バイオヘルススタートアップのリアル

Mina Akasaka
D2Garage
Published in
6 min readAug 1, 2019

(株)デジタルガレージと(株)北海道新聞社の共同出資による(株)D2 Garageは、道内のスタートアップや、オープンイノベーションを支援する目的で2018年に設立しました。

D2 Garageでは、(公財)北海道科学技術総合振興センター札幌市と共催で、健康・医療分野の起業と経営を学ぶための連続講座を開設しています。

先日開催した講座では、ヘルスケア領域でAIの応用を研究する北海道科学大学 副学長・工学部 教授 川上 敬 氏、スタートアップを代表して(株)ERISA 取締役 事業開発責任者 野津 良幸 氏、(株)Mealthy 代表取締役 鈴木 勝之 氏 に「バイオヘルススタートアップのリアルと最新研究事例」と題し、ご講演いただきました。その様子をお伝えします!

AIを活用した医療の可能性

川上氏

まず最初に、北海道科学大学 副学長・工学部 教授 川上 敬 氏に「医療×AI」についてお話いただきました。現在、北海道の地域医療が抱える問題として、過疎化による医療機関の統廃合、超高齢化による医用データの膨大、専門医の絶対的不足などが挙げられ、医と官での対応には限界が来ていると言われています。薬事法の改正によりAIを取り入れたソフトウェアが日本で使用可能となった現在、民の力による「医療×AI」のビジネス化が望まれています。

現在、医療現場では上記のように画像処理されています。そこで、川上氏の研究室では、ディープラーニングによる医用画像(肺がんのCT画像、前立腺癌のMRI画像など)診断の高度化、ディープラーニングによる医用画像のセグメンテーションの研究を進めています。

「医療×AI」の抱える課題として、AIにはデータが必要だが誰のデータを使うか?、AIにより様々な病気予測ができるようになったら健康保険はどうなるのか?といった倫理面の課題、また、テクノロジーの進歩が急速すぎて法が追いつかない、責任と権利の所在など法整備の課題などが挙げられますが、未だ解決されていません。

現状このような課題はありますが、様々な場面でAIを活用することで、付加価値や医療の効率化を実現することができるとされています。

第3次AIブームと言われている現在、AIが医療で解決できる可能性の幅はどんどん広がってきているのです。

(株)ERISA

続いて、認知症の治療薬開発を支援するコンパニオン診断プログラムにメインで取り組んでいる(株)ERISA 野津良幸 氏に事業内容をご説明していただきました。

野津氏

(株)ERISAは、高齢化が進んでいる島根県松江市にあり、島根県は日本で初めてMRIの脳ドックが導入された県でもあります。現在、認知症治療薬の治験は99.6%が失敗し、数兆円の開発費が損失していると言われています。そしてその失敗の6割は、治験の後半で有効性が見られないことが原因とされています。
MCI(軽度認知障害)の方の約7割は、認知症に進行しないとされていますが、これまでは、進行するかどうかの判別がつかなかったため、進行しない7割の人にも治験薬を投与していたのです。

そこで同社では、AIを使って脳MRI画像から認知症が進行するかどうか判別できる技術を開発し、認知症への進行を予測する事業に取り組んでいます。 下図のように、3年以内の期間で、アルツハイマー型認知症になった人とアルツハイマー型認知症にならなかった人の最初に撮影したMRI画像を元データとしてAIに機械学習させ、MCIを進行性と非進行性に識別する技術を作り上げました。

認知症治療薬の開発の際、ERISAの技術を使うことで、進行性MCI患者を識別することができるため、過去に有望だったがやむなく断念した開発候補品の有効性を再評価し、製品化に導くなどのメリットを製薬会社に提供することができます。なお、現在は滋賀医科大学で既に研究用途として稼働中です。

急拡大している認知症マーケットに対して、ERISAでは「進行性MCIの識別により認知症のない世界」をビジョンに展開していきます。

(株)Mealthy

鈴木氏

続いて、法人向けバーチャル栄養アシスタントを展開している(株)Mealthy 代表取締役 鈴木 勝之 氏にお話いただきました。

現在、医療費14兆円は食事などの生活習慣の未改善によるものと言われています。生活習慣を改善できないユーザーの課題として、「持続困難な目標設定」や「非効率な方法」、「自身のやる気への依存」などが挙げられます。そこで同社では、全国の管理栄養士とAIアシスタントによるバーチャル栄養アシスタントがその課題を解決するサービスを提供しています。

Mealthyを使うユーザー(社員)は、マンツーマンの栄養指導という高い満足度を得られ、Mealthyを特定保健指導などで導入する保険者に対しては医療費の削減、健康経営・福利厚生の観点で導入する法人に対しては、社員の生産性を上げることができます。また、国内最高レベルの画像解析技術を使うことで、栄養士アドバイスの半自動化が可能となり、他社と価格の面でも競争することができるのです。
また、AI技術と人による指導の掛け合わせにより、栄養指導の回数でも競合と比べ圧倒的に手厚く行うことができます。現在は、SIer、金融などの単一健保を中心に展開しており、2019年度では60健保への展開を目標にしています。
今後は、スケール化に向け認知行動療法の知財化や、AI栄養士の強化に取り組み、良質なデータを利活用することで、予防へと動機づけする社会インフラとなるべく展開していきます。

2019年11月から実践編 実施予定!

デジタル×バイオヘルス スタートアップ連続講座実践編を2019年11月から開講予定です🧪
近くなりましたら、Twitter/Facebookでご案内させていただきます!

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Mina Akasaka
D2Garage

Open Network Lab HOKKAIDO program director / D2 Garage, inc.