2017年 米国Eコマース振り返り ~IPO企業・大型資金調達企業まとめ~

Kohei Okubo
Code Republic Blog
Published in
7 min readDec 31, 2017

米国小売企業のIPOトレンド

今回は、12月7日に実施した米国スタートアップ勉強会資料を一部抜粋し紹介します。各種資料・情報発信は https://twitter.com/Koheei_Okubo で実施しているのでご興味あればフォローお願いします。
資料のフルVERはコチラ。(全50ページ)

IPOの件数推移

米国小売企業のIPO歴史を振り返ると 大きく、①リアル店舗→②総合EC→③特化型ECの時代に分けられ、現在は特化型ECのIPOが相次いでいる時期に属している。

IPOした米国EC企業と時価総額

実際IPO銘柄を見ても、日本で話題になったコーディネートAI「StitchFix」の他にも「CarGurus」、「Carvana」といった自動車に特化したEC、「BlueApron」(ミールキット)といったカテゴリ特化の銘柄が並んでいる。ちなみに、日本ではそこまで話題になっていない「Cargurus」、「Carvana」は時価総額ではStitchFixを上回っている。(サービス説明は後述)
特化型ECが台頭している背景には、AmazonやEbayといった品数・価格勝負の”総合型EC”との差別化ために、後発のスタートアップECは、”商材”もしくは”サービス内容”のいずれかで特化する必要があるためである。カテゴリを特化することで、総合ECでは実現できない商材にあったUI・UXをユーザーに提供することが可能となる。またサービス内容を特化(サブスク・AIパーソナライズ等)することで顧客のリテンションを高めることもできる。このような特化型を追求することで総合型ECが提供できないUXを提供している企業がIPOに至っている。

各種ステークホルダーの環境変化

特化型ECが台頭する背景として、上図3つのステークホルダーに於ける環境変化があることも補足しておく。

大型資金調達TOP10

非マーケットプレイス企業の資金調達をまとめたのが上図である。フードデリバリー・即日配送サービスが目立つ。直近、TargetがShipt(即日配送)を、Walmartがparcel(即日配送)を、またamazonがホールフーズを買収したこともあるように、食品マーケットにおける業界再編は今後も続くことが予想され2018年も引き続き楽しみである。それ以外ではD2Cやサブスクリプションといった、最近のトレンドサービスも大型調達を実施している。どれも、30億円以上の調達になるので、調べてみると面白いと思う。

次に、マーケットプレイス型の資金調達をまとめたのが上図である。自動車ECとして上場した2社以外に自動車ECとして2社(vroom、shift)、また、不動産売買MP(マーケットプレイス)として2社が大型調達をしていることからも、従来ECでの購入がためらわれる高単価商材も着実にEC化が進んでいる
その他、着目点としては、letgo、poshmarkというメルカリの競合に当たるフリマアプリが大型調達をしている。(下図参照)それぞれローカル要素・SNS要素を追加することにより、顧客のリテンションを高める仕組みが入っていることが特徴的である。

調達金額のカテゴリ構成比率やBtoBの資金調達top10は資料フルVERを参照。

自動車ECの事例(商材に特化した事例)

新規上場のCarvana,CarGurusと既存の大手ディーラー2社との各種指標の比較表が上図である。新規IPOの2社は販売台数・売上高で圧倒的に既存企業に劣るものの、時価総額では遜色ない。実績がなくても”インターネット化”による未来感が時価総額に反映されているということである。また、上場した2社のビジネスモデルが異なる点も面白い。粗利率(粗利/売上)を見ると、CarVanaと比較し、CarGurusが圧倒的に高いが、これは、CarVanaが”仕入→売る”モデルに対し、CarGurusはマーケットプレイスモデルを採用しているためである。(下記4つの図で説明)また高単価商材ならではの安心感を創出するUI・UXの工夫も見逃せない。(※サービスのUIの補足はフルVER)

Direct to Consumer(サービス内容に特化の事例)

いきなりサマリになるが、「サービス名」・「資金調達額(累計)」・「商材」・「商材の特性」・「D2Cサービス4要素」をまとめたものが上図である。D2Cとは何か?に関しては以前のブログで紹介したので省略するが、D2Cの特徴としては商材に合わせてD2Cの4要素の訴求ポイントが異なってくる。このように、商材の特性に合わせてサービス内容・UXを特化させていくことが重要であり、それにより総合型ECと差別化を図っている。

以下、①~④の特徴的なサービスのUIを記す。

まとめ

ここまで説明してきたように、”商材”・”サービス内容”で特化することで成功している企業が数多く出てきている。特化することの利点は、顧客に対して総合型と比較し、よりカスタマイズ(パーソナライズ)した経験を提供することができ、結果としてリテンション(購入頻度が低い場合は、ユーザビリティーの向上)を高めていくことができるという点にある。顧客を囲い込むことで、総合型ECが得意としている”商品数”・”価格”といった要素以外での勝負に持ち込むことが可能となるのである。今後も、IPO規模にまでグロースする事例が出続けると思われるので引き続きウォッチしていきたい。

参考) 資料のフルVERはコチラ。(全50ページ)
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