30億ドル調達した”PDD”、Social ECのNewStarがAlibabaからシェアを奪えるか?

邱 開洲
Code Republic Blog
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12 min readApr 12, 2018

本日のリリースで中国のECプラットフォーム「Pinduoduo(拼多多)」、Tencent(騰訊)のリードによる新ラウンドで30億米ドルを調達したことがわかりました。

2015年に設立された PDD は、リリースからまもなく中国で最も成長の速い E コマースユニコーンの一つとなり、アプリ上でのべ約3億人のユーザを集めた。2017年には、取扱高が1,000億人民元(約1兆7,000億円)を超えており、この金額はアリババ配下のTaobao(淘宝)が5年前に、JD(京東)が10年前に到達したマイルストーンに匹敵するそうです。
未だにECの総合プラットフォームってチャンスがあるの?何が強いのか?という疑問を持っている方が多いかと思います。この間に社内でECの勝ち筋について議論がありまして、如何に他に買えない商品を入ってもらうか、そしてバーティカル商材に特化したUXUI、ユーザー体験を提供できるか今のEC市場唯一なチャンスだという結論がありましたが、さて最近注目していたこちらのNewStarについて少しご紹介したいと思います。
冒頭に結論を述べておきますが、
社会要因を除く、PDDのKSF(Key Successful Factor)は、
・取り切ていないユーザー層の見極め→お得感、SNS利用、Taobao未利用
・初期ユーザー獲得の新鮮なマーケティング手段→1元で〇〇
・量産の生産ライン改装参加でSupply ChainへのValue-Add→コスト削減
・共同購入の形式で、C2Mモデルの確立→大量注文を確保
・検索体験から開放させるAIレコメンドのアルゴリズム→ショッピング体験
だと考えています。

PDD、SmartPhoneのUI

2015年設立のため、まだ歴史というほどもないですが、一応沿革としてはこんな感じです。

沿革

2015.9 PDDのWechat公式アカウントリリース、2週間フォロワー100万超
2016.1 1月18日一日GMVが1000万元;課金ユーザー1000万超
2016.9 『拼好货』とM&A、ユーザー数が1億、月間GMV10億元、1.1億ドル調達
2016.11 独身の日 一日GMV2億元
2017.1 月間GMV40億元
2017.12 ユーザー数3億超え
2018.1 月間GMV400億元
2018.4 30億米ドルを調達
※1元=約17円

このように爆速成長したPDDは、このように差別化して既存の巨頭であるTaobaoとJDから市場シェアを奪ってきたか、すごい興味深いですね。

一番最初PDDがやっていたのが、TaobaoやJD、Vipなど既存大手のECモールのタイムセールス、激安商品を集め、Wechatの公式アカウントで売っていたことです。

そしてPDDのエンジェル投資家の段氏が、OPPO/vivoという低スペーク携帯メーカーの取締役会長であり、そこでデフォルトアプリとしてPDDを押し、一気に数千万ユーザーをゲットできました。また、2015年に「1元商品宝くじ」を利用してTecent配下のWechat(SNS)から1000万のTrafficを稼ぎ、(当時は「网易一元购」をはじめ、一元払いで一定の確率で高額商品を当たれるサービスがかなりの市場規模があったが、今、違法と判断され、サービス停止。)その後、WechatのBugを通して0.01元のお年玉ゲームのバズりで、1億ユーザーのフォロワーが集められていました。

こういった運に頼るような成長をした後、PDDがお得感を提供するECにのポジションニングを確立でき、家族、友人にシェアして共同購買で激安商品を購入できるサービスに移り、今現在のビジネスモデルに至りました。

