通貨とブロックチェーンそして社会的拡散性(前編)

武内樹
CryptoAge
Published in
18 min readJun 25, 2018

この記事は、Unenumeratedの”Money, blockchains, and social scalability”を二部にわけて翻訳したものです。全てのクレジットはUnenumeratedに属します。

イントロダクション

流行のブロックチェーンの中で最も歴史があり、最も規模が大きいのがビットコインである。誕生してからわずか8年で、(現在のビットコインと通貨の両替ができる以前の話ではあるが)価値はピザ一枚を10000枚のビットコインでやっと買えていたのが、いまや一枚の価値は1000ドルにまで跳ね上がった。

この記事の執筆時点(2017年2月9日現在)で、ビットコインの市場規模は160億ドル(日本円換算だと約1.8兆円)以上となっている。

ビットコインが誕生してからというもの、その勢いはとどまるところを知らない。その財政的なリスクが低い点から、今や国際金融ネットワークにおいて最も信頼できるかつ、安全である。

ビットコインの成功の秘密は、計算された効率性とビットコインそのもののリソース消費においての拡大性だけにとどまらない。特殊なビットコインハードウェアは高給なエキスパートによってただ一つの特別な機能が付くように作られている。その機能は、特殊かつ意図的に生成された暗号を解くためのものだ。この機能は、プルーフオブワークと呼ばれている。なぜなら、その計算による唯一のアウトプットは、コンピューターが通貨のかかる計算を行ったことを証明するものでしかないからだ。

このパズルを解くためのハードウェアは恐らく、合計で500メガワットの電力を消費している。そしてビットコインが、ネット上でのリソースにかかる膨大な費用を最小化しようと苦心している多くのエンジニアやビジネスマンを魅了した機能は、その計算機能だけではない。

ビットコインのプロトコルを少しでも減らす努力をするよりも、各ビットコイン用コンピューターは、ペイパルやVisaが扱っている従来型の決済ネットワークのように、とても多くの数のハッシュ値によって毎秒インターネットに干渉している。ビットコインは、リソースが意識された感性を攻撃し、エンジニアやビジネスマンと同じように、パフォーマンスが最大限に評価されるのだ。

ビットコインの成功の秘密はリソースの大量消費と乏しい計算的拡散性で社会的影響力を有する価値のあるものを買うことだ。社会的拡散性とは、構成能力のことである。つまり、複数の人が繰り返し参加するための関係もしくは複数の人によりシェアされた努力であり、習慣、ルール、もしくはその他の参加者の姿勢を強制もしくは奨励する特徴を有するものである。これは人間のマインドや前述の構成能力の心理的、服従的な側面における短所を克服するものだ。

また、これは参加資格や人数についても制限することもできる。つまり、社会的拡散は参加者がそれについて考えることができる、かつ、関係が進化するにつれて、多種多様な参加者間で生じる、ルールや関係の強い参加者に反応する方法なのである。これは人の制限についての話であり、技術的制約や物理的資源制約のことについてではない。そこにはコンピューターサイエンスのような、テクノロジーの物理的制約を評価するための別々の工学的規則がある。それには多くのユーザーを統御するために、テクノロジーに必要なリソースの上限が含まれている。

それらの工学的規則は、このエッセイの主題である社会的拡散性との比較において、除かれるものではない。

社会的拡散性とは、認知的制約、心情の行動的傾向であるにもかかわらず、重要で優れた判断を行う機械の物理的リソースの制約のことではない。この機械は決まりを促進させるテクノロジーの社会的拡散性のことについて考え、話すためのものだ。このコミュニティにおけるテクノロジーの社会的拡散性は、そのテクノロジーがどのように制約するか、そこにはそのコミュニティへの参加の動機を与えるかによる。そこには、危険な攻撃からの参加者たちや制度そのもののに対する防御も含まれる。

コミュニティにおけるテクノロジーの社会的拡散性を評価する一つの方法としては、コミュニティへの有益的な参加者の多さが考えられる。他の社会的拡散性を評価する方法としては、認知・行動によるコミュニティへの利益・損失の付与を通じて参加者への影響をはかることが考えられる。なぜなら、予想される費用やその他のコミュニティに参加することによる損失は、利益よりも早く増えるからだ。コミュニティに利益的に参加できる人々の中での文化的、管轄的違いは、重要視され、、特に国際的ネットワークでは顕著である。コミュニティが一般的な法律、習慣、言語に依存すればするほど、社会的拡散性は小さくなっていくのだ。

