[CC Lab21秋]今学期の活動と将来

※本投稿はComputational Creativity Labの最終課題を兼ねています

はじめに

今学期も先学期と同様x-music-generationチームでの制作を行うこととなった。先学期の反省だった先輩方におんぶにだっこから抜け出すことは正直言って全然できなかった。サラウンドの部分で少し実装を行ったが、結局最終的な仕上げから論文までほとんど先輩方にまかせっきりだったといえるだろう。一方Music sweeperについても、やってみたでも発表したとおり、目に見えるものとして進度を発表することができず、これ以上の改良は技術力的にも、時間的にも、私のMusic sweeperに対する思い以上に必要となってしまうのが現状となった。今学期は、今までにないくらい研究会に身が入らなかった学期だといえるだろう。ただ、今学期は就活(まだ終わっていないが)をがっつりおこない、そこで自分の過去と将来を見つめなおし、自分の作りたいものとは何か、自分が何をしたいのか、そういったものづくりに対する自分の認識を見つめなおし、一部の面接官からのフィードバックを得る機会をもらった。これは、今後の卒プロを含め、残りあと1年となる大学生活における行動の指針となると考えている。本投稿では、今学期のグループ研究とMusic sweeperについて触れたのちに、就活で得た学びに触れながら卒プロで何をしていきたいか書いていこうと思う。

グループ研究について

今学期はNIMEへの提出に向けて、前学期のとりあえず形にしてみたものから、より面白い、よりクリエイティブな音楽表現を目指して開発を行っていった。そのための施策として、周囲の色情報から共感覚をもとに音を決めるものや、サラウンド、展示を通して見えてきた様々な課題の解決を行った。今学期このプロジェクトで触れたものとしては、サラウンドの基礎の部分だろう。今まではサラウンドの実装のためにGoogleが提供しているResonance audioの使用などを考えていたが、これよりもAbletonで使いやすく、高性能なOculus spatializerを使用することにした。Oculus Spatializerは無料で、VSTプラグインとして使用が可能であり、x,y,zを入力することで簡単にサラウンドにすることができる非常に有用なソフトだ。Oculus Spatializerではユーザーの座標が0,0,0の時の音源(本研究ではボールの衝突の位置)の座標を入力することでサラウンド化することができる。しかし、OSCからの情報は起動時のユーザーの位置を0,0,0としたときの、現在のユーザーの位置とボールの衝突位置が送られてくる。それをcartopolなどを利用し修正する全体の一連の流れの基礎部分のプログラムをMAXを用いて行った。

また、論文へのサーベイなどを行ったが、やはり論文の執筆、サラウンドの応用と既存システムへの組み込みは先輩方がほとんど行っているので、あまりコミットできなかったといえるだろう。

Music sweeperについて

前学期は、基礎システムが完成したため受けたフィードバックを受けて新たなゲームシステムの追加、UIの変更を行った。理想としては、フラッグを置いたときに音が出る、音が鳴っている列の色を変更すること、フラッグが置いてある順番に音が鳴るようにする、この3点の修正を行いたかったが、最初の1つと2つ目が中途半端に終わってしまった。この大きな理由としては、まず私自身のプログラミングスキルの問題、JSでゲームを作る限界があげられるだろう。JSで1からゲームをくみ上げるにはケアしなくてはならないユーザーの操作パターンが多いためここまでの規模のゲームとなると少し厳しかったといえる。また、音楽生成AIの出力をゲームとするところに面白さがあるゲームだったわけだが、その音楽生成AIの出力の制御が難しく、面白さの根幹が揺らいでいたのもよくなかった点といえるだろう。

卒プロへ

こういった、いろいろと上手くいかない中、就活を通して自分がやりたいこと、なりたいこと、今までやってきたことなどを考えた時にMusic sweeperへの限界を感じ始めた。Music sweeperについてまとめたり、紹介する中でこのゲームが本当に面白いのか、制作した作品として紹介するに値するものなのか不安になっていった。そんな中、Music sweeperの開発も一旦行き詰まり私の気持ちが追い付かなくなっていった。しかし、就活を通してゲームを作りたいという気持ちは間違いなくあるということがわかった。なりたいのはプランナーであり、プログラムは正直やりたくないのに、プログラムの方が企画する時間よりもかかるのに、それでもゲームを作りたい、徳井研で卒プロでゲームを作りたいという気持ちの確認ができた。なので、卒プロではAIをゲームの面白さの中心においたゲームの制作を行っていきたい。Music sweeperの反省も生かし、音楽生成AIという比較的難しいAIを使うよりも、以前特プロで作ったようなお絵描きゲームのように、簡単なAIを用いたゲームでもいいからAIが生み出す面白さというコンセプトに最も重点を置いたものにしていきたい。

卒プロで何をやるかなんとなく決まったところで、現状就活で感じたゲーム業界とAIについて話していきたいと思う。

主に、ゲーム業界におけるAI活用はパブリッシャーの企業とディベロッパーの企業で大きく変わってくるところがある。パブリッシャー企業を中心とする大手ゲーム会社ではそれなりに、AIを用いたゲーム開発を行っているようだ。例えば、スクウェアエニックスではスクウェア・エニックス・AI&アーツ・アルケミーというエンタテインメントAIの研究開発・授業推進のための会社を設立し、本格的な開発を行っていたり、コーエーテクモでは将棋AI「Ponanza」の開発を行っているHEROZとの業務資本提携を結んでいる。開発したゲームとして、スクウェアエニックスではFINAL FANTASY XVにおけるメタAI、キャラクターAI、ナビゲーションAIの3つの人工知能が独立し、協調する分散人工知能の実装を行っている。

http://id.nii.ac.jp/1004/00000517/

コーエーテクモでは信長の野望などのゲームにおいて、家臣が自らの判断で、領地の発展や政策、戦略の提案などを行う。そこには、歴史上の因果関係(血縁関係など)を含んだデータによってよりリアルな提案がなされるようになっている。

信長の野望・新生 | ゲーム | コーエーテクモゲームス (gamecity.ne.jp)

このように、ゲームにリアルさ、没入感を与えるために、よりNPCからプレイヤーに近い動きを行うようにするためにAIを用いている例が多い。

次に、ディベロッパーを中心とした比較的中小企業についてだが、個人的に面接で話を聞いたり、行っている、開発しているものを見て思ったこととして、かなりAIへの開発に見切りをつけているということだろう。AIは確かにゲームを面白くするものであり、可能性は感じるものの、AIの不確定さ、開発の難しさ(金銭的にも)、優先順位的にAIは一旦おいておこうというようなイメージを抱いた。

開発方針に企業の規模で大きな差があるようだが、決して開発を行っている企業だからといってAIの知識がプランナーにまでいきわたっているかはまた別の問題だ。かなりAIの開発を行っている企業であってもすべてのプランナーがAIについて触れる機会があるわけはなく、どうやらかなり少数、場合によってはほぼ0の可能性すらあるようだ。まだまだ、技術的な要素が強くエンジニアの領域であるということのようだ。しかし、AIをゲームに組み込むうえで、AIの知識があることで広がる可能性や、具体的にどのようなAIにするか(難易度を決めるAIであれば、どの程度のプレイスキルに対してどの程度の難易度を提供するか)を決めるのはプランナーの仕事であるべきだといえるだろう。

そこで、よりゲーム業界に広くAIの可能性を理解してもらえるような、AIの面白さをゲームのコンセプトに据えたゲームの開発を卒プロで行っていきたい。

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