この推移から抽出する成功要因は、4つほどあります。

1.激安値段の実現

単純に利益を削って安くするわけではません。(なめてはいけないのでw)
・製造業において、商材によっては商品を大量生産による生産ラインの変更で、大幅にコスト削減ができます。
・商材によっては、差別化が難しく、量産しないといけないのに、売り切るチャネルが見つからない。
・例えば、PDDが改善に参画した中国某ティッシュ製造の大手工場の訪問レポートによると、当ティッシュの製造コストが 0.91元/パッケージを実現し、市場平均よりは極めて低いです。一方、物流コストが0.125元/パッケージであるのに対し、28パッケージの商品がPDDでの販売価額は29.9元、つまり、28パッケージの商品が一取引で0.9元の利益しかありません。そのかわりに、2016年11月PDDに入った時点から今までの取引量が約1000万近くに至り、リピート率が3割、当工場の4割の売上を占めているそうです。

このような商品が世の中に沢山あり、Groupon形式(若干異なる)で人数が集まったら中間レイアをなくし、まとめて直接メーカーに大量注文すると、安くても成立します。いわゆるC2Mモデル (customer to manufacturing)で、お得感を追求するユーザーを商品を売り切れないマーカーさんにコネクトし、中小企業の値下げリスクを避けると同時に、ユーザーシェアによる低コストの集客ができました。

2. ソーシャルを活用した打ち手

前述の通り、PDDは、シェアして一緒に安く購買というコンセプトで、Wechatを通して初期のユーザー獲得を実現でき、さらにWechat内の決済、公式アカウント、または最近のキーワードであるMini Programの仕組みを借り、十分にSNSからの自社にTraffic流入を導きました。

3.商品の分段階化「会社背景」

中国の経済力向上により、商品水準がアップデートしているよとよく耳に入りますが、実は、昇級ととまに、分段階化を進行しています。要するに、人間は多面的でり、なんでも高級なもの、サービスを求めているばかりでなく、特に生活消耗品の領域において、(日本のアスクル系)、商品自体の差別化が明確でなく、ユーザーは、ブランドや高級を追求せず、コスパを求めています。同じトレンドに合うのは、Xiaomiでも同様。

4.TaobaoとJDのユーザー層Gap

大都市の方に注目し過ぎた今は、無視された他半数の人口を占めた中小都市、農村部のユーザーがお得感を追求している傾向があります。そこでPDDは独自のポジションニングでTaobaoが取れていないユーザーを狙い出しました。PDDとTaobaoは両方ともB2CのECモルであり、モールに入るハードルが低く、値段が市場価額より低いのが共通の特徴ではある故に、両者のユーザー層が一部かぶっています。ただし、TaobaoのMAUは4-5億、wechatのMAUは9-10億、そのGapである5億ユーザーはPDDが狙う対象です。

上からTaobao、JD、PDDのMAU推移

ここまでご覧になった方は、PDDのKSFがTecent(Wechatの支援)と激安だと思うかもしれないですが、ちょっと待ってください!

実は、PDDはTecentによって封鎖された回数が数え切れず、Tecentの従業員を採用するにはTecentの承認を得る必要な契約までもさせられたと。 Wechatの管理規則がかなり厳しくしっかりと運営されていますが、お年玉戦争などでBugを利用するチャンスを探すために、早期は結構Tecentの従業員を取っていたことがあるらしく、それで関係構築が非常に微妙でした。
また、株主だからこそ、PDDの商品が詐欺、偽物という噂がWechat内に流れている際には、Wechatからの協力も得られず、逆にtaobaoの噂の場合は、器があるように見えるため、積極的に協力していることがあります。そういった意味では、Tecentの支援をもとに成長したとは言えないです。

また、PPDのCEOからは、ECのKPIはGMVではないとのことです。

Traffic×CVR=GMV
という考え方はTecentが今までECの失敗要因だと。

Tecentが中国最大なTrafficを持ち、この理論で簡単に成立するようであれば、
Taobaoは一位の王座から降りたはずです。
Groupon形式(シェアして共同購入)は、PDDが立上げた後に、JDVIPMOGUJIEも類似形式を試したことがあり、彼らにとっては、この形式は、GMVの増加ツールに過ぎません。
ただし、PDDはAudienceの考え方です。
Groupon形式を通してユーザーを理解し、人工によって商品をレコメンドし、そして、将来は、AIで商品をレコメンドすることを目指します。(ここで思い出したのが、Criteoのレコメンド広告、Amazonのレコメンドエンジンだが)

