スタートアップの7つの成長プロセス #4 ソリューション検証
今回のテーマは『ソリューション検証』です。
前回は『ニーズ検証』の手段としてユーザーインタビューの方法を紹介しましたが、ユーザーインタビューにはバイアスが存在するため、検証としての妥当性はありません。
そのため、『ソリューション検証』のプロセスでは、定量的に「課題・ニーズが存在するか?」「その課題・ニーズを解決する価値を提供できているか?」を検証します。
定量的な検証をするために用いられるのがMVP(MinimunViable Product)と呼ばれる実用最低限の機能を有するプロダクトです。
以下のような図で表現されることがありますが、MVPはプロダクトの一部を提供するのではなく、プロダクトの「価値」を最低限の機能で提供するプロダクトとなります。
たとえば、自動車というプロダクトを開発したい場合、タイヤというパーツから開発するのではなく、移動手段という最低限の「価値」から検証をはじめ、徐々に機能を追加していきます。
MVPの目的は、「課題・ニーズが存在するか?」「その課題・ニーズを解決する価値を提供できているか?」を検証することですが、多くのビジネスアイディアには同様の価値を提供する既存手段が存在するため、既存手段と比較してその価値に優位性があることを証明しなければなりません。
そのために、「繰り返し利用してくれているか?」ということを最も重視します。
なぜならば、繰り返し利用してくれるということは、同様の価値を提供する競合と比べて選ばれている状態にあるからです。
ソリューション検証の精度を高めるために以下の点を注意する必要があります。
1 ターゲットに提供すること
前回の『ニーズ検証』同様にユーザーの属性・価値観によって課題・ニーズの種類や深刻度は異なります。このため、『アイディア策定』のプロセスで定義したターゲットに対して提供することが不可欠です。
30〜50人程度のターゲットユーザーのコミュニティ(FacebookグループやLINEグループ)を作り、MVPを利用してもらい検証〜フィードバックを得るというケースが多く見られます。
2 対価を支払ってもらうこと
競合と比較して選ばれていることを証明するためには、無料ではなく対価を支払ってもらい、前提条件を同様にすることが必要です。
たとえば、ゲームやユーティリティー系のアプリなど「無料だったら使うけど、有料なら使わない」というサービスも多く存在します。あなたのプロダクトが有料のプロダクトである場合は必ず有料でも利用するかということに注意して検証をしてみてください。
それでは、実際にMVPを利用した『ソリューション検証』にはどのようなものがあるのか見てみましょう。
以下が一般的に使用されるMVPの種類となります。
有名な事例としては以下のような事例があります。
Zappos
「ネットで靴が買われるか?」という仮説を検証するため、近所の靴屋に在庫がある靴の写真を掲載したWebサイトを作成、発注が来るたびに靴屋で購入〜配送した。
Airbnb
「ホテルでなく他人の家に泊まるか?」という仮説を検証するために自分の部屋を宿泊予約できるWebサイト作成、検証した。
Food on the Table
「毎日の献立をレコメンドしてもらいたいか?」という仮説を検証するために、サイト作成前に近所のスーパーにいた主婦に声をかけ、毎週1週間分の献立を作成〜印刷して提供した。
Uber
「電話でなくネットで車を呼ぶか?」とうい仮説を検証するためにスマホで車が呼べて、アプリ内決済で現金は不要なプロトタイプを作成、検証した。
Y CombinatorのPaul Grahamは以下のように述べています。
『ニーズ検証』『ソリューション検証』共に地道な検証と改善の繰り返しが続く時間となりますが、スケールしないことをすることが、後々のプロダクトのスケールに大きく影響を与えます。そのため、この検証プロセスを疎かにせず繰り返し利用されるMVPの実現を目指して頂ければと思います。
本シリーズは全7回に分けてスタートアップの成長プロセスを紹介しています。各記事は以下よりご覧ください。
#1 市場選定
短期間で急成長するための市場の条件、選定方法を紹介します。
#2 アイディア策定
ビジネスアイディアを構成する4つの要素とその調査方法を紹介します。
#3 ニーズ検証
ビジネスアイディアという仮説をインタビューを通じて定性検証、ビジネスアイディアを磨き込むプロセスを紹介します。
#4 ソリューション検証
MVPを用いた「課題・ニーズが存在するか?」「その課題・ニーズを解決しているか?」の定量検証のプロセスを紹介します。
#5 プロダクト検証
MVPをプロダクトに落とし込み、愛されるプロダクトへと磨き込むプロセスを紹介します。
#6 ビジネスモデル検証
持続的に利益を生み出し続けるビジネスモデルを構築するプロセスを紹介します。
#7 スケール
愛されるプロダクトと持続的に利益を生むビジネスモデルを構築した後のスケールのための成長戦略・組織設計のプロセスを紹介します。