バイオヘルススタートアップのトレンド

Mina Akasaka
D2Garage
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9 min readJul 22, 2019

(株)デジタルガレージと(株)北海道新聞社の共同出資による(株)D2 Garageは、道内のスタートアップや、オープンイノベーションを支援する目的で2018年に設立しました。

D2 Garageでは、(公財)北海道科学技術総合振興センター札幌市と共催で、健康・医療分野の起業と経営を学ぶための連続講座を開設しています。
※この連続講座は、入門編として2019年7月に3回実施、実践編として2019年11月から3回実施予定です。(入門編は募集を締切りました)

第1回では、これまで100社以上のスタートアップを世に輩出してきた日本初のアクセラレータープログラム「Open Network Lab」の代表 佐々木 智也 氏からスタートアップの成長に必要な要素を紹介と、2018年にスタートした「Open Network Lab BioHealth」の担当 橋本 遥 氏からアメリカ・日本を中心としたバイオヘルススタートアップのトレンドを紹介していただきました。参加者にも大変好評でしたので、その様子をレポートします!

スタートアップ支援3.0へ

(株)デジタルガレージ執行役員 佐々木 智也 氏から、起業家が尊敬されず生まれにくい日本の現状をお話いただきました。

佐々木氏

日本では、起業を志す人は年々減少傾向にあると言われています。周囲に起業家がいる割合や、有利な機会も少なく、起業に対する期待や興味が低い状況です。また、ユニコーン(企業価値10億ドル以上の非上場企業)の国別合計企業価値は、アメリカでは3,102.80億ドル、中国1,138.00億ドルに対し、なんと日本では20.10億ドルという状況にあり、日本のスタートアップは、グローバルで大きく遅れを取っています。
こう言った状況を何とか打破したいという思いから、デジタルガレージでは2010年4月から「世界に通用するスタートアップの育成」を目的に、アクセラレータープログラムOpen Network Labを始めました。そして現在では、デジタルガレージグループのアセットをフル活用し、全国で5つのプログラムが動いています。

昨年から始動したOpen Network Lab HOKKAIDOでは5社、Open Network Lab BioHealthでは4社のスタートアップを輩出しました。

あなたがやるべきいいアイデアとは

そして最後に佐々木氏から、会場にお越しいただいたスタートアップ起業、新規事業開発を目指す方へ向け、アイデアの検証のアドバイスもいただきました。
“ビジネスのアイデアを考える際、「Who 誰の」「Pain 課題を」「Solution 解決する」「Timing なぜ今?」は最低限、考えておかなければなりません。さらに、「Alternative 既存の代替品」「Market 市場規模」「Why あなたがやる意味」を簡潔に言えるアイデアは、いいアイデアです。これまで数々のスタートアップを見てきましたが、誰にも負けない知見や経験がある経営者のサービスは、確実に伸びています。大企業などの競合先、VCやエンジェルなどの投資家といった無視できないプレイヤーに対して、どう戦うか、どう支援してもらうかを考える際、この7つの項目を使って検討してみることをオススメします。”

スタートアップのトレンドとこれから

続いて、(株)デジタルガレージDG Lab プロジェクトリーダー(BioHealth) 橋本 遥 氏にお話いただきました。

橋本氏

グローバルでのスタートアップ事業トレンド

2017〜2018年の1年間で新たに生まれたスタートアップのうち45%がDeep Tech関連と言われており、約8年で倍に増えました。一方、Tech系のスタートアップは、依然として高い傾向にありますが、2010〜2011年では77.2%だったものが、2017〜2018年には55.0%にまで減少しました。また、最新のGlobal Startup Ecosystem Report 2019によると、アグリテック・食、ロボティクス、AI、ブロックチェーンなどは成長市場と言われています。一方、ライフサイエンス、クリーンテック、フィンテックなどは成熟市場という位置付けになっています。

国内ヘルスケア市場の伸長

高齢化の進展で、医療者は増え続け、2030年には製造業、卸売・小売業を抜いて医療・介護の就業者数がトップになると推測されています。医療が日本経済を左右する重要な産業となるのは間違いないでしょう。海外のバイオヘルス領域のスタートアップが日本に進出しようとする理由は、良くも悪くも日本が高齢化社会先進国であるからです。高齢化社会に対するソリューションを提供しているスタートアップは、日本市場を一番に考えている傾向があります。

米国でのデジタルヘルストレンド

デジタルヘルス投資ファンドRock Healthでは、2018年、全投資額$130Bのうち、$8B(約9,000億円)がデジタルヘルス関連のスタートアップに投資されました。2011年は、デジタルヘルス領域への投資は$1.1Bだったので、8年で約8倍の投資額です。
また、健康増進サービスの伸びは鈍化し、代わりにエビデンスに基づき、治療とまでは行かないまでも改善を重視するアウトカム向上に寄与するサービスが伸びています。また、アプリを掛け合わせたサービスに関しては、「メンタルヘルス」「糖尿病」「循環器系」が主な対象疾患となっています。アプリとメンタルヘルスは、親和性が高い状況にあります。

ヘルスケアの技術トレンドは、AIやBigDataを活用して、3D Imaging、Wearables、Roboticsを使うパターンがあります。ヘルスケアの領域では、メンタルヘルスやリハビリという課題に対して、AR/VRを使ったソリューションを提供しているスタートアップもいくつもあります。

今後のヘルスケアキーワード

モバイル機器を中心とし、医療データの利活用や他業種の要素技術との組み合わせにより、これまでのヘルスケア文脈とは異なる異なるビジネスやプロダクトが多数出現すると言われています。

①mHealth
GDPR(General Data Protection Regulation)の適用
・ Real World Evidenceの利活用
・ Digital Therapeutics, “Beyond the Pill”
・ ブロックチェーンの医療活用

②3D Imaging AR/VR
・ ヘルスケア×ゲーミフィケーション

③Wearable
・ Apple WatchがFDA(アメリカ食品医薬品局)認証

④Internet of Medical Thing
・ AIホスピタル計画

⑤Robotics
・ da Vinci(手術支援ロボット)手術の保険適用拡大

バイオテク市場

人間の健康だけではなく、農業、環境、医療など様々な領域に波及するバイオテク。Synthetic Biology Investment Reportによると2019年 Q1では、バイオテク系スタートアップ25社に、総額$652Mが投資されました。また、バイオテク系だけで、2019年は$2.7Bの投資額に達する見込みとも言われています。バイオテクの投資機運は、農業や工業への技術応用が伸びており、治療/創薬は縮小見込みになっています製品形態としては、装置/デバイスへの投資が伸び、ソフトウェアは縮小見込みと言われています。

また、バイオテク領域のスタートアップ事例としては、乳製品・卵・肉などの代替タンパク質を製造するスタートアップで、シリーズAで$90Mを調達したMotif Ingredients、タンパク質構造シュミレーション技術を開発したDeep Mind、16GBものWikipediaの情報を、DNAに記録させることに成功 (DNAストレージ)したCATALOGなどがあります。

バイオテクは自分から少し遠い領域と考える方も多いですが、自分たちがこうあったらいいなという状況をすでに変えているスタートアップが現実に存在しています。SFの世界がすでに現実のものになってきています。
引き続き、デジタルガレージでは、バイオテクノロジー、ヘルスケア領域に参入し、サポートをして参ります。

2019年11月から実践編 実施予定!

デジタル×バイオヘルス スタートアップ連続講座実践編を2019年11月から開講予定です🧪
近くなりましたら、Twitter/Facebookでご案内させていただきます!

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Mina Akasaka
D2Garage

Open Network Lab HOKKAIDO program director / D2 Garage, inc.