dYdX × KudasaiJP AMA内容まとめ
2023/2/27に行われた、dYdXとのAMA(Ask Me Anything)についてまとめた記事です。
dYdXについて
dYdXは、デジタル資産の無期限先物取引をするための主要な分散型取引所です。無期限先物取引により、トレーダーは原資産を実際に所有することなく、また期限満了の制限を受けることなく、価格の動きから利益を得ることができます。
dYdXプロトコルはイーサリアム・ブロックチェーン上に構築され、StarkExとして知られるStarkwareレイヤー2技術を通じてスマート・コントラクトを利用します。この技術により、プラットフォーム上での高速なトランザクション処理が可能になります。しかし、dYdXはV4アップグレードでプロトコルをスタンドアローンのCosmosベースのブロックチェーンに移行することで、オーダーブックとマッチングエンジンの完全分散化を目指しています。
dYdXは、ユーザーフレンドリーなインターフェース、低い手数料、効率的な取引処理、ポジションに対して最大20倍のレバレッジを提供する機能などで評価されています。これらの特徴により、dYdXは中央集権的な取引所(CEX)に代わる分散型取引所のトップ・チョイスとして確立しています。
AMA概要
- スピーカー:大木悠(Leomaru) (dYdX Foundation Japan Lead)
- 司会進行:ねこ(https://twitter.com/kasoutuu)
- 翻訳:nori(https://twitter.com/shibainuweb3)
- 実施日時:2023/2/27 21:00
- 会場:KudasaiJPテレグラムグループ / ツイッタースペース
AMA本編の内容まとめ
AMA本編の内容について、Q&A方式で記載していきます。
Q: 自己紹介を兼ねて、あなたの経歴やdYdXのチームについて教えていただけますか?
dYdX財団 Japan Lead 大木悠(Leomaru)について:
早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、テレビ東京のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。2017年に日本に帰国し、コインテレグラフジャパンの編集長を務めた。2020年12月にクラーケンジャパンの広報責任者に就任。2022年6月より現職。
Twitter: https://twitter.com/leomarudydx
メディア畑(メディア、PR、コンテンツ)のバックグラウンドという感じです。
dYdX Foundation (財団)について:
2021年6月22日にスイスのツークで設立された非営利財団。簡単にいうと、dYdXの応援団といつも説明していて、LeomaruはdYdXの応援団日本支部の団長といった感じです。
12人の正社員と7人のパートタイム契約社員のチーム。トレーダーはもちろん、エンジニアやデリゲートなどdYdXのDAOに参加する様々なステークホルダーの活動をあらゆる側面からサポートする。
Twitter: https://twitter.com/dYdXJapan
Q: dYdX財団の収入源はどうなっているのですか?
今は過渡期で、トレーディング社から業務請負といったイメージでお金をもらっています。V4以降はdYdXのDAOから予算をとってこないといけなくなります(voteで決まります)。
Q: dYdXについてご紹介いただけますか?
dYdXは無期限先物(パーペチュアルスワップ)という、暗号資産のデリバティブ商品を提供するDEXです。(dYdXについての概要はこちら:https://www.dydx.academy/article/dydx)
一つの中心的な組織が管理しているわけではない。
- dYdXトレーディング社・・・創業者のアントニオ・ジュリアーノが所属するプロダクト中心のチーム。ニューヨーク拠点。現状は、トレーディング社が中央集権的に、彼らの判断でプロダクトを改善したりといったことをDAOの投票を待たずに行なっている。
- dYdX財団・・・dYdX DAOの盛り上げ役である非営利団体。スイス拠点。dYdXエコシステム全体(トレーダー、DAOに参加する人、デリゲート、バリデーター、ビルダーなど全ての参加者を含む)の成長を、コミュニティ主導で進めていくためのサポート役。
- dYdX DAO・・・すでに今後の方針についてフォーラムで議論し投票できる仕組みがある。今年9月のV4(Version4)以降、主役になって、DAOの提案や投票の結果をもとにプロダクトを進めていく。
dYdX取引所のウェブサイト: https://trade.dydx.exchange/portfolio/overview
Q: dYdXと既存の競合プラットフォームとの違いを教えていただけますか?
