トレーサビリティからトークンエコノミーへ(前篇)

~プライベートブロックチェーンのビジネスユースケース~

YuIku
Corda japan

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この記事は、2019年8月1日に開催したTokyo Corda Meetupの1stセッション〈Cordaで始めるトークン化の世界〉の記事化(前篇)です。

1.ブロックチェーンの今

ブロックチェーン業界は、パブリックブロックチェーンと、プライベートブロックチェーンの大きく二つに分ける事ができます。プライベートブロックチェーンはエンタープライズ用途を目指し、パブリックブロックチェーンはそれ以外の世界を目指していると理解しています。

パブリックブロックチェーンもまた二つに分ける事ができます。誰でもマイニングに参加できる(Unauthorizedマイニング可能)ブロックチェーンとそれが不可能なブロックチェーンです。

Unauthorizedマイニングには課題があります。それはマネーロンダリングです。犯罪で貯めたお金を電気に変えて、それをBitcoinで保管する。そんな事が可能です。このお金は追跡不能です。いつかこの部分に捜査機関のメスが入る可能性があります。

そうしたことができないパブリックブロックチェーンは(ほぼ)全て、独自のビジネスユースケースを持っています。逆に言うと構想段階からビジネス化が見えていたからこそ、Unauthorizedマイニングを否定できたといえるかもしれません。例えばXRPであれば海外送金を主要ユースケースとして、具体的なソリューションとしてxCurrentやxRapidを用意しています。Binance Coinがもつ具体的なソリューションは取引所における決済通貨としての役割です。どちらも決済が絡みます。決済が絡む場合、流動性の提供やファイナリティが必須要件となり、それだけにUnauthorizedマイニングを否定したという理解もできるかもしれません。

最近話題のLibraも同じ文脈で理解できます。彼らの狙いはSNS(Facebook)における評判(いいね)の価値化と、決済基盤(=銀行口座)を持たない,持てない新興国における決済基盤の独占です。ここでも決済が重要な論点となるため、Unauthorizedマイニングは否定されるでしょう。

さて、プライベートブロックチェーンはどうでしょうか?それがこの議論の本論です。プライベートブロックチェーンは適切なビジネスユースケースを見つけられているのでしょうか?

2.トレーサビリティ

プライベートブロックチェーンが最初に見つけたユースケース、それがトレーサビリティです。(たしゃ事例ですが)例えば以下の記事。

プライベートブロックチェーンの具体的ユースケースとして食品トレーサビリティが商用化されています。なぜトレーサビリティはプライベートブロックチェーンにとって適切なユースケースなのでしょうか。

それは、トレーサビリティにとって最も重要な問題は「入力データの確かさ」にあるからです。トレーサビリティを実現するためにブロックチェーン技術にできることは、改竄を不可能にするという事だけです。より重要なのはトレースすべきデータ(例えばキャベツの産地)が正しいかどうかです。

それを保証するには、データの入力者が誰なのか厳密に管理できる必要があります。ネットワーク参加者をオフチェーンで管理し、ノードの保有者が誰であるか明示されているプライベートブロックチェーンは、トレーサビリティというユースケースにぴったりな技術であるという事ができるでしょう。

3.トレーサビリティからサプライチェーンマネジメント、そしてトークンエコノミーへ

トレーサビリティが、プライベートブロックチェーンにとって非常に良いユースケースであることはご理解いただけたと思います。

ただ、トレーサビリティはこれだけにとどまりません。もっと豊かな未来をプライベートブロックチェーンに用意してくれます。モノのトレーサビリティの次のステップとして、物を作るプロセスそのものを管理するサプライチェーンマネジメントという分野があります。モノを作るというのは非常に複雑なプロセスです。社内の製造プロセスを監視し、プロセス途中の部品在庫数を管理&予測し、適切に原材料会社に発注する。又、商品の発注者と連携し納期を連絡したり、配送業者を手配する。こうした一連のプロセスをシステム化したのがサプライチェーンマネジメントです。複数社が関与するこのシステムはプライベートブロックチェーンに載せる価値のあるユースケースです。もちろん、既存システムをすべて書き換えるのではなく、データ連携部分だけをブロックチェーンベースに変える。それだけでシステム外にはみ出ていた例えば発注書の送付といった作業が不要(自動化)になります。

そしてサプライチェーンマネジメントの先にはサプライチェーンファイナンス、そして企業グループ内トークンがあります。この二つはいわゆるトークンエコノミーのはしりになります。

サプライチェーンファイナンス、企業グループ内トークンとは何なのかについて、次に見ていきましょう。

3.サプライチェーンファイナンスと企業グループ内トークン

トレーサビリティの目的は顧客の信頼確保でした。そして、サプライチェーンマネジメントの目的は事務効率化によるコスト減がその目的です。旧来のIT技術の延長線上にあるユースケースという事もできるでしょう。

しかしこの先、サプライチェーンファイナンス、そして企業グループ内トークンは全く新しい世界。トークンエコノミー、いわゆるフィンテックの一つの実現例といえる世界です。

①サプライチェーンファイナンス

サプライチェーンファイナンスとは、サプライチェーンマネジメントをベースに、運転資金を銀行から調達する手法の事を言います。通常、サプライチェーンマネジメントの中で一番大きな(信用力のある)企業が発注者になっていることが多いです。サプライチェーンマネジメントがブロックチェーン上に乗っていれば、リアルタイムで個別の注文の確認、誰が発注したのか等をトレースできます。その情報をベースに例えば末端の部品を作っている中小企業に運転資金を貸し出すことができるようになる。こうすると、銀行側は信用リスクを減らすことができますし、借りる側は大企業の信用力を利用してより低い金利でお金を借りる事ができます。全体の仕組み構築には関係者の多大な努力が必要ですが、効果は非常に大きいはずです。

②企業グループ内トークン

そして、最後のステップが企業グループ内トークンの発行です。企業はなぜ運転資金が必要なのでしょうか?それは、例えば注文された商品の代金を受け取る前に、原材料を購入するためです。

この注文を受ける会社が発行したトークンがあったとしましょう。発行にかかる費用はシステム経費だけです。このトークンを使って原材料を購入できるとしたら?

巨大な企業グループであればこのような取引を実現かのうです。グループ内での売買取引を実現するために、大量の運転資金を現在用意していますが、お互いの決済に使えるトークン(繰り返しますが必要なのはシステム経費だけです)さえあれば、外部から大量の資金をプールして借りておく必要はありません。また、このトークンの決済はリアルタイム、場合によってはスマートコントラクトで自動決済されます。そもそも必要な運転資金の量も減るでしょう。

もちろん、そのトークンを受け入れない企業や、従業員のために現預金は必要でしょう。しかし、その金額はそれぞれの企業が銀行から借り入れる場合の総額と比べて劇的に小さくなります。また、銀行に預けたお金を動かすには振込が必要でそのたびに振込手数料がかかります。この経費も積み重なれば非常に大きなものになります。

法規制上の問題も当然あると思いますが、

企業グループ内トークンの発行は財務基盤に劇的な影響を与えます。プライベートブロックチェーンのビジネスユースケースとして、これ以上素直できれいなものはありません。

是非、この世界に向けて歩を進めたいと思います。

後編はこちら

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YuIku
Corda japan

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