人々が協力して行われる努力によるコミュニティへの参加は、過去のコミュニティや技術革新の不存在では、多くても150人に留まっていただろう(有名なダンバー数のことだ)。インターネットの時代においては、新しいイノベーションは私たちの社会的能力を拡大し続けるているのだ。

この記事では私はブロックチェーン、特に計算された効率性や拡散性は滞った際でも問題なく、仮想通貨を統御する、社会的拡散性を増加させることができるパブリックブロックチェーンについて論じたい。

認知的能力ー種の新皮質についてのグラフー霊長目が制約できるように、人や動物同士を結び付けるためには、広範囲に及ぶ感情的なコミュニケーションとエンゲージメントを必要とする。それは例えると霊長目が毛づくろいをしたり、人間がグループの中で噂やユーモア、話をしたり、歌ったりするようなことだ。人間の認知を克服することで、どの人間、どのくらいの人数の人間がコミュニティに参加するのかを制約している。そしてこれは、コミュニティ上の技術革新を必要とする。

社会的拡散性のイノベーションは、機能を心情から紙もしくは機械へと移動させる、コミュニティ上、テクノロジー上の改善に関係している。同時に、このイノベーションは心情の中を浮遊したり、時には脆弱性を弱めたり、そして新しいもしくは共同の有益参加者を発見するための情報の価値を高める間は、認知するまでの労力を低くする。

Alfred North Whitehead氏によると、「このイノベーションは、優れたスピーカー、もしくはコピーブックによって繰り返される、著しく誤った真理である。そしてこの真理は、私たちがさらに研究するべき、人間の行動時の思考にたどり着くのだ。これとは反対のケースとして、文明は、私たちがそれについて意識せずとも動くような多くの重要な手段の増加によって進化してきた。」Friedrich Hayek はこれに「私たちは私たちが意味を知らない、かつ私たちそれぞれが所持していない知識を理解する助けとなるものを通して、決まったやり方、象徴、ルールを使い続けてきた。そして私たちはこれらのやり方や制度を、私たち独自の領域において証明してきたのだ。これらは結果として、文明の礎となっている。」と付け加えた。

多くのイノベーションは、私たちの親密な参加者、中間者、外部者との間での脆弱性を弱めた。そして、多くの人々がどのようなことをやろうとしているかについての不安に関する、認知への労力を低くしたのだ。増え続ける多種多様な参加者の間での、高付加価値情報の正確な収集や伝達を推進するための新たな改善方法である。他の進歩は、相互に利益ある参加者が互いを発見することを可能にしたことに寄与する。

これらのようなイノベーションは,人類の誕生から、世の中の人類の動きにより、時に劇的に人類のの文明化を築き上げてきた。IT、特に歴史的に見て最近のコンピューターサイエンスに関する発見は、互いに有益な出会いの創出や、情報価値への関心を高めること、そして制度上の不安を払拭する労力を低くすることができる。これは、多種多様な人々によって可能にされ、社会的拡散性がますます尊重されるのだ。

情報は主観的なプロトコルの中を移動する。このプロトコルや、法律の内容、多様な象徴そして市場価格を含んでいる。

トラストによる最小化は、コミュニティに悪影響を与えるような参加者間、そして、仲介者のポテンシャルの脆弱性を弱めている。長い文化的進化(法律など)やセキュリティの進化を経験してきた多くのコミュニティは、この進化が始まる前と比べて、脆弱性を多様な方法で弱めた。多くの場合、信頼されるもしくは、信頼するに値するようなコミュニティ(例えば、マーケット)は参加者からの信頼(例えば契約)に暗に依存している。これらの信頼されるコミュニティは伝統的に、コミュニティの機能性を促進させる多様な会計、法律、セキュリティ、その他の手段を行使してきた。イノベーションは部分的にしか脆弱性を取り除くことができない(他人に対する信用の向上など)。この世に完全に信用できるコミュニティ、テクノロジーなどないのだ。

疑う余地のない信頼などこの世に存在しないということは強力なテクノロジー、暗号化についても同様である。いくつかの暗号化されたプロトコルは、交渉相手とのデータ同士の関連性を洗練された計算能力によって、保証するものではある。しかし、これらが全ての参加者の行為について処理する際に絶対的な保証を与えるわけではない。例えば、暗号化はメールを第三者からの干渉から防護するが、送信者は受信者の未送信もしくは、メール内容を第三者へ暴露することまでは防げない。また、コミュニティ内でのコンセンサスプロトコルは、特定の幾人かの参加者、もしくは仲介者からの有害な行為により、コミュニティ内でのトランスアクションの整合性や情報の流れを妥協している。それによって結果的に、参加者を危険にさらしているのだ。近年のコンピューターサイエンスの進化によって、脆弱性を弱めることには成功したが、危険な攻撃をしてくるものに対する脆弱性については取り除くことができていない。