固有名詞はあまり出したくないが、DEX(分散型取引所) vs CEX(中央集権的な取引所)の違いについて触れたい。もちろん他のDEXも注視はしているが、創業者が目指す世界はcexを超えることです。
一番の違いは、お金を誰が預かるか、セルフカストディ(自分で資産管理をする)かどうかという点だろう。管理者を信じるか、自分を信じるか。「人を信じないことって実はいいこと」っていうメッセージは、多くの人にとって反直感的で子供の頃からの教育に反することかもしれないが、Web3では重要な姿勢だと思っている。人を信じないけど成立するという感覚が浸透してくとweb3は進んでいくはず。
ただ、dYdXは、現時点で完全なDEXではない。なぜなら、dYdXトレーディング社が取引手数料を受け取り、取引板を管理しているから。
現状dYdXはハイブリッドで、ウォレットで資産を管理しているという部分はDEXだが、取引板はdYdXトレーディング社が管理していて、手数料を入っているという点はCEXとあまり変わらない。
これが今年9月予定のV4で変わる。主役がDAOになり、完全に分散化する。具体的には、手数料収入はトレーディング社ではなくDAOのトレジャーリーに入るようになり、取引板はdYdXチェーンのバリデーターが管理。
ブロックチェーン的には、イーサリアムからコスモスに移行し、コスモス上で独自ブロックチェーンのdYdXチェーンを持つ。
V4になったら、DAOの投票で全てが決まる。
→現物取引やオプションなど、新しいプロダクトを決めるのもDAO
トークン上場プロセスが早くなる?
→どこまでDAOを絡めてどういう上場トークンプロセスにするか模索中。
例)大手マーケットメーカーWintermuteがDAOでV4以降の変更について提案した。
主な提案内容:
- 取引手数料(メイカーとテイカー)の変更。
- 取引報酬を銘柄ごとに変更(例えばBTCとETHはそれぞれ10%、その他は80%)。
- dYdXが受け取る手数料収入のDAOメンバーへの分配の仕方。
こういったことをDAOとしてみんなで決めるということになる。
自分はトレーダーとかではないが、非トレーダーにとってのdYdXの楽しみ方として、ガバナンスに参加してdYdXを成長させるというのもあるんじゃないかと思っている。
Q: DAOが中心になると、最終的に運営は解散する??
今すぐに解散するということはないが、解散するようになれば成功だと思う。トレーディング社も財団もいなくて、DAO中心にエコシステムが回るなら素晴らしいと思う。そうなれば解散するかもしれない。
Q: このプロジェクトのためにチームが構築した技術やプロトコルはありますか? または、チームが適用している注目すべき技術はありますか?
技術者でないかつdYdX財団はプロダクトチームではないので詳しくは言えないが、コスモス以降の理由のところについて話す。
なぜコスモスか?
- 今のdYdX (v3)における取引板はdYdXトレーディング社が管理している(中央集権的)
- V4では完全分散化したいが、V3と同じトレード体験を提供する必要があり、そのためには1秒間1000回の取引数は譲れないライン
- それらをクリアするレイヤー1、レイヤー2を色々見たが、1秒間1000回を達成できるところはなかった。
- 分散型のオフチェーンで取引板を作るという方法を見つけた(マッチしない注文に関しては、バリデータが自分たちのサーバーに保管して、オンチェーンに載せるのはマッチした注文だけでOKというイメージ)。これを実現するためには、独自のチェーンを持つのが必須だった。
- コスモスSDKを使ってコスモス上に独自チェーン「dYdXチェーン」を作ることで分散とV3と同じトレード体験の両方を達成する。
- コスモスの独自チェーンは、プロダクトのカスタムがしやすい。
- 「現時点で可能な限り最高なプロダクトを作る」by 創業者アントニオ・ジュリアーノ
来月にプライベートテストネットが始まって、夏頃公開テストネット、9月にメインネットというスケジュールになっています。
Q: これまでに達成した主なマイルストーンと、目標とするマイルストーンをスケジュールとともに簡単に説明してください。
間違いなく、今年のV4!
