[CCLab21秋]機械の意思。精神の所在。

コンセプトムービー

※この記事はComputational Creativity Lab(慶應義塾大学 徳井直生研究室)の2021年度秋学期最終レポートを兼ねています。

目次

  • はじめに
  • 展示会
  • 展示会後の活動
  • 今季の制作
  • 作品コンセプト
  • システム構想
  • おわりに

はじめに

慶應義塾大学環境情報学部三年の山口高幸です。

今学期は、9月の表参道での展示会や、コンテストへの投稿、新たなメンバーとの新作の制作など様々な活動を行いました。

前半では2021年9月に行った展示について、後半では2022年1月末までの2021年度秋学期の制作の記録をこのレポートで書いています。

展示会

2021年9月23〜9月27日に表参道のTIERS GALLERYにて展示会を行いました。

展示会メインビジュアル

2021年春学期に同じ研究室の真鍋くんと制作していた「v-presence」を出展し、多くの来場者の方からの感想をいただきました。

作品の企画から、コンセプト、実装まで関わった作品を学外で展示することが初めてだったのでとてもいい経験になりました。

展示作品

展示会後の活動

展示会にて出展した作品を学生CGコンテストにエントリーしました。

ノミネートには至りませんでしたが、審査員の方々に厳しいコメントを頂き、いい経験になりました。「v-presence」の 展示は終わりましたが、作品のクオリティを上げて様々なコンテストにエントリーしていく予定です。

選考会配信

今季の制作

今学期は先学期からチームのメンバーも増え、新メンバーで新作を制作しました。

チーム内で「機械に意識はあるのか?」という共通の疑問があり、機械に宿る意識の存在を探る最初のステップとして、機械に意思があるように見える作品を制作することになりました。

なぜそのテーマとなったのかというと、ロボットの存在です。ペッパーくんをはじめ様々なロボットが我々の生活に入り込んでくるようになりました。

その中でも、iRobot社が販売しているお掃除ロボットのルンバが有名ではないでしょうか?

ルンバはアルゴリズムに従って、稼働するロボットですが、ルンバを使う人間は、愚直に壁にぶつかりながら掃除をするルンバに”可愛い”などというペットと同じような感覚になるユーザーは少なくありません。

内部のアルゴリズムを見ると感情などあるはずもないお掃除ロボットに対して、”可愛い”などという感情の芽生える状況は、機会に意思があるように見える状況ではないか?と議論になり、ルンバを使っての作品制作が始まりました。

ルンバを使った制作

作品コンセプト

ルンバはもともと地雷を除去するために地雷原を探索するFetchというロボットのアルゴリズムが用いられている。
地雷原を隈なく移動し、地雷を踏むと爆発し機械としての役割を終える。
そのFetchの地雷探索アルゴリズムを精神と捉えると、ルンバは掃除機という肉体にアルゴリズムという精神がインストールされ、地雷がない部屋で地雷を探索し続ける。
稼働しているルンバは、我々から見たら部屋を掃除しているだけだが、ルンバの世界では戦場で地雷を探している。
地雷のない部屋で、地雷を探し彷徨い続けるルンバは何を思い、何が見えているのだろうか。

ルンバについて調べていくと、ルンバの元になったFetchというロボットのアルゴリズムの存在を知りました。地雷原を隈なく探索し、機械の身体で地雷を踏むことで、身体もろとも地雷を除去することを目的とされた精神(アルゴリズム)が、現在は掃除機という身体にインストールされ、部屋という戦場とはかけ離れたフィールドで稼働されるようになりました。

人間からは部屋を掃除しているようにしか見えないルンバですが、ルンバの世界では危険な地雷を除去するという指名を全うするために、地雷がない部屋で今日も、地雷を探すために彷徨い続けています。そのルンバの状況に私は切なさを感じ作品にしようと考えました。

システム構想

システムイメージ

iRobot社が発表しているRoomba Open Interfaceというルンバの内部アルゴリズムを変更できるドキュメントが発表されており、それを用いることでルンバの内部の信号(精神の情報)をシリアル通信で取得することができます。

ルンバからシリアル通信で取得したルンバの速度やモーターの回転数などを、MacにUDP通信にて送信し、その数値をUnityにて制作した仮想空間のオブジェクトに反映することで、ルンバの精神世界で見えている情景をUnityの仮想世界で動画のようにリアルタイム再現しようと試みています。

再現集のUnity画面

おわりに

先学期のv-presenceは仮想的な生命の意識と身体を錯覚するようなインスタレーションを制作しましたが、今季の作品はルンバという日常に溶け込んでいるロボットの本来のロボットが見ている世界の情景を垣間見るような作品を制作しています。

近年メタバースというヴァーチャルな世界についての開発や議論が活発になってきました。ルンバは地雷原というフィールドを離れ部屋という場所に活動場所を移しゴミを掃除しています。今後メタバースが発展していくと、我々人間は、現実世界というフィールドから離れ精神は仮想的な世界を活動場所に移し、肉体は現実世界に残り生活をしていくのでしょうか?

今回制作している作品は、「機械に意思は宿るのか?」というテーマを持ちながら、「人間の精神はいつまで現実世界に留まるのか?」というような議論を始め、様々な議論ができるような作品になるよう春休み中に実装を進めていきたいと思います。

またいつか学外で展示ができるような作品にするため、実装だけでなくコンセプトもチームメンバーでより良いものにしていきたいと思います。

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