【確率論】アインシュタイン物理と金融に通じるランダムウォーク

Daisuke Ishii
Daisuke Ishii Blog 石井 大輔 ブログ
14 min readAug 21, 2019

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不確実性の数理モデリング

はじめに

先週に引き続き、Team AIコミュニティメンバーのBen(米国で数学博士号取得)に数学を教えてもらっています。

今週は確率論の基礎。

使ったのは下記Harvardの教材です。

ランダムウォークとは

ランダムウォーク英語: random walk)は、次に現れる位置が確率的に無作為(ランダム)に決定される運動である。日本語の別名は乱歩(らんぽ)、酔歩(すいほ)である。グラフなどで視覚的に測定することで観測可能な現象で、このとき運動の様子は一見して不規則なものになる。

ブラウン運動と共に、統計力学量子力学数理ファイナンス[1][2]等の具体的モデル化に盛んに応用される。

視覚的理解

ランダムウォーク

  • 格子点上に各時間ステップに1格子間隔だけ 動く粒子がある(これをランダムウォーカーと 呼ぶ).
  • すべての方向について,ランダムウォーカー がその方向へ行く確率が与えられている.

• n!時間ステップ経過したときに,与えられた位 置にランダムウォーカーいる確率はそれぞれ いくらになるか.

アインシュタインのブラウン運動

ブラウン運動(ブラウンうんどう、: Brownian motion)とは、液体のような溶媒中[注 1]に浮遊する微粒子(例:コロイド)が、不規則(ランダム)に運動する現象である。1827年[注 2]ロバート・ブラウンが、水の浸透圧で破裂した花粉から水中に流出し浮遊した微粒子を、顕微鏡下で観察中に発見し[2]、論文「植物の花粉に含まれている微粒子について」で発表した[3]

この現象は長い間原因が不明のままであったが、1905年アインシュタインにより、熱運動する媒質の分子の不規則な衝突によって引き起こされているという論文が発表された[4]。この論文により当時不確かだった原子および分子の存在が、実験的に証明出来る可能性が示された。後にこれは実験的に検証され、原子や分子が確かに実在することが確認された[5]。同じころ、グラスゴーの物理学者ウィリアム・サザーランド英語版)が1905年にアインシュタインと同じ式に到達し[6][7]ポーランドの物理学者マリアン・スモルコフスキー英語版)も1906年に彼自身によるブラウン運動の理論を発表した[8]

数学のモデルとしては、フランス人ルイ・バシュリエは、株価変動の確率モデルとして1900年パリ大学に「投機の理論」と題する博士論文を提出した[9]。今に言う、ランダムウォークのモデルで、ブラウン運動がそうである、という重要な論文であるが、当時のフランスの有力数学者たちに理解されず、出版は大幅に遅れた。

ブラウン運動と言う言葉はかなり広い意味で使用されることもあり、類似した現象として、電気回路における熱雑音[10][11]ランジュバン方程式)や、希薄な気体中に置かれた、微小な鏡の不規則な振動(気体分子による)などもブラウン運動の範疇として説明される。

金融 : ランダムウォーク理論

ランダム・ウォーク理論 (ランダム・ウォークりろん、: Random Walk Theory) とは、株価の値動きについての「予測の不可能性」を説明する理論。相場の値動きを論じた多くの理論のうちの一つである。

株価の値動きは、どの時点においても長期的にも短期的にも「上昇と下降の可能性」がほぼ同じであり独立した事象であるから、過去のトレンドやデータによって将来の値動きを予測することは不可能である、とする理論である。日経平均の終値を例にとれば、今日の終値が前日の終値より高くなる確率は1/2、明日の終値が今日の終値より高くなる確率は1/2(安くなる確率が1/2、高くなる確率も1/2)と考える。