マッチメイキングは参加者の間での発見を促進させている。インターネット上においてマッチメイキングは、社会的拡散性のようなものであり、最も優れていることである。Usenet News,Facebook, そしてTwitterのようなソーシャルワークは 興味のある分野についての発見を促進させたり、人々を楽しませたり、ニュースを教えたりする。ユーザーがユーザー同士の利益を被ることをゆるすようになってから、ソーシャルネットワークはユーザー独自での関係性を異常なほどに促進させた。Christopher Allen はオンラインゲームとソーシャルネットワークでのコミュニティの規模、そしてコミュニティ内ユーザー同士の交流についてのいくつかの興味深い分析を行った。

イーベイ、Uber,AIRBNB、そしてオンライン両替は、商業的マッチメイキングでの優れた進歩を通して、社会的拡散性を生み出した。例えば、検索、マッチング、そして商業、小売りでの交渉の促進だ。これらの機能は、決済、運用、実証などのパフォーマンスを促進させている。実証機能とは、知らない人からどのようにパフォーマンスしたかについて評価されるというものだ。(例:yelpのレビュー機能)

社会的拡散性による最大の利益はマッチメイキングではあるものの、ブロックチェーンの社会的拡散性によってもたらされた、信用の最小化も素晴らしい機能である。ブロックチェーンはいくつかの重要なパフォーマンス(金を作ったり払ったりすること)や情報の流れの状態をロックすることで、マッチメイキング機能の脆弱性を弱めている。任意かつ秘密での活動によって成り立つ信用によって、表面上での計算は成り立っているのだ。このエッセイは脆弱性の弱体化及び、それによってもたらされる利益で成立する、信用最小化によって生まれた通貨にフォーカスしていく。

通貨と市場

通貨と市場はそれぞれの交渉において、買う人と売る人のマッチングと、受け入れやすく、標準化された反対給付によって参加者に直接的に利益をもたらしている。私がこのエッセイで用いる市場という言葉は、アダムスミスの下での意味と同じである。すなわち、市場とは買う人と売る人が集う場所やサービスではなく、むしろ、プロダクトを調整するサプライチェーンによって生まれた、一連の幅広い分野での両替のことである。

また通貨と市場は、より正確な価値づけをするようなインセンティブを付与する。これにより、両替で起こる参加者たちの交渉コストとエラーを減らしている。通貨と市場の相乗効果により、この効果の発生前のコミュニティよりも多くの参加者が彼らの経済活動を協調的にすることを可能にした。このコミュニティは競争市場というよりも独占市場といえる(?)。

市場と通貨はマッチメイキング(買う人と売る人を繋げる)、信用の低下(利他的になることよりも私利私欲になろうとする)、拡大機能(通貨、つまり反対給付のための受け入れやすく、再利用できる媒体)、そして情報流通(マーケットプライス)に関わっているのだ。

歴史上最も偉大な通貨と市場に関する思想家はアダムスミスだ。イギリスでの産業革命の始まりにおいてスミスは国富論(The Wealth of Nations)を観察し、どのようにすれば多くの人々が活動している中でも直接的もしくは間接的に商品市場を形成できるかを考えたのだ。

文明化し繁栄した国の、とてもありきたりな職人もしくは日雇い労働者の暮らしを観察することで、あなたたちは人々は産業の一部であることを認知するであろう。わずかではあるものの、人々はこの暮らしを獲得するために採用されており、これはただの計算では成り立たない。日雇い労働者が使うような羊毛コートは、製造されたばかりの時から既に粗末で粗い。この羊毛コートは労働者の大部分を占める結合労働者によって作られている。シェパードは羊毛の選別者かつ、けば立て職人、染め物師、乱筆者、紡績工、織工、縮充工、着付け人そしてその他の職人によって作られている。これらの職人たちはシェパードを作るために全員が働かなくてはならない。いったい何人の商人、運搬人そしてそれ以外の人間が原料を製作者からその他の人々へ運ぶために関わっているのだろうか!船の水夫、縮充工の水車小屋、織工の織機のような複雑な機械に対して何も言わないために、どんな種類の労働者が羊飼いが羊毛を刈るときに使う剪断器のようなシンプルな機械を作るために必要であるかだけを考えさせてほしい。坑夫、オーレ貨を製錬するための溶鉱炉を作る職人、材木の伐採機、製錬家を作るために炭を焼く人、レンガを作る人、レンガを積み上げる人、溶鉱炉に入った人、水車大工、鍛職工、金属細工師、これらのすべての職人はそれらを作るために必要である。彼のドレスと家具の全ての箇所を同じ方法で、肌を休めるために着ている粗い亜麻布のシャツ、足を覆う靴、彼が横たわっているベッド、そしてすべてのそのものを構成している要素、食料を置くためのキッチンの火床、もともとの目的のために使う炭、地球内部からの掘り出し物、波や乗り物があなたに物を運ぶこと、キッチンにある用品、テーブルにあるすべての用具、ナイフとフォーク、食料を分けたり、用意するための土製もしくはしろめ製の皿、パンとビールを用意するために使う手、快適な住居を必要としない北半球の労働者の多くの道具によって生み出された工夫が付随し、美しく素晴らしい発明を生み出した技術や知識によって作られた、熱や光を通したり、風や雨を弾くガラス製の窓。これら全てのものを作るために携わった道具そして多種多様な労働者について考えたときに、私たちはたとえ簡単でシンプルな方法を間違って考えていたとしても、文明化した国に存在する役立たずな人間たちの補助や協力なしに、賢明になるべきである。

