最終話 皇帝 SC0162–0324
ホムンクルスの製造には無限の魔力炉、元になる者の血肉、高い魔力抵抗を持つ母体の三つを必要とする。そして、死者の書に記された術式によって魂を定着させる事で完成する。
エルフ族の首長の血を受け継ぐ母体と人族最強の血肉から生まれるホムンクルス、魔王の器としてこれ以上ない代物。
そのためメフィストは、ゲオルグになりすまし皇帝の新たな器となるホムンクルスの錬成を始める。
最初の母体はソロネの子を使い、他に人族の高位魔術師の中から数名を選んだ。
皇国は世界樹から遠く母体を魔素で侵食させる事ができないためメフィストは自らの血肉を一つ混ぜる事にした。
皇帝から提供された血肉は全部で十二。一番目の子は皇帝と自身の血肉を半分ずつ使い錬成し隠した。二番目から十二番目の子は皇帝の血肉で錬成し、十三番目の子は残っている血肉で錬成した。
メフィストは七人の母体と十二体の子を皇帝に献上した。エルフの血を受け継ぐ者はその身体的特徴を魔術で封印した。
世代を重ねるため輪廻の儀を行った一番目の子、サンの胎児からは呪いが消えていた。
遂にその時は来た。生まれてくるソロネの血を受け継ぐ子と皇帝のホムンクルスを使いダークエルフを誕生させる。
メフィストはサンの監禁を解く。半分に断たれた魔族の血肉同士が二人を引き合わせるだろう。
舞台を整えるため秘密に近づいた者達を始末し、王位継承権争いに躍起になっている皇子に情報を渡し内乱を生み、皇帝やエルヴィムからダークエルフを守るためソロモンの指環を渡した。
あの時、アルタイルがダークエルフの赤子を殺せなかったのは体に流れる魔族の血がそうさせたのかもしれない。
ソルエストレアの反乱の直後ゲオルグが姿を消し、延命処置を施せなくなった皇帝は次の器であるアルタイルを手に入れるため帝国シャドーに進軍する。
それにより警備が手薄になった皇都にて、第七皇女リゲル率いる皇国親衛隊が皇帝に反逆する。
死闘の末リゲル達は皇帝を倒した。死にゆく皇帝の体は禁忌を侵した代償として半身ほどが失われており金属義体となっていた。
リゲルはシリウスの残した手紙を読み皇族の秘密を知っていた。そして、皇帝に復讐する機会を待っていたのだ。ゲオルグがいなければ皇帝は不死身ではない。
その後、帝国シャドーとレクシリウス王国の戦争が激化していく事となる。
リゲルは魔王の復活を阻止するために戦い、アルタイルは愛する家族を守るために戦う。