数学的に厳密なランダム・ウォークであれば長期的にも上昇と下降の可能性は同じになり、株式投資は値上がり益が期待できないことになるが、株価におけるランダム・ウォーク理論は、(著名なランダム・ウォーク論者であるバートン・マルキールの論を含めて)長期的には株価は上昇する可能性の方が高いことを前提としており、インデックスファンド投資への理論武装として語られるのが一般的である。

株価のランダム・ウォークを前提とすると、確率論による非常に明晰な数学的記述が与えられる事から投資信託の設定・運用、とりわけ派生商品によるリスク回避の必要量を測定するにあたり重視される。また価格変動(事象)の発生に大数の法則からなる正規分布が導入できることから将来の値動きに対する予測範囲を推理するなどテクニカル指標に応用されることがある(ボリンジャーバンド)。

一般にテクニカル投資の立場から「上昇(下降)トレンドでは、上昇・下降の可能性は同じではない」と反論があり、ランダム・ウォーク理論では「それは結果が出てから確認できることにすぎない」とし、未確定の将来の予測に対して「トレンドライン」を設定しないのが同理論の立場である。

市況の現実に注目すれば、たしかに長期的な「幅の広い波」や、突発的な「ランダムな波」についても、注目すべきだろう。海の波に例えると、この事がよく分かる。元々の波は、どれも「ほとんど同じ強さ」であるとする。しかし、様々な方向からの波が発生し、間隔の広い波、狭い波が重なりあい、それにより「非常に大きな波」が生まれるのである。逆に、波同士が打ち消しあい、波のない状態も起こりうる。それらを予測するのは、決して不可能ではないが、非常に困難である。

しかも突然ここに、隕石が墜落したり、台風が出現したり、南極の氷が解けたり、さらに人間が海岸の形を変えることもある。

これらを正確に予測することは、まず不可能であり、トレードでの値動きも、ほぼ同じことが言える。さらにトレードの場合は、そこに投資家たちの心理が加わることで、さらに複雑な結果を生む。

また、計算機によりランダム・ウォークをシミュレーションすると、株価チャートのパターンが見られることが知られている。[1]

これに対し、「マーケットの魔術師」の著者であるジャック・D・シュワッガーのように、著書の中でインタビューしている投資家たちが皆膨大なトレードで長年にわたって一貫して勝ち続けていることから『長期にわたって勝ち負けすることは投資家のスキルによるものであり、運によるものでは無い』という意味合いのもとに、株価のランダム・ウォーク論に対して否定的な見解を示している者も存在する[2]

カオス理論

カオス理論(カオスりろん、: chaos theory、: Chaosforschung、: Théorie du chaos)は、力学系の一部に見られる、数的誤差により予測できないとされている複雑な様子を示す現象を扱う理論である。カオス力学ともいう[1][2]

ここで言う予測できないとは、決してランダムということではない。その振る舞いは決定論的法則に従うものの、積分法による解が得られないため、その未来(および過去)の振る舞いを知るには数値解析を用いざるを得ない。しかし、初期値鋭敏性ゆえに、ある時点における無限の精度の情報が必要であるうえ、(コンピューターでは無限桁を扱えないため必然的に発生する)数値解析の過程での誤差によっても、得られる値と真の値とのずれが増幅される。そのため予測が事実上不可能という意味である。

補足:関連論文

補足:ビジネスアプリケーションとしてのランダムウォーク

車のランダムウォークと惑星との衝突確率

2018年2月6日、SpaceXは火星を横断する軌道でテスラロードスターを打ち上げました。N体シミュレーションを実行して、次の15 Myrにわたるオブジェクトの運命を決定します。軌道進化は、最初は地球との密接な遭遇によって支配されます。これらの繰り返されるカオス散乱により、次の数世紀を超えて正確な軌道を予測することはできませんが、わずかに乱れた初期条件で可能な一連の軌道を統計的に分析することにより、長期的な結果を確実に予測できます。地球との重力散乱が繰り返されると、ランダムウォークが発生します。地球、金星、太陽との衝突は、ロードスターの軌道進化の主要なシンクです。水星や火星との衝突、または木星による太陽系からの放出はほとんどありません。テスラの動的半減期は約15 Myrであり、ロードスター軌道の実現の約22%、12%、および12%が、それぞれ1つの半減期内で地球、金星、および太陽に影響を及ぼします。私たちの集団の離心率と傾きは、平均運動と永年の共鳴により時間とともに増加するため、地球上の惑星への衝突率は数百万年を超えて減少しますが、太陽への衝突率はほぼ一定のままです。

