夫婦で世界旅行 イタリア編

先日のポストで夫婦で行っていた世界旅行について簡単に触れました。今日はその本編といういうことで、具体的にどんなことをしてきたのか、何を見てきたのか、誰に会ってきたのかみたいな話をしたいと思います。ただ、紀行文みたいなものをあんまりダラダラ書いても仕方ないので、項目を立ててサクサク進める形で書いてみます。

世界旅行のテーマ

私達は出発前にいくつかのテーマというか関心事を確認しあいました。何事もそうですが、読書でも絵画鑑賞でもそういう設定をしておくのとしておかないのとでは体験の質に大きな違いがあると私は考えています。

今回設定したテーマは簡単に言うと、

「世界の美味しいものとそれを作る人に出会う」

というものでした。さらに言うと、その出会いを通して自分達が近い将来オープンする店のヒント集めというサブテーマもありました。

ですので、世界旅行とはいえ、コテコテの観光地とかにはあんまり行っていないので、世界旅行の話が全然参考にならない人も大勢いるかと思いますが、ごめんなさい。

イタリア!!

今回訪れたのはこの6箇所。もちろんもっと行きたい場所(パルマとか)は色々ありましたが、まぁそれは仕方ありませんね。

ミラノ

ファッションとビジネスの中心都市(とのこと)。確かにオシャレにキメた若い男女が多いような気がする街です。交通の便も整っているので、どこでも気になったところへアクセスしやすいというのは結構良いポイントかも。

観光:ドゥオモとそこから伸びるトリノ通り。東京で言うと、明治神宮と渋谷のような感じかしら。

夜でも明るくて人がいっぱいのドゥオモ

治安:全く問題なし。

夜中の2時に壊れたスーツケースを引っ張って郊外を歩いていても、助けてくれる人はいるけど、怖い人には出会わない。

行くべき店:Pave

お婆ちゃんの家をイメージしたという店内は、老若男女で賑わうけど、とってもcozyな感じ。焼き菓子も定番モノからオリジナルまで幅広くハズレなし。店員の対応もとっても愛想が良くて、お客さん同士の会話も弾む。一人で長時間居ても大丈夫な感じで、シャツやバッグなどのグッズも充実。

やってみるべきこと:アペルティーボ

言葉の意味は食前酒ですが、要するにドリンク分のお金を払えば飲み屋の小皿料理が食べ放題というシステム。ミラノが発祥の文化ということで、イタリアでも徐々に他の地域に広がってきているみたい。5ユーロでお腹いっぱい。貧乏な芸術家達を支援するために生み出された仕組みらしいけど、安くて美味しいものが沢山食べられるなんてステキ!ミラノの夜を歩く際には、店の看板にアペルティーボと書かれているかを要チェック!

特記事項:やっぱり万博。

「一番大事な「食」って空気でしょ」というオーストリアの展示。まさかの本物の森を作ってしまう。

入場者数2150万人というオバケ企画。開催日数180日で割っても、一日あたり12万人。ということで凄まじい人混みでした。

各パビリオンは趣向を凝らしたものが多く結構楽しめました。今回のテーマは「食」ということで、単純にその国の郷土料理を出すのもあったり、国がもつ文化に踏み込む内容もあったり、肥満・食糧廃棄・汚染・カーボンフットプリントなどの食にまつわる社会的イシューへの提言もあったりという感じです。

デザインの力によって問題を再定義し、人々の気づきを喚起して、取り組み方を変えさせて、効果をだすっていうのはとてもスマートだなと再認識。

ローマ

全ての道はローマに通ず(らしい)。世界各国からの観光客とそれを狙う連中で年がら年中ごった返す街。観光客でもちょっとご年配の方や家族連れが多い印象。交通機関のレベルはそこそこという感じ。個人的には一度行ったらもういいかな。このあたりでは食事はトリッパが有名。

観光:個人的な好みを挙げるなら、コロッセオとサンピエトロ大聖堂。

治安:悪いとは言えないが、良くはない。

偽物のジャケットをもらって大喜びの私達

私たちは一度スリ未遂(バス車内でロマ系の少年少女5人組に囲まれるも脱出)に遭ったほか、謎のガソリン代詐欺(道を歩いていると、車から呼び止められ「ガソリンを入れたいけど自分の持っているクレジットカードが使えない。そういえば僕のたまたま持っているアルマーニのジャケットをあげるよ。もしよかったらガソリンを入れるためのお金をもらえないかな?」という感じで話が展開。かわいそうなオジサンなのか、詐欺師のオジサンなのか、かわいそうな詐欺師のオジサンなのかが判別できなかったので、とりあえずポケットの5ユーロをあげる。もちろんアルマーニは偽物。)に遭いました。

行くべき店

Mordi & Vai:知る人ぞ知る名店。市場の一角に構える小さい店だけど、ここだけ人だかりができている。強面で口数の少ないお兄さんがムッとしながら仕上げるサンドイッチは絶品の一言。私達は牛肉煮込みのサンドを注文したけど、これより美味しいのはちょっと考えられないかも。ちゃんと整理券をとって注文をしましょう。

Da Enzo:真実の口からほど近いところにある家族で経営している小さな店ですが、常に満席。これぞイタリアのマンマの味って感じ。予約していないなら座れたらラッキーぐらいで考えた方がいいかもしれません。ここのリコッタチーズを食べたときにフレッシュチーズということの意味を私は知りました。もうそこらのリコッタは食べられません。

Giolitti:ジェラートの老舗。ローマはジェラートが有名ですが、ここが一番かな。コーンタワーは一見の価値あり。

やってみるべきこと:サルメリアに入ってみる

サルメリアはサラミ屋さんという意味ですが、生ハムやチーズ、オリーブ漬けやワインなどいわゆるイタリアの発酵食品なんでもござれという感じの場所でなかなか楽しいところです。ただ、だいたいの店は狭くて薄暗くて店員さんは英