯誤をしてきました。

2014年のサミット参加者のツイッターより

今回、グラフィックレコーディング隊を統括した和田さんから、グラレコ隊側から見てどのように場をマネジメントしたのかという記事が上がっています。

私は、「イベント主催者側として、グラレコを活用するときに重視すべきこと」という視点で記事を書いてみました。

事前にしっかり打合せをする

グラレコには見た目の派手さがあり、「うちもあれやりたい」という動機で採用することになりがちですが、実はレコーディングだけが展開されても逆効果になる場合もあります。何のためにグラレコを導入するのかを明確にし、グラフィッカーと打合せをしておく必要があります。

今回は、初対面の人達が複数のテーブルに分かれてワークをする上、時間が短く結果を他のチーム共有するための十分な共有の時間が無いという状況の中、できるだけ各テーブルのワークを生産的なものにし、振り返れるようにするというチャレンジがありました。その点を事前に共有し、どのような形が良いかを相談しながら進めました。

その相談の中で、「レコーディングではなく、ファシリテーションする方向で行きましょう」という提案を貰いました。情報を整理して綺麗に記録するレコーディング作業をするのではなく、多様な参加者の議論を構造化しながら、テーブルの議論をファシリテーションしていく方を重視することが、今回のワーク上で重要な点であるからです。

その他、オフレコについての対応などの細かい点を打合せし、ワーク全体を組み立ててもらいました。上記の和田さんのブログの方にありますが、これを元に、ファシリテーター向けの細かいルールを決めて貰ったりしています。

和田さんのブログから引用

これにより、テーブル毎の議論の質が向上する結果に繋がったと思います。(それでも、テーマ設定とアクションプランが重ならなかったり、メンバー間の情報量の差がありすぎて特定の人の意見に引っ張られたりといったミスマッチはありましたが。)

グラフィックレコーディングとファシリテーショングラフィックは、似て非なるものです。このような提案は、「何のためにグラフィックが必要か」をしっかり伝えておかないと出てきませんし、当日になってから準備しても間に合わない場合もあります。事前の打合せは大事です。

振り返りのための時間を作る

テーブル毎のディスカッションが終わった後、1分間で各ファシリテーターから結果の共有をしてもらいました。14チームものグループが発表していくので、1チーム1分しかありません。しかし、グラフィックを元に発表をすることで、口頭発表に比べ多くの情報が伝わったのではないかと思います。

それでも1分というのはかなり短く、本当であれば、グラレコを見ながら意見交換ができるような自由時間を作りたかったのですが、今回は時間がなかったです。しかし、今後各チームのグラレコをテーマごとにサイトにアップして、自由に意見交換や派生版が作れるようなWebサイトを作ろうと思っています。

グラレコの良いところは、ひと目でどんな話がされたのかがわかるということです。全体像を短時間で把握したり、文字では失われてしまう「会場の熱気」といったものも記録することができます。一方、細かいニュアンスや背景情報は失われてしまうこともあります。

振り返りを行うことで、「ここをもっと補足して欲しい」という話や、「ここは意図が違う」といったことができ、質の向上にも繋がります。

せっかく書いたグラレコをどのように活用するのかという点を、考えておきましょう。

パートナーとして、長く付き合う

グラフィックレコーディングやファシリテーショングラフィックは魔法のツールではありません。一枚の絵でわかりやすく表現できる点や、楽しさ、熱量といったことが伝えられる反面、正確性や専門性に欠けるという点があります。書き手の理解の仕方や前提知識によってアウトプットも変わってきます。独り歩きし易いものだからこそ、注意しなくてはいけない部分もあります。以前グラフィックレコーディングをテーマにしたワークショップを開催した時に、同じ話を大勢でレコーディングしたら、人によって大きな違いが生まれたこともあります↓

そんな状況ですので、オーガナイザーとグラフィッカー、この間の信頼関係というのは重要だと思っています。いつもお願いしているチームだからこそ、お互いがどのような点を重視しているのか、どこまでお願いするのか、参加者に何を持ち帰ってもらいたいのか、といった点をしっかりと議論することができます。

少なくとも、レコーディングをお願いした場合には、イベント終了後、レコーダーとの振り返りを実施することをお勧めします。きっと、次のイベントの時に役に立つ気付きが得られるでしょう。

Code for Japan は幸い、グラフィックレコーダーネットワークという素敵なパートナーを見つけました。ありがたいことです。

今回のレコーダー達。ありがとうございました!

ぜひ、これからグラフィックレコーディングやファシリテーション・グラフィックを試したいという人も、上記のようなことを考えながら、素敵なイベントを企画していただければと思います。

そんなグラフィックを体験したい方は、次回のワークショップへ!

次回の立ちすくむ国家ワークショップでも、グラフィックレコーディングネットワークの皆さんにサポートしてもらうことが決まっています。

もしご興味ある方は、是非ご参加いただければ幸いです!↓

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