そしてこれらは労働者の扱いが繰り返しとともに洗練され、多様化していった、1776年の産業革命からグローバリゼーションが進む現在よりも前での出来事である。可能性の低い利他主義を信じるよりも、市場や通貨は相互的に利益を生み出す組み合わせを作った。それにより、人々は気づかない間に大きなネットワークに参加するようになったのだ。

社会の大半を占める労働者からの協力や助けを必要とする、文明化した社会にいる男たちは、その人生において人々との関係性を構築することができていない。動物と違って、男たちは仲間から補助を受けるための継続したチャンスが存在にもかかわらず、他者の善意に身を任せて他者が自主的に自分を助けることを待っているのだ。交換とは他者から得ることができることであり、肉屋、ビールの醸造者、もしくはパン屋の善意によるものではなく、彼ら個人の意思で成り立つものである。

スミスは労働者の扱いそして彼らの生産性ががどのようにして交換ネットワークに依存しているのかを説明しようとした。「交換ネットワークとは、労働者たちに交換するチャンスを与えるものであるため、常に市場からの圧力によって制限されている。」国や世界の交換ネットワークが成長するにつれて、それらが関わる生産者の多様性は増え、労働者の扱いや生産性も変わっていくのだ。

通貨は交換する機会を増加させることで社会的拡散性を促進させる。受け入れやすく、再利用できる蓄積された富と転送を通して同時発生する問題(一方的取引での受給一致、機会一致)を減らしているのだ。それによって、通貨はトランザクションコストを著しく減らし、多様な人との、富の移転関係に関わる多様な物とサービスの交換を増やすことを可能にした。

会話、土、紙、電報、ラジオ、そしてコンピュータネットワークによる多種多様なメディアは、コミュニケーション、容認、結果としてできた交渉や価格、パフォーマンス管理、ビジネスコミュニケーションを可能にした。市場と通貨によって生み出された価格ネットワークに関して最も見識のあるものの一つである考察は、Friedrich Hayekのエッセイ「The Use of Knowledge in society」に記されている。

これらに関連したシステムは多くの人の間で分散されている。価値は無関係な異なる人々の行為が協力した社会において同等化する役割を持つ。彼らが本能的に協力し、いくらか打算された社会は、知識で成り立っている。知識は立案者のみならず、その他の人々に与えられる(立案者に対して還元されるべきなのにもかかわらずだ)。

事業プランに基づいて行動する人々のもつ知識の使い道は、経済動向を説明するための論理や知識をまず何に利用すべきなのかを考案する重要な問題である。特に後者は経済政策もしくは効率的な経済システムを構築する上でのメインの課題の一つである。

この問題の答えとしてはすべての商品に同じ価値を付与するというものがある。原価を、輸送コストによって決める方法と関連付けることのほうがいいかもしれない。そうすると、プロセスに関わる全ての人々の間で分散化された全ての情報を所持するという考えによってその答えを導き出せるかもしれない。多くの人が問題と原因を知らずに原料が不足になっているのは驚くべきケースだ。このようなケースでは1か月かけて調査しても1000人中10人のアイデンティティは確かめることができず、原料とその商品を使うことを控えめにするようになる。

すなわち、彼らは正しい方向に動いていると思っているのだ。これらの構造において価値システムは人々が使い方を理解せずに躓いた後に、(まだまだベストな使い方ではないものの)使えるようになったのである。労働者の扱いだけでなく、知識を等分化することによるリソースの協調的な利用が可能になった。解決策は部分的な知識しか持たない人同士による交流によって生み出されたのだ。

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