デジタル時代の戦略:“新しいエコシステム“を作りに行く Part One

~ブロックチェーンで世界を変えるための第17歩~

TL;DR

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の時代においては、”顧客体験”を届けるために、他社との共創により新しいエコシステムを作りにいく戦い方が求められる。ブロックチェーンはその基盤技術として必須。

2020年9月にあたらしい経済さんと共催したイベント「企業のDXとブロックチェーンの実用化」でパネルディスカッション「どのように企業はDX戦略を立てるべきか」に参加しました。このセッションの準備を通じて、DXとは一旦何だろうかと改めて考えさせられました。前職の日立コンサルティングで”IT”コンサルタントとして10年間、事業会社や金融機関のお客様のIT化を支援してきた人間として、ITとDXは何が違うのか、今回この思考プロセスを共有しながら、考察を深めていきたいと思います。結論、私たちは戦い方の変更を迫られています…

ITもDXも同じ!?

まずは教科書的にITとDXの定義を見てみると、

IT = Information Technology = 情報技術

DX = Digital Transformation = デジタル変革

となります。ITは技術を指しており、目的実現のための”手段”です。一方、DXは変革であり、技術によってもたらされる状態の変化を指しています。すなわち単純に比較できない…のですが一旦横に置いておきます。おそらくDXは、ITを手段としてアナログからデジタルへの移行を促し、何かを変革すること、と思われます。

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ただし待てよと。それってこれまで企業が長年取り組んできたことそのものなのでは?と思うのです。例えば、企業は部署間でサイロ化されていた情報をERPシステム(IT)を使って一元管理して、決算早期化(DX)という変革を実現してきました。にもかかわらず、ここ数年でDX、DX、DX…と叫ばれているからには、単なるITによる変革とDXの間には何か決定的な違いがあるはずです。異なる視点から見ていきます。

競争するか共創するか?

ここ数年で”キョウソウ”という言葉の漢字(感じ)が変わってきており、企業は競い合うのではなく、パートナーシップを組んで共に創り上げる方に主眼を置き始めています。SDGsの目標17にも「パートナーシップで目標を達成しよう」と掲げられています。しかし、なぜ他社と”共創”しなけれならないのでしょう。

これはSDGsの考え方にヒントがあります。SDGsの目標17の前にある16個の目標(貧困、技術革新、クリーンエネルギー、気候変動など)は、明らかに個人や個社で解決できる話ではありません。そのため、目標17でパートナーシップによる目標達成を謳っているのです。

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日本では伝統的に”自前主義”の考え方が主流でした。1社でフルパッケージのサービスや製品を提供します。しかし、Fintechにおけるアンバンドリング、リバンドリングが典型ですが、ITによりデジタル化された現代の企業向けサービスにおいては、お客様が自分を中心に、複数のサービスを自由に組み合わせて使うことが主流になってきています。また、ベンダー1社が単独で提供するサービスは、その企業に依存するリスク(ベンダーロックイン)がある点もお客様自身が気付いています。このような背景もあり、同業他社と共創してサービス開発する動き、すなわちオープンイノベーションにより、お客様目線で提供価値を追求する動きが当たり前になっています。

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簡単に共創なんてできるものなのか?

とはいうものの、共創は簡単ではありません。自社だけでガバナンスを効かせられないからです。互いにwin-winになるインセンティブ設計がなければ、共創へと向かえません。では一体何がメリットで共創を後押しするのでしょう。

大きなメリットの一つはデータです。物事がデジタル化されるDXの時代において、データは経営資源になります。共創によりこれまでリーチ出来なかったデータにアクセスできるなら、それを基礎に新たな収益源を生み出し、またコスト削減効果のある施策に取り組むことが可能です。

例えば昔から言われているのは、「銀行は決済情報は持っているが、実際の商流(契約や受発注)が分からない」という課題があります。

事業会社が銀行に商流を渡せば解決するのですが、そう簡単な話ではありません。なぜなら、事業会社が銀行に商流を渡すそもそもの理由がないからです。インセンティブがないのです。

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考えてみましょう

では仮に事業会社が銀行に商流データを渡した場合のメリットを考えてみましょう。銀行はファイナンスの出し手です。事業会社が運転資金を調達するには、財務諸表を事業会社に提出する必要があります。これに加えて商流データも渡すことができたら、銀行側は商流にまつわるリスクをより精緻に把握し、追加的に事業会社の与信を測ることができるでしょう。これまでファイナンスを提供できなかったお客様にも融資ができるかもしれません。銀行側にとってはトランザクション・バンキング・ビジネスの拡大に繋がります。事業会社側は言うまでもなく、より低コストでの運転資金の調達が可能でしょう。

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このようにデータという経営資源が企業間でどう流通すると、どのような革新的サービス(すなわちDX)が実現できるかを仮説ベースで考えると違った景色が見えてきます。「仮に○○データを取得することが出来たら、うちのメリットは何だろう?相手にとってのメリットは何だろう?」と考えることで、共創する理由を見つけていくのです。「うちも乗り遅れないようにDXやろう!」ではありません。

データ流通における課題

さてデータ流通を目的に共創する理由は何となく分かってきましたが、共創を実現するには超えなければならない課題があります。

①そもそもデータではなく、紙で情報が管理されている。

②仮にデータがあったとしても、真正性の問題が発生するから

です。

①そもそもデータではなく、紙で情報が管理されている。

これだけデジタル化が進んでいる現代ですが、今でも多くの企業間取引には紙やFAXで使われています。紙に書いてある情報を他社へ共有するのは相当困難です(「FAXの使い方を教えてください」と新人に言われるかもしれません)。わざわざ情報共有のために契約書や発注書等の紙を他社に郵送するほどお人好しにはなれません。

②仮にデータがあったとしても、真正性の問題が発生するから

ところで、なぜ企業間取引は未だに紙が主流なのでしょう。それは原本が求められるからです。正副の契約書に割印して一部をお客様に送付した経験のある人も多いでしょう。取引をデータ化したとしても、コピー出来て変更もできる頼りない”データ”では、契約書の代替にはなり得ません。データ化した取引は他社から見れば単なる文字列に過ぎません。そのため今でも紙で行われているのです。

ブロックチェーンがデータ流通を変える

ここでやっとブロックチェーンの出番になります。今後、企業はブロックチェーンを基盤としたネットワークの中で、共通アプリケーションを利用し、他社との取引を始めます。取引当事者は、判子の代わりに”電子署名”で押印することで、そのデータは事後的に変更不可の特性を伴って、各社のDBに保存されます。これにより、そのデータは押印した紙の契約書と同様の効果、すなわち原本性が得られます。これで何が嬉しいかと言うと、このデータは対改ざん性があるため、取引の直接的な当事者ではない第三者に渡すことができるようになるのです。データの受手である第三者はデータに付帯する電子署名を自ら検証することで、本当にその契約が取引当事者により合意されており、また改ざんなく保存されているかを確認することが出来ます。つまり、経営資源であるデータが安全に流通する仕組みを企業間で実現できるのです。

これはAmazonのようなプラットフォーマーが1社でデータを独占していないと達成し得なかったビジネスモデルです。Amazonであれば、Amazonが集中的に所有するデータを使って、例えばAmazonレンディングのようなサービスを提供できます。全てのサービスがAmazon上で完結するため、データの真正性は問題になりません(Amazonの会社としての信頼だけで事足ります)。ブロックチェーンを使った基盤上で運営するネットワークでは、Amazonに乗らなくても、信じてよいデータが作り出せます。これがブロックチェーンの世界です。

Part Twoに続く

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