とは言ってもコスモス以降がスムーズに進むかは、dYdXトレーディング社のエンジニア次第であり、財団としては祈るしかない。
エンジニアには非常に気を使っている。アフィリエイトを使ったマーケティングを検討したことがあり、アフィリエイトリンクをカスタマイズをするためにエンジニアの時間を1回あたり5分とっていた。その5分すら、時間を削ってでもV4を進めようという決断をしたというエピソードがある。
財団としてはDAOのガバナンス面での目標がある。課題は投票率を上げること。そのため、デリゲートという仕組みについて注目しているという話をしたい。
デリゲートは、トークンホルダーによってDAOのガバナンスにおける投票権及び提案権を委任される人や組織を指す。dYdXの場合、ガバナンストークンであるDYDXがデリゲートに委任される。「プロトコル政治家」として期待されている。
すでに、民間企業でデリゲート専門の事業をやるところが出てきています。また、アンドリーセンホロウィッツ(a16z)など著名VCは積極的にデリゲートをする方針で、というに学生団体にデリゲートしています。
以下はdYdXのデリゲートのリストです。
日本でも、名古屋大学の学生団体のデリゲートが出てきています。
Q: デリゲート(委任される側)を行うメリットは何があるんでしょうか?
非常に良い質問です!
現状、名誉的なものにとどまっている。ただ、デリゲートに対して一緒にツイッタースペースをやるだとか、dYdX財団がもっているデリゲートネットワークを活用していただく、VC(トークンを持っているがデリゲートしてないところなど)とのマッチングなどをやろうとしている。
dYdXではないが、デリゲートをやることで給料が出るといったところも見られる(MakerDAOなど)。今後、dYdX DAOでも提案、投票の結果次第でそのような流れになってもおかしくないと思う。
Q: これまでのプロジェクトで苦労したことはありますか?それをどのように解決しましたか?
V4への過渡期であり、V4にいまエンジニアがほぼ駆り出されていて、V3で大幅な改善は見込めないので、ユーザーにどのように待ってもらうかに苦労している。
まだ解決したとは言えないが、例えば、現在財団の私に課せられているKPIは、ここ2、3ヶ月で、伝統的な取引所KPIである取引量やユーザー数からブランディングやコミュニケーション、教育に変わった。Kudasai さんのような影響力のあるソーシャルメディアを通して、今後、ブランディングやコミュニケーションの課題を解決したい。
※KPI(Key Performance Indicator):「重要業績評価指標」
Q: 現在の投資家はどのような方々ですか?
財団には投資家はいないが、dYdXトレーディング社には投資家がいる。
Q: StarkExを使っていましたが、コスモスに移行するとStarkware社との関係はどうなるんでしょうか?
StarkExは分散型に対する意識はあるが、どうやら時間がかかるような感じだった。dYdXは「現時点で可能な限り最高なプロダクトを作る」というプロダクトファーストの考え方をしており、コスモス移行を決めたが、いいプロダクトを作るためにどこを使うかという判断をしている。将来的にStarkwareがパフォーマンスがよくなればまた戻るかもしれない。
Q: dYdXに関するニュースや最新情報で、私たちに伝えたいことはありますか?
まず今年の注目はV4一つと言っても過言ではありません。以下のサイトを通じて、最新情報をゲットしてください。
- dYdX:https://trade.dydx.exchange/portfolio/overview
- dYdX財団のTwiter:https://twitter.com/dYdXJapan
- dYdX財団のnote:https://note.com/dydx_japan/
- dYdX財団のdiscord:https://discord.com/invite/ZK72kX9rUA
また、dYdXとは一つのエコシステムと考えている。DAOへの参加者として、トレーダー、ビルダー、デリゲート、VC、バリデーター、ガバナンスの専門家などさまざまなステークホルダーがいる。トレーディングだけでなくトレーダーの人だけじゃなく、ビルダー、バリデーター、デリゲートなどなど、いろんな参加方法がありますのでぜひご検討くださいdYdXに対するさまざまな関わり方があり、とりわけ「DAOで働く」ことは今後面白い領域になると思っている。
MakerDAOの話もしたが、トレジャリーからお金をいかに引っ張ってくるかというのが面白いポイントだと思う。
DAOで働きませんか?笑
コミュニティ質問の内容まとめ
Q: dYdXの名前の由来を教えてください
数学の微分積分が由来になっていて、創業者のアントニオが決めたようです。
Q: dYdX Academyをこのタイミングでリリースした意図を教えてください。
特にタイミングを意図したわけではなく、できたからリリースした。dYdX AcademyはDAO主導のプロジェクトで、構想は去年からあったが、編成などするのに時間がかかった。
メリットとして、週に1回セクションがあって、タスクをこなすとPOAPがもらえて、POAPを集めるとNFTがあたるかも、というキャンペーンをやっている。
リンク:dYdX Academy
Q: 日本の有名企業とのコラボレーションなどはお考えですか?
現時点ではないです。DeFiなので規制の面で今後どうなるかわからないと認識している。
ただ、財団のCEOチャールズは日本の大手金融とか政治家、金融庁と対話を続けたいとは言っている(規制されたDeFiの実現)。
例えば、フロントエンドとプロトコルをわけて、フロントエンドはある程度規制に準拠するが、プロトコルは規制しないというようなイメージなら、DeFiと伝統金融のコラボレーションは、時間はかかると思うが可能性があるかも。
Q: ウチの弟がDYDXでエンジニアしたいそうです
トレーディング社以外のエンジニアもどんどん入ってきてほしい。財団としてはそういったビルダーもサポートしていきたい。
独自チェーンとしてのdYdXチェーン上では、技術仕様書のようなものが出てきて、いろんなプロダクトを構築できるようになると思う。例えばコピートレーディングの機能を実装するとか、プロダクトを付け加えていくことなどは可能になるはず。将来アナウンスに期待していただきたい。
Q: 今年、dYdXではイベント等はありますか?
具体的な名称はまだいえないが、今年の4月に世界的なブロックチェーンイベントがあるので、2つか3つのイベントにスポンサー、共同主催などで関わっていくので。財団CEOのチャールズ(元ConsensysのアジアBDトップ)も日本にきたり、登壇の機会もあるかもしれないのでぜひ見にきてください!
Q: 日本の選挙などを見ても分かるように、投票は決断に偏りが生まれやすい仕組みだと思います。この点に関して対策を考えていますか?
投票率を上げたいとさっき言ったが、投票率を上げさえすればいいのか?という点もあると思う。
例えば、有名な人たちがこっちに賛成してるから私もこっち、みたいなことになることはある。
ただ、選挙とかに比べると、より透明性が高い投票なので、現実よりは偏りがない方向に持っていけるのではと思っています。
おっしゃる通り、まだまだ答えは出てないところです。
Q: 現在のdYdX収益はおよそどの程度でしょうか?
2022年、取引量は4663億ドル、手数料収入は1億3700万ドルです。
dYdX財団が先月に出した年次報告書には他にもいろいろと統計データがあります。是非ご覧ください。
レポート(英語):https://dydx.foundation/blog/2022-ecosystem-annual-report
Q: 日本人向けのトレーディングコンペをまた開催する予定はありますか?
半年くらい前はやっていたのですが、現在V4に注力しており見合わせている状態。
V4になったら、トレーダーにいかに使っていただくかが大切になるので、そうなったらやります!
それから、ユーザーインタビューをTwitterで募集してるので、ぜひ応募してください!Tシャツ、帽子がもらえます!
こちらからdYdXグッズのショップです 🙂
Q: 最後にひとことお願いします!
本日は参加していただいてありがとうございます。
dYdX DAOはトレーダーだけじゃなく、いろんな立場で参加できる場所です。
ガバナンス、エンジニア、デリゲート、バリデーターなどなど興味がありましたが、Leomaru個人のアカウントでも、dYdX財団のアカウントでも大丈夫なので、連絡いただければと思います!
dYdXソーシャルリンク
- dYdX:https://trade.dydx.exchange/portfolio/overview
- dYdX財団のTwiter:https://twitter.com/dYdXJapan
- dYdX財団のnote:https://note.com/dydx_japan/
- dYdX財団のdiscord:https://discord.com/invite/ZK72kX9rUA
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