Cosmos Hub Theta Upgrade(2022 Q1) で変わること -Liquid Staking編-

Taiki_Frsh
Jan 22, 2022

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これはCosmos HubのTheta upgradeにて予定されているLiquid Stakingモジュールについての記事となります。
タイトルは先日のTakuya Fujitaさんの記事のエミュレイトになってます。まだお読みでないという方がいらっしゃいましたら、内容的に大差でInterchain accountの方が面白いと思いますのでぜひそちらを先に読むことをお勧めします。
では、ハードルをしっかり下げたところで本編に参ります。

※1/22時点でまだ実装が確かでない部分がありますので、あくまで今実現しようとしてるものについて書いています。実装が明らかになり、間違いがあればその都度改変しますので、そこら辺はご了承ください。

概要

Liquid Stakingは既存のCosmos sdkに含まれているStaking, distribution, slashingモジュールに新しく加わる変更と、CosmWasmの統合を以てしてStaking derivativeを実現しようというものです。
Staking derivativeとはStakeしてあるアセットから作る合成資産で、LidoによるstETHのように、Stakeして動かせないアセットの代替を目指すものです。
つまり、Liquid StakingはStakeしてるATOMからある程度自由度がある資産を生み出すことを可能にするためのUpgradeです。

LSが持つ主な機能として、
・StakeしてあるアセットをLiquid staked assetへと変換する。
・Liquid staked assetはTransferableである。
・Staking rewardを受け取る権利も同時に移転される。
・最終的にスマートコントラクトによりLiquid staked assetをFungibleなStaking derivativeにできる。(stETHみたいなやつ)

しかし、デメリットとしてLiquid staked assetへと変換したDelegation分の投票力はRedeemしない限り自動的にValidatorに移行することになるようです。(Liquid staked assetへと変換された分のDelegate量は元のアドレスから見かけ上なくなります。)
ここで注意して欲しいのは、モジュールの変更にて実現されるLiquid staked assetは完全なFungibilityを持たないため、この段階ではstETHのようには使えません。CosmWasmによって書かれるスマートコントラクトを通して初めてStaking derivativeは出来上がります。しかし現在まだスマートコントラクトがどのような実装になるのかは明らかにされていません。

Liquid Stakingが達成しようとしてること

最終的に出来上がるStaking derivativeは、DEXに流通させることができますし、CDP(Collateral Debt Position)にも使えます。つまり、CW20 (ERC20)でできることが大抵できるようになるということです。

これの何が嬉しいのかというと、もちろんある程度自由に動かせる資産が増えることもそうですが、それだけはありません。
DPoSチェーンを堅牢にするという素晴らしい働きにも寄与します。DPoSはしばしば分散性が足りないなどという批判を受けますが、それは大雑把に言えば、主にValidatorの数が固定されていることと、Stakeされているネイティブトークンの少なさが原因となっていることが大きいです。
逆に言えば、Stakeされているトークンの割合を増やすことができれば、この課題が部分的に解決されるということです。
これがなぜ難しいかというと、Stakeを促すインセンティブ構造を作るのが困難だからです。現状はStakeの報酬としてブロック報酬がもらえるようになっていますが、トークンホルダーはこれだけでは中々Stakeしてくれず、満足のいく水準でStaking率を保てているとは言い難いです。
ですが、Staked assetとしてDeFiや、PaymentにstakedATOMが使えるようになれば、たくさんのATOMをブロック報酬として放出してStakingを促す必要はなくなるので、分散性を高めるという目的だけでもStakingしてくれる人が増え、DPoSとしてより成熟した分散ネットワークを築き上げることができるというわけです。
つまり、Liquid Stakingが達成しようとしているもう一つのことは、大きく捉えれば、DPoSブロックチェーンの更なる分散化なのです。

具体的な仕様とpSTAKEとの違い

LSモジュール、CosmWasmを活用したStaking derivativeの具体的な仕様を、pSTAKEという既にATOMのStaking derivativeを発行できるプロトコルと比較して見ていきましょう。

まず一つ目の大きな違いは純ATOMに対する扱われ方が挙げられます。
pSTAKEでは預けるATOMはMultisigで管理されますが、LSモジュールではStaking derivativeを作るためのLiquid staked assetはTrustlessに作ることができます。
この違いによる変化の実例としては、純ATOMに戻すためのプロセスの違いに現れます。pSTAKEではUnstakeして純ATOMを取り戻すためにはUnbonding期間通り21日かかります。
しかし、LSモジュールを使う方は、Liquid staked assetをRedeemするところまでは余分な時間はかかりません。つまり、Delegated ATOMを得るまではTimelessになるはずです。(実際のコントラクトがどうなるかまだわかってない。)そこからUnbondして純ATOMに戻すのに21日かかります。

二つ目は、Staking derivativeが発行されるチェーンの違いです。pSTAKEはEthereum上で発行されますが、LSモジュールを使ったものはCosmos Hub上で発行されます。
これは単純に現在Cosmo HubではCosmWasmが搭載されていないので、Smart contractが実行できるEthreum上で発行しようという話で、もしかしたら将来pSTAKE側もHub上で発行できるようにするかもしれないですね。

もう一つはUIUXの違いです。pSTAKEは、MetaMaskを使うことになりますが、LSモジュールの場合はKeplrに繋ぐだけで事足ります。これは多くの人にとって一番重要な違いかもしれません。

さて、こうしてみると意外に違いが多く、使われ方やそれぞれで発行されるStaking derivativeのDeFiプロジェクトからの採用のされやすさみたいなものにある程度差がつきそうですね。

おわりに

Liquid Stakingが新たに可能にするStaking derivativeがどういうものなのか、何を達成したいのか、少しでも伝わっていたら幸いです。
これはATOMのInflation rateを固定化、さらにはDeflation化を実現させるための第一歩となる、Cosmos ecosystem全体にとっても重要な変更だと個人的には思っています。

最近はATOMのDelegatingの報酬代わりに、雨のように色々なトークンが降ってきていますが、これは厳密にはATOMが持つUtilityではありませんね。
ですが、先ほども述べた通り、Staked assetとしてDeFiや、PaymentにstakedATOMが使えるようになれば、目には見えないけれども重要な要素である分散性を高めるという目的だけでもStaking率が上がり、その結果この先予定されているInterchain SecurityやCosmos ecosystem全体の発展を大きく推進するUpgradeになるでしょう。

拙い文章だったと思いますが、お読みいただきありがとうございました。

間違いや誤字脱字などありましたらこちらTwiterアカウントまでおねがします。権利侵害については怖いのでDMでひっそりお願いします。

References

Liquid Stakingのためのテストネットも開かれてるので、気になる方はぜひ参加して見てください。下のレポジトリがTestnet用のものです。

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Taiki_Frsh

Is the world heading to Serfdom? Then, crypto is there for everyone, maybe.