仮想通貨に関連する公認会計士の監査ってどんなもの?

我が国で初めての仮想通貨関連法案

平成28年5月25日、我が国で初めて仮想通貨に関連する法案が参院本会議で可決・成立した。法案の正式名称は「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」というもの。

この法案のうち、資金決済法の改正案では「仮想通貨」を定義するとともに、業として行う仮想通貨の売買・交換及びその媒介等を「仮想通貨交換業」と位置付け、事業者に登録を義務付けている。

また、同法案中の犯罪収益移転防止法の改正案では、仮想通貨交換業者を同法における「特定事業者」に指定し、一定の義務を負わせることとしている。

公認会計士監査に関する規定

さて、本稿では報道などで一般に「仮想通貨取引所に公認会計士監査を義務付け」等のざっくりした表現で呼ばれている規制は具体的には法律上どのように規定されているか見ていきたいと思う。

今回成立した法案の中で公認会計士又は監査法人の監査が出てくる箇所は2つある。

1つ目は、資金決済法第63条の11において、仮想通貨交換業者が利用者の金銭又は仮想通貨を自己の金銭又は仮想通貨と分別して管理しなければならない旨(同条第1項)、そして、その管理の状況について、定期に公認会計士又は監査法人の監査を受けなければならない旨(同条第2項)が規定されている。

2つ目は、同じく資金決済法第63条の14において、仮想通貨交換業者が事業年度ごとに「仮想通貨交換業に関する報告書」を作成し、内閣総理大臣に提出しなければならない旨(同条第1項)、当該報告書には、財務に関する書類、当該書類についての公認会計士又は監査法人の監査報告書その他の内閣府令で定める書類を添付しなければならない旨(同条第3項)が規定されている。

このうち2つ目の監査は一般事業会社の財務諸表監査に相当する馴染みのある監査である。これに対して、1つ目の分別管理に関する監査はこれまで証券会社等に対して行われていた特別な業務である。

分別管理に関する監査

日本証券業協会において金融商品取引法第43条の2第3項の規定に基づく分別管理監査を受ける場合の基準、手続等が「顧客資産の分別管理の適正な実施に関する規則」として定められている。そして、この規則では「検証業務」と「合意された手続業務」のいずれかで分別管理監査を実施することとされている。

「検証業務」はより一般的な監査用語では保証業務ということができる。この「検証業務」と「合意された手続業務」の違いを気にするのは公認会計士業界に身を置く者ぐらいだと思うが、業界内では厳然と区別されている。

保証業務は主題について何らかの結論を述べ、まさしく保証を与えるものであるのに対して、合意された手続(Agreed Upon Procedures)は実施した手続とその手続から発見された事実だけを述べるものである。

これまで「検証業務」と「合意された手続業務」のいずれかで分別管理監査を実施することとされていたのだが、今般、折しもこれらの手続について整理が行われようとしている。

日本証券業協会の規則改正

具体的には日本証券業協会の「顧客資産の分別管理の適正な実施に関する規則」が改正され、「検証業務」と「合意された手続業務」のいずれかという形から「保証業務」(従来の「検証業務」から名称変更)に統一されることになった。つまり、より厳格な方式で統一した格好となる。その影響もあってか、経過措置として規則改正附則により「合意された手続業務」から「保証業務」への切替えについては、一定の猶予期間が設けられている。

かかる規則の改正案は平成28年6月10日付で公表され、平成28年6月30日までパブリック・コメント募集期間とされている。

これと平仄を合わせる形で、日本公認会計士協会においても、業種別委員会実務指針第40号「金融商品取引業者における顧客資産の分別管理の法令遵守に関する検証業務の取扱いについて」の構成を大幅に見直し、当該実務指針第40号を廃止した上で、新たに業種別委員会実務指針「金融商品取引業者における顧客資産の分別管理の法令遵守に関する保証業務に関する実務指針」として取りまとめることとされた。

こちらも平成28年6月10日付で公開草案として公表され、平成28年7月11日まで意見募集期間とされている。

まとめ

以上のように、仮想通貨に関連する公認会計士監査は、財務書類に対する監査と分別管理の状況についての保証という2つの業務から構成されるものである。

今般改正される日本証券業協会「顧客資産の分別管理の適正な実施に関する規則」、また、新設される日本公認会計士協会業種別委員会実務指針「金融商品取引業者における顧客資産の分別管理の法令遵守に関する保証業務に関する実務指針」のいずれにも(当然のことながら)仮想通貨に関する記述はない。

今後、別団体からのものも含め、仮想通貨関連の監査にかかる新たな規則や指針がいつごろ公表されるかはわからないが、それらの公表により具体的な手続が示されたり、仮想通貨交換業に関する内閣府令の公表により新たな手続が加わる可能性もある。しかし、基本的には証券業と類似の手続になることだろう。これからの動向を見守りたいと思う。

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