第六話 魔族 SC0160

レクシリウス皇帝は人族の寿命を遥かに超え存命していた。

それは皇帝直属の術者ゲオルグと、皇国繁栄の礎となった賢者の石の力によるものである。

賢者の石を使い延命処置を施せるほどの術者はそういない。

そのためゲオルグは皇帝の命令で自分にも延命処置を施していた。

しかし、この方法では体構造上の限界を乗り越える事はできないと解ったゲオルグは不老の永久機関ホムンクルスについて研究を始めた。

ホムンクルスの体の錬成には成功したがそこに魂を定着させる事はできなかった。

ゲオルグは探求心を抑えられず禁忌を侵してしまう。

賢者の石の力で魔力を増幅させ魔族を召喚してしまったのだ。

召喚に応じたのは魔王サタンの使いメフィストフェレス。

メフィストはゲオルグに話を持ちかけた。死者の書に記された方法でホムンクルスは完成させる事ができる。この書を貸す代わりに、彼方の体を譲ってほしいと。

不死の秘術を完成させる事に執着していたゲオルグは体を魔族に明け渡した。

たった一人の私的な欲望が世界を混沌へと誘う事となる。

メフィストの目的はダークエルフを生み出し魔王サタンを復活させる事。

それは世界樹の封印が一番弱まる日食の時、その器であるダークエルフが地獄の扉に触れサタンの魂を呼び起こす事で達成される。

しかし、ダークエルフを生み出すには母体となるエルフ族が必要となる。メフィストが狙う良質な血統を持つエルフは大森林の結界内におり魔族は外から干渉する事はできなかった。


古の時代より魔族の眷属であったオーガ族は知能も低く操りやすかった。

メフィストはオーガを使い大森林に戦争を仕掛ける。

元より勝ち目などない戦争だったが一人のエルフの行方を眩ませるには十分だった。

最前線で戦うエルヴィムの妹であるソロネを捕らえ、オーガの首長との闘いでタルタロスの大穴へ落ちたように見せた。

ソロネを連れ帰ったメフィストはダークエルフの誕生を試みた。しかし、ソロネには女児しか生まれない呪いが刻まれていた。

魔王サタンの器は男児でなければならない。

大森林の外に出る機会が多い戦乙女のエルフにはエルヴィムが保険を掛けていたのだ。

しかし、さすがのエルヴィムも数千の兵すべてに永劫封印を施す事はできなかったようで、幸いにもその呪いは世代を重ねると薄れていく術式だった。

メフィストは長い年月を経て呪いを薄めていった。