Takehisa Sibata
Commons OS
Published in
7 min readFeb 28, 2019

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なぜ、ギフテッドワークス ではブロックチェーン を教えるのか?ーCommonsの担い手としての発達障害者

https://www.kirin.co.jp/csv/food-life/think/serialization/vol22.html

https://alis.to/baba/articles/KeOVegxAyDdX

Commons OSチームの私も含め、何人かは発達障害者の就労支援施設であるギフテッドワークス のお手伝いをしている。そして、ギフテッドワークス の経営者でありCommons inc.の代表でもある河崎が、「偏りを活かし合える社会づくり」をモットーのもとに、発達障害者をただの受動的な福祉の担い手としえではなく、新しい社会をつくる参加者として考え、自発的に動く社会として「ギフテッドワークス 」を設計した。ただの福祉施設ではなく、社会を創る、そういう観点である。そして、河崎が「新しい社会をつくる」技術として、ブロックチェーン を捉え、天神ではブロックチェーンも教えている。ブロックチェーン を教える背景には、「新しい社会をつくる担い手」になってもらいたい、そうした願いがある。

1.ブロックチェーン で改善したい福祉の現場

私は、何度か福祉施設の経営者の方と交流を重ねた。発達障害の就労支援をしている方、自閉症の就労移行支援をしている方から以下のことを聞いた。

・自閉症の方がつくるパンはとても美味しいです。彼らは、誤魔化すことができない。だからこそ、非常に質が高い。けれども、その魅力を理解して発信することがなかなかできないのです。どうしても「福祉の人が作ったもの」という視点を持たれてしまう。

・発達障害の方が集まると中には非常に優秀な方がいる。けれども、なぜ、福祉施設に来るか。それは、普通の働き方ができないから。昼夜逆転するなど安定した働き方ができない。けれども、プロのデザイナーそのものの3DCGのモデリングができるケースもあるんです。

そんな訴えを聞いた。パンの話は、私の家族が甘酒や麹作りをしていたから、分かるのだが、秒単位で常に正確なたタイミングでつくることが美味しい食材の秘訣、だから非常に共感できる。

とは言え、中には、「無理して働かなくても」という意見もあるかもしれない。私はこの話には、以下の話で違うかな、と考えている。

川崎市にある日本理化学工業が世界でもほぼ初めて、知的障害者を雇いチョークを製造した。知的障害者が労働者の大半を占める。今から60年前、昭和34年にたまたま養護学校から頼まれ、2名の知的障害者を受け入れたことがきっかけである。2名は幸せそうに働いていた。そして、職場実習が終わった後、幸せそうに一生懸命働く姿をみて採用した。経営者の方がなぜ、施設にいる方が楽なのに、彼ら・彼女らは働くことを選ぶのか?

その問いを禅僧に聞くと、

「幸福とは「人に役立ち、人に必要とされること』」

であった。確かに、このことは、施設では得られず、働くことで得られる。

このことに私も非常に同意している。人間は、社会的な生き物である限り、「人に役立ち、人に必要とされること」が重要で、そのことをいかに経験できるか、そういう点を大切にしたい。

無論、フルタイムで働くことや感覚過敏で通常のオフィスで働くことができない、など色々既存の働き方には障害がある。また、多く案件をこなすことは難しいかもしれない。

けれども、そうした人々が、しっかり働ける、働くことを通じて社会の中で「役立っている」「ありがとう」と言われる経験ができないか、と私は考えている。

その一つのツールとして、ブロックチェーン があるのでは?と考えている。

マイクロペイメント(少額支払い)や業務の分割といったことが可能となる。

例えば、睡眠や精神が不安定な精神障害者の方も、細かく業務を分割していくことで、記事の執筆やデザインの業務にも携わることができる。体調や睡眠が不安定で少ない件数しかできないならば、一枚、二枚のイラストからこなしていくことができる。

国は、障害者福祉施設から一定数、生産物を購入することが義務付けられており、企業もCSRの観点からも購入している。ただし、施設からの購入を大口でする方式では、当然、その枠外となる個別性の強い障害、例えば、音楽が得意、絵を描くことが得意、絶対味覚を持っている、嗅覚が異様に鋭い、といったものには対応が厳しい。発達障害は、凹凸があり、その凹凸が人によって極端に違う障害である。

そこで、マッチングし、小さい案件から支払うブロックチェーンのプラットフォームが出番となるであろう。個別性の強い案件も、マッチングするプラットフォーム、少額支払いするブロックチェーンによるプラットフォームがあれば、対応することができる。例えば、1件の動画を見せて異音を確認してほしい、料金は数千円というような案件でも、対応ができる。

また、昼夜逆転している障害、好きな時間に寝起きするタイプの障害、の場合は、柔軟に納期を対応しながら、小さい案件から仕事に参加していく必要がある。このタイプの障害が、大変なのは、福祉事業所の利用の対象外である。福祉施設の担当者と意見交換でも出たが、いくら能力があっても既存の働き方からも、福祉施設の枠組みの働き方からも除外されてしまう。在宅就労などの柔軟な働き方が要求される。また、安定した納期という観点でも既存の労働が難しい点もある。在宅で働きながら、納期を調整しやすい案件から働いていくということができる。

また、私たちが目指す福祉社会では、障害者にとって「温情」で仕事をつくりだすのではなく、「役に立ってほしい」立場でつくる。そしてそれを可能とする枠組みがブロックチェーンだ、と考えている。

2.ギフテッドワークス ではなぜブロックチェーンを教えるのか?

ギフテッドワークス 天神では、ブロックチェーンを教えている。ブロックチェーンを教える福祉施設は、恐らく日本では、天神ぐらいであろう。無論、ウェブ制作や他のプログラミングを教えている。

障害者がブロックチェーンを学ぶ、この点については福祉施設の経営者も、障害者雇用の担当者にとっても想定の範囲外である。この点は、非常に驚かれる。

なぜ、わざわざ、ブロックチェーンを教えるのか?それは、

「発達障害者はただ福祉を受ける担い手ではない。生きやすい社会をつくる担い手になってほしい」

という願いが込められれている。障害者が福祉の受給者として意識しだすと、中には、傷ついてしまう方、落ち込んでしまう方がいる。そういう風にネガティブに考えだすと、過去に持っていた素晴らしいキャリア、能力すら受容することができなくなってしまう。

むしろ「生きやすい社会をつくっていこう」と意識することによって、自分たちが生きにくいのは社会でマイノリティだからだ、という視点を持ち、主体的に未来を切り開くような意識を持つことができる。そうして、自尊心を回復することができる方もいる。

ブロックチェーンは、Commonsの記事でも書いてあるように、アフリカの貧困を解決したり、発展途上国の金融の問題を解決したり、とより「いい感じの社会」に世界をつくり変えていく起爆剤となるテクノロジーである。だからこそ、ブロックチェーンを学びながら、「新しい社会」をつくっていく、そうした可能性まで感じて欲しい、と願っている。

おわりにー私たちが創る社会

ブロックチェーンを通じて、私たちが創る社会とはより「いい感じの社会」である。障害者が社会で大事にされる基盤をつくりながら、全ての人間が尊厳を持って社会に参加できる社会をつくっていきたいと考えている。あらゆる人々が「はたらく」を通じて、社会に貢献できる、貢献の方法も無数にある、そんな社会をつくっていきたいと思う。

そして、その新しい社会=Commonsを創る担い手として発達障害者を私たちは位置付けている。

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