Kohei Okubo
Code Republic Blog
Published in
8 min readJan 28, 2018

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事例研究1 米国最大の家具特化EC「Wayfair」~画像検索からARまで~

今回は、海外事例研究として、米国最大のホームファッション特化ECサイトWayfairのビジネス・UIを紹介します。

HP:https://www.wayfair.com/

Wayfairの概要

Wayfairは2002年に設立されたホームファッション特化のECサイトです。今では、時価総額82億ドル(約8200億円)に及ぶ大企業となりました。下記参考事例を見てもその巨大さが分かります。

(参考)
ニトリ:2兆円、
大塚家具:140億
LOWYA:140億円 ※日本で上場している家具EC
スティッチフィックス:21億ドル ※昨年上場で注目を集めたファッションEC

設立当初は、ニッチ商材(電気スタンド特化ECや鳥かご特化ECまで)に特化したECサイトを運営し、その数250サイトにも及びました。そして2011年に250ものニッチECを統合する形でホームファッションに関連するものであればなんでも揃うWayfair.comをスタートしました。(商品数は800万商品以上、取引サプライヤーは、約1万、メーカーではなく、ドロップシッピング・FBA等での仕入れ型モデル)
Amazon・Ebayという総合型のビッグプレイヤーがいる中で、Wayfairが取った戦略は非常に面白いと思います。まず、ニッチ商材に特化したECから始めることで、Amazon等との差別化が可能となり、顧客を獲得していきました。ニッチ商材にすることで統合型ECと比較し、UI・UXの設計を顧客にカスタマイズすることができるためです。日本で言うと楽天やamazonではなく、洋服に特化したUX設計をしているzozoで洋服を買う感覚に近いです。ただ、例えば、鳥かご特化のECサイトとしてしまうとECの最大の関心事である”リピート顧客の獲得”・”ついで買い”が困難となります。そこで、スタートしたのが、ニッチECを統合する形で始めたWayfair.comなのです。

売上の推移(決算発表資料)

そして今では、年間売上42億ドル(約4200億円)にも及び、オンライン家具におけるシェアは11.9%に達し、amazonの15.7%のシェアを抜く日も近いかもしれません。その他、Wayfairのビジネスに関して述べたいことは沢山あるのですが、ここでは要点のみご紹介し、詳細は決算説明書に譲りたいと思います。下記のユニットエコノミクス的な考えの他に決算資料にはロジスティクスの説明もあるので必見。

★ ビジネスKPI(下図参照)
1.既存ユーザーによる注文構成比:57%
←家具でこの数値は驚異的。クロスセルがうまくいっている証拠
2.年間顧客単価:$395
3.年間顧客粗利:$79 ※顧客単価-変動費(原価・CSコスト・手数料)
4.広告による獲得単価:$66
←3と4を比較すると獲得すればするほど利益が積み上がる数値。そして1のリピート率を考えるとLTVは更に大きいはず。そのため、現状赤字ではあるものの、広告比率の売上構成比が12%であることを考えると、利益が出るもも時間の問題です。

PLの推移
獲得コスト・既存顧客・顧客単価等の説明

UIの事例紹介

そんな、ビジネス面で好調のWayfairですが、UIも勉強になったので、UI事例紹介として”画像検索機能”、”コーディネート検索機能”、”ARによる3D配置機能”の3つを紹介いたします。

①画像検索機能

Wayfairでは通常のテキスト検索に加え画像検索の機能も提供してます。デザイン的にも検索までの横に設置されており目立つ位置に配置されてます。ボタンを押すと、カメラ撮影もしくは既存の画像を選択することができます。ここでは、写真フォルダにある既存の画像を選択しました。step3で画像検索が実行されます。商品によっては30秒ほどかかりました。その後、step4で類似商品の検索結果が表示されます。ikeaやnitoriの店舗で商品を見ながら類似商品をネットで探すといったニーズ、インスタ等でおしゃれだと思った家具を探したいニーズはあるかと思いますので、今後どのサービスでもデファクトになる機能だと思います。

画像検索に関連するUI

②コーディネート提案機能

Wayfairではコーディネート提案の機能があります。IKEAの店舗のテーマごとのショールームをオンラインにしたような感じです。そして、コーディネートはCGM的に投稿されており、インテリアデザイナーの方などがコーディネート案を作成しているようです。そして、コーディネートのなかに配置されている実際の商品を選択(step3)することも可能です。商品詳細ページ(step4)からARでの簡易配置ボタンを押すことで、実際の机の上に配置することも可能となります(step5)。家具やファッションにおいては、単品商品として販売するというより、”コーディネート売り”といった考えが重要になるので、コーディネート提案機能も今後のデファクト機能となると思います。コーディネートを内製するのではなく、CGMにし、コーディネートのバリエーションを増やす試みをしているのは面白いと思います。

コーディネート提案のUI

③ARによる3D配置機能

WayfairではARによる3D配置機能を提供してます。日本ではRoomCo ARさんが第一人者かと思います。今回はタンス(step2)を実際の自宅に投影してみました(step4)。昨年のARkitのアップデートにより、マーカーなしで3Dオブジェクトのサイズを再現することが可能となりました。(以前はサイズの再現には、物理的に基準となるカードのようなマーカーが必要でした)実際に購入を検討している家具を自宅にARで配置することで、デザイン感、サイズ感を試すことができます。高単価商材である家具はなかなかネットでは売れないと言った傾向がありましたが、このようなAR技術の発展により購入後のシミュレーションが可能となると購買率も確実に向上すると思われます。本機能も、家具ECにおいてはデファクト機能となると思われます。

ARによる家具の配置シミュレーションのUI

以上でWayfair紹介を終わります。前半で紹介したようにビジネスの規模もかなりの勢いで成長しており、各種KPI(獲得コストやリピート率)やロジスティクスへの投資等の全体戦略も順調そうです。そして、顧客に最も近いUIに関しても”画像認識検索”・”ARによる3D配置”・”コーディネート提案”等通常のレコメンドではない体験を顧客に提供することで、amazonにはできない特化型ECならではの価値を提供することができています。日本においては家具・インテリア領域はファッションと同規模のEC市場規模があるので、そのうち家具のZOZOTOWNが誕生する日が来るかもしれません。最後に所感にはなりますが、家具版ZOZO実現のためには、配送料が高騰している背景、物自体が大きいためFBA的なモデルが困難であるという点を考えると、ロジが鍵になるかと思います。

参考文献

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