Takehisa Sibata
Commons OS
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6 min readMar 18, 2019

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ノルウェーの無政府主義者がブロックチェーンで政府をつくるー世界で広がる!?富裕層が独立する動き

1ノルウェーの無政府主義者がブロックチェーンによる独立都市をつくる

ノルウェー南部の都市Liberstadは、独自の仮想通貨であるCoinCityを立ち上げた。1月18日にはスイスのp2pb2bに上場した。Liberstadは2015年に新設され、Liberstad Drift協会が運営する無政府主義地区だ。2015年に協会が発足し、、2017年1月からノルウェー政府に干渉されることなく、行政や事務を自ら行なっている。世界27カ国100人の投資家が賛同した。土地は20平方メートルから100平方メートルあたり2万5千ドルから10万ドルで売り出されている。

地区内の決済は、City Coinで行われており、法定通貨の利用は禁止されている。居住者は専用ウォレットアプリであるCITY Hubを利用し、日常での支払いの他に、個人情報の管理、投票、登記、保険、車両登録など様々な公共サービスを受けることが可能であるとのことである。

Liberstadとは、2015年にノルウェーで無政府主義者がプライベートシティという形で、ノルウェー政府から干渉されることなく運営されている。「無政府主義と政府による不可侵の原則」を掲げている。ノルウェーは、北欧型の大きな政府という考え方で政府が運営されており、国民の税負担率は55%、消費税は25%と非常に税金が高い。そうした考え方に対して、反発した独立した経緯がある。

Liberstadの広報担当は以下のように語る。

「高い住宅ローンや家賃を借りずに、また直接的および間接的な税金なしで生活することができます。より簡単に生活することができ、高い生活費なしで生活できる都市になる」

とのことである。大変、自然が豊かな土地である。

LIberstadは非常に自然が豊かな土地である。12万平方メートルの敷地内には、湖がいくつかあり、森、キャンプ場がある。

既存の通貨を全面禁止し、独自のブロックチェーンによる通貨を用いている。Liberstadの貨幣全面禁止をイメージした画像である。

世界33カ国120人を超える人々がLiberstadの土地を購入し、待機者リストは500人に上るという。土地は購入したとしても移住する義務も、所定の期間内に住宅を建てる義務もないとのこと。キャンプ場やコンサート会場の整備が進んでおり、Liberstadに訪問してキャンプやコンサートに参加することを推奨している。

販売している住居と賃貸用・短期滞在用の住居があるとのこと。土地のを買うためのフォームもあるため購入されてみてはいかがだろうか?以下がLiberstadに建設されている、もしくは売りに出されている物件である。

2, 都市ごと独立する動き

Liberstadは、政府も高い税金も規制も嫌がり、土地ごと独立してしまい、ついにはブロックチェーンによる政府や仮想通貨まで発行した稀有な地域。実は、こうしたケースはアメリカなどで増えつつある。

アメリカでは、富裕層が集まって独自の都市をつくってしまうケースが頻発している。ジョージア州サンディスプリング市。富裕層が住む地域が、住民投票でフルトン郡から独立してしまった。公務員は、消防と警察のみで、市の職員は9人のみで、全てを民間委託にした。政府による所得の分配をお金を盗む行為だと考える住民が多い。裁判官は臨時雇用で雇う。公共サービスへの満足度は非常に高い。

一方でフルトン郡の方は、税収が激減し、図書館の運営時間は短縮され、ごみ収集車のくる回数が激減した。公立病院の質も低下している。フロリダ、カリフォルニア、テキサスなどでもサンタプリング市の手法を見習って富裕層の住む地区が独立する動きが進行している。

アメリカでは、元来、人種差別が深刻であり、人種と平均所得の分布が近いことがある。白人の富裕層の多い郊外の住宅地、黒人の多い家賃の低い住宅地、ヒスパニックの多い黒人が多い地区よりは家賃が高いが比較的家賃が低い住宅地、白人労働者の多い住宅地というように人種・所得によって住宅地が別れている、ということが挙げられている。

サンディスプリング市は、黒人が多く人種差別が深刻な南部ジョージア州であることも興味深い。長らく、「分離すれども平等」という考え方の元、学校、公共施設などで人種隔離政策が行われていた。1964年公民権法で連邦レベルの法律で禁止されるまで、続いていた。ただし、所得ごとに住宅地が別れており、事実上、人種ごとに住む地域が別れているに近い状況は今日まで続いている。かつて、フリードマンが「資本主義と自由」という著作で、低所得者向けの公営住宅をつくることに反対し、むしろ低所得者向けの家賃支援を増やすべきだ、と言った背景には、そうした公営住宅をつくると低所得者のスラム・人種ごとのゲットーができてしまう、という事情がある。

ジョージア州やアラバマ州などの南部で、トルーマン政権で国民皆保険の導入に反対する動きが強かったのは、連邦法で医療保険を導入した場合、公営病院では人種ごとにサービスによる差をつけてはならない(「分離すれども平等」とは言いながらも事実上、サービスには格差があった)、人種統合を迫られることを危惧した。テネシー川流域開発公社のような連邦による公共事業や補助金には賛同するが、連邦レベルでの福祉サービスに反対する原因に、人種統合が迫られること、白人が支払った税金が黒人のサービスに使われることへの反発がある、とされる。

富裕層の独立する動きが、なぜ、最初ジョージア州のサンディスプリングス市で始まったかを考えると、人種隔離の長い歴史が影を落としていると考えることもできる。ただ、現代では、大っぴらに人種隔離に賛同することは厳しいため、所得による分離、富裕層の独立、と考えることができる。また、そもそもアフリカから連れてこられた黒人とヨーロッパ出身の白人では、国民統合ができていない、ということも考えられる。

おわりに

世界各地で、富裕層たちが税金や規制に反発して事実上、独立する動きが発生している。北欧型の福祉社会、ややもすると社会主義とも評されるノルウェーで、税金や規制を嫌がって独立した市が誕生したのは非常に興味深い。

ブロックチェーン技術を活用した独立する動きが今後続いてくるか注視していきたい。

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