方程式のラプラシアンシステムへの接続を持つネットワーク上の確率過程

マルチホップセンサーネットワークのデータの収集をモデル化する、オープンな離散時間キューイングネットワークを研究します。データは、センサーノードで離散時間ベルヌーイ過程として生成されると想定しています。ネットワーク内のすべてのノードはキューとリレーデータを保持し、指定されたシンクによって最終的に収集されます。ノードのキューサイズを表す結果の多次元マルコフチェーンには、データ生成レートの値に応じて2つの動作レジームがあることがわかります。具体的には、データレートには重要な値があり、それ以下ではチェーンがエルゴード的で定常分布に収束し、それ以上では非エルゴード的である、つまりノードのキューが無制限に増加することを示します。 。定常性への収束率は、未臨界領域で幾何学的であることを示します。また、このプロセスと、2つのノード間の実効抵抗を見つけるという重要な問題を含むラプラシアン方程式のクラスへの接続を示します。サブルーチンは、多くの計算問題の効率的なアルゴリズムを開発するために広く使用されています。したがって、これらの問題に対する新しいクラスの分散アルゴリズムの理論的基礎を提供します。

高頻度取引のランダムウォーク

このペーパーでは、トレードタイムリターンとトレード到着のダイナミクスを個別にモデリングすることにより、高頻度のエクイティリターンのモデルを構築します。主な貢献は3つあります。まず、通常の時間と取引時間の両方での高頻度資産収益の分布挙動を特徴付けます。事前にスケジュールされた市場ニュースイベントを制御する場合、流動性の高い近月のE-mini S&P 500先物契約のトレードタイムリターンは、非常に細かい時間スケールでのガウス分布によって十分に特徴付けられることを示します。第二に、トレードタイムガウス分布を修正マルコフスイッチングマルチフラクタルデュレーション(MSMD)モデルに関連付けられたトレード到着プロセスに従属させることにより、クロックリターンの構造化された節約モデルを開発します。このモデルは、高頻度の取引間期間の優れた特性評価を提供します。このトレード間デュレーションの分布の過剰分散は、トレードタイムリターンがガウス分布であっても、クロックタイムリターンのレプトクルトシスとボラティリティクラスタリングにつながります。最後に、このモデルを使用して、市場の破綻条件を理解するために、貿易レートとボラティリティの経験的関係を推定します。私たちのモデルは、シカゴとニューヨーク/ニュージャージーの金融市場の1,200 kmの物理的な分離が、体系的なボラティリティの自然な上限を提供し、非常に重い取引期間中の市場の安定に貢献する可能性があることを示唆しています。トレードタイムの​​リターンがガウスであっても。最後に、このモデルを使用して、市場の破綻条件を理解するために、貿易レートとボラティリティの経験的関係を推定します。私たちのモデルは、シカゴとニューヨーク/ニュージャージーの金融市場の1,200 kmの物理的な分離が、体系的なボラティリティの自然な上限を提供し、非常に重い取引期間中の市場の安定に貢献する可能性があることを示唆しています。トレードタイムの​​リターンがガウスであっても。最後に、このモデルを使用して、市場の破綻条件を理解するために、貿易レートとボラティリティの経験的関係を推定します。私たちのモデルは、シカゴとニューヨーク/ニュージャージーの金融市場の1,200 kmの物理的な分離が、体系的なボラティリティの自然な上限を提供し、非常に重い取引期間中の市場の安定に貢献する可能性があることを示唆しています。

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