内定者を5年間追いかけた社長

萩原 敬大
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6 min readJul 2, 2018

「社長の仕事は採用と新規事業」

”究極、経営というのは、いかに良い人を採用して、気持ち良く働いてもらうか。それに尽きるんだよね。”

これは、アトラス、ボディショップ、スターバックスコーヒーのCEOを歴任された経営のプロ、岩田松雄さんがおっしゃっていた言葉。(岩田さんはボディショップの売上を67億円から約140億円に拡大。スターバックスジャパンを初の売上1,000億円へと導くなど、、スゴい実績がある…)

僕は1年くらい前にこの話を聴いて、なるほどなー…と思っていた。ただ、当時を振り返ってみて、めちゃくちゃ腑に落ちたかというと、正直、そうではなかった。正確に言うと、新規事業の方は腑に落ちた。ただ、採用についてはそこまでではなかった。社長自らが全力を注ぐほど重要なのだろうか? と、心のどこかで思っていた。

しかし、その後、新卒や中途採用の面接官を実際に経験させてもらって、いろんな才能ある社会人・学生とお会いしたこと。入社後、彼らが実際に活躍する姿を見たこと。そして、、立て続けに日本を代表する企業の経営者のお二人が、採用をとても重視していることがわかるエピソードを目にして、その考えは変わっていった。岩田さんの言葉の重みがわかり、採用活動というものへの向き合い方が大きく変わったのだ。

今日は、そのお二人のエピソードを少し紹介したいと思う。

「私が面接しない日はない」

1人目は、日本電産の創業者で、会長兼社長を務める永守重信氏。28歳で創業し、一代で1兆円企業を作り上げたとんでもない方だが、その人材へのこだわりが垣間見えたエピソードがこちら…

”「カラスが鳴かない日はあっても、私が面接しない日はないくらいでした。昔は、飛行機に乗ったら、必ず隣の人に名刺を渡して、「お仕事、何されています?」と聞き、ニューヨークに到着するころには「うちに来ませんか?」と誘っている。そうやって、何人もの人が入社しました。また、シャープ、東芝、ソニー、パナソニックなど、退職した人材も大量に採用しましたね。」”

”「どうやって口説くのか? 夢を語るのです。大きな夢を実現するための情熱を語る。誰しも夢を実現したいと思っているのだけど、そのチャンスがないから大企業に入ったわけでしょう。でも、私の過去を見る限り、どの夢も実現させてきた。今の目標は日本電産を10兆円企業にして、世界に大きな事業を残すことです。」”

(フォーブスジャパン:2017年8月号より)

ほぼずっと朝4時起き、基本365日働くというルーチンを保っていたことで有名な永守氏が、移動中も面接をしていた… このエピソードにはビビったが、、日本電産という会社を1兆円、10兆円という途方もない規模へと育て上げるためには、優秀な人材の力が必要だ。ということを認識し、そこに社内の誰よりも注力していた。ということがわかる。

内定者を5年間追いかけた社長

そして、2人目は「DeNA」の創業者:南場智子社長。(現:会長)

「DeNA」 は、1999年、モバイルのオークションサイト運営でスタートしてから、わずか6年で東証マザーズへ上場。8年で東証1部に上場している。

南場社長にも、ある書籍から、採用にまつわるエピソードを見つけた。その書籍とは、最近何かと話題になっている「SHOWROOM株式会社 」前田裕司社長の「人生の勝算」。(SHOWROOMは、もともとDeNAの社内ベンチャーとして立ち上がった会社だ。)

前田氏は、もともと新卒でDeNAの内定を得ていたが、最終的には外資系金融のUBSに入社。5年後、ニューヨーク支店でトップセールスとして大活躍していた。そんな前田氏に、南場社長は、「調子どう?」とか、「日本に帰ったら会おうよ。」とか、定期的にメールで連絡を取っていたらしい。

そして、前田氏が起業について考え始めた時、、ちょうど南場氏から連絡が。一時帰国の際、計画していた事業プランを南場氏に相談することに。

それを見た南場氏は、こんな風に言った…

「いいアイデアではあるけど、それ自体には価値がない。多分、今これと同じアイデアを思いついている人は、世界中に100人はいる。事業の肝は”胆力”。従業員の人生や自分の人生、そのリスクをカバーできる胆力があるかが一番大事。」

そして、、

「前田君、DeNAで修行したら?」と切り出した。

5年間連絡を取り続け、南場氏は、この時始めて明確に入社を促す言葉をかけたそうだ。

痛いところを突かれたと思いつつ、、入社の誘いには即答できなかった前田氏に対し、すかさず、

「会わせたい人がいる。」と、

現社長の守安氏など、DeNAの幹部クラスの優秀な人材を数人、立て続けに引き合わせた。

そして、、

「うちにおいでよ、一緒に世界一を獲ろう。」という殺し文句を放ち、前田氏を落とした。

(*前田裕司著「人生の勝算」より一部抜粋)

入社後、前田氏はライブ配信サービス「SHOWROOM」を立ち上げ、今ではアプリが200万ダウンロードを達成。ソニーミュージック等の大手からも出資を受け、日本のライブ配信サービスではトップの座にいる。

このエピソードを聞いて個人的に驚いたのは、ベンチャーとはいえ、DeNAほどの規模の会社の創業者が、毎年数百人はいる大学生の1内定者に、個人的に連絡をして、追いかけ続けていたというところ。相当光る人材だったのかもしれないが、永守氏社長と同じで、良い人材を確保することへの執念のようなものを感じる。

「社長の仕事は採用と新規事業」

少し前まで、聞いてもそれほど深くは響かなかったこと、府に落ちなかったことが、、実際に自分が面接官とし採用活動に関わったこと。そして、彼らの入社後の活躍を見るという経験を通して、、さらに、このようなスーパー経営者の行動・思考を知ったことによって、よりリアルに実感することができるようになった。

やはり企業は人でできている。対価として高い給与を払ったとしても、ひとりの優秀な人材を入れれば、数十倍、数百倍、人によっては数千倍ものリターンがある。

会社として、高い理想を実現するために… 日本を良い方向へと導いていくために…良い人材を獲れるように自分なりに貢献しよう。そして、彼らに伸び伸び働いてもらい、成長してもらえる場を作れるよう、できることをやっていこう。

というわけで、ウチの採用情報はこちら→
https://www.d-publishing.co.jp/

PS.
そういえば、ある雑誌の記事で、最近上場を果たした「メルカリ」 についての記事が載っていた。メルカリの経営陣は「ドリームチーム」なんて呼ばれるほど、ベンチャー界隈では名の通った実力者が揃っていることで有名らしいんだけど、どうやらメルカリでは中途の9割がリファラル(社員の紹介)と自社の採用サイトから。転職エージェントはほとんど使わないらしい。やっぱ良い人の周りには良い人が集まる。紹介って大事なんやなー…

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