今までのECサイトももちろんレコメンドがありますが、PDDには、ほとんどTaobao、アマゾンのような検索体験を提供しておらず、ショッピングカードも設置していない。だからこそ、ユーザーの興味感心をより読み取れます。今は商品をレコメンドしますが、将来はサービスもレコメンドすることもできます。(Toutiaoのニュースフィードを商品フィードを入れ替え、テキストから動画の流れと同じ考え方)
そのため、同じくお得感を演出したいGroupon形式のECですが、スタート時の発想が異なり、ヘクトルが異なるため、大きく成長した後の形も異なります。

今後の成長戦略

PDDの最終的な価値は、SupplyChainの上流にAddValueし、量産によってコスパの高いC2Mモデルの実現です。そのため、SupplyChainへの強化を行い、2CのKPIはGMVではなく、リピート率と継続率を高めるのが肝心です。同時に、不祥事の回避や、上記のKPI達成するために、AIレコメンドに人工関与の管理を厳しく行い、近い将来にアルゴリズムにすべて任せる方針です。
※広告を継続的に打ちますが、獲得目的ではなく、激安だけど、詐欺ではないことをエンドユーザーに伝えたいだけです。

中国のEC市場動向について

王者のアリババについては多く語る必要がなく、これからTecent配下のJDとPDDがTabaoと戦いはオフラインにシフトしていきます。

Alibaba VS Tecentのコーマス勢力図

本記事に関連するSNSのEC動向は、一番世界から注目すべく、少し共有しておきます。

モバイルECの成長推移

青い棒グラフは、EC市場、赤い某ブラフはモバイルEC市場です。モバイルでの取引が既にEC市場の70%近くに来ています。

そして、10億ユーザーを抱えているWechatに注目してみます。

Mini Programは、Wechatの中に簡易に作れるDeveloperプログラム、Wechatの第三者ベンダーのように自社商品を作れるものです。(https://mp.weixin.qq.com/cgi-bin/wx

特徴:Wechat内に共有しやすく、立上げが外部に行かないため遥かに早い。

・2017年リリースしてアクティブユーザーが1.7億、2018年末まで5億に成長する見込み。
・小売、EC、生活サービス、政府民生を中心としたMini Programがメインであり、95%のECプラットフォームがMini Programに接続済み。

Mini Program ECの全体客単価

Mini Program ECの全体客単価は、50元が一番多く、つまりお試ししてみたい程度で50元まで許容しやすいです。まだまで伸びしろがありますね

長くなってまとめに入ります。

網羅的ではないが、社会要因を除く、
PDDのKSF(Key Successful Factor)は、
・取り切ていないユーザー層の見極め→お得感、SNS利用、Taobao未利用
・初期ユーザー獲得の新鮮なマーケティング手段→1元で〇〇
・量産の生産ライン改装参加でSupply ChainへのValue-Add→コスト削減
・共同購入の形式で、C2Mモデルの確立→大量注文を確保
・検索体験から開放させるAIレコメンドのアルゴリズム→ショッピング体験
だと考えています。

寡占市場に本格参入する自体は、勇気が必要であり、特に激しい市場で、大手に囲い込まれるのがほとんどです。幸いなことに、日本では大手の動きは比較的に遅いので、スタートアップはまだ大いにチャンスがあります。

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2018年7月3日追加編集

Social型ECのPinDuoDuoが4月に大型調達し、更にアリババと対抗するため、IPOで$15BにValuation Jump。AlibabaのTaobaoモデルとの違いについて図解。

単に値段訴求でSNSによる分裂だけではなく、Trafficに従属する力関係を壊してバリューチェーンを変えたECモデルです

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邱 開洲
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Venture Capitalist#Born in China # YJ Capital#Yahoo! JAPAN# Waseda Uni. #UC Davis# Focus on Media/Marketing/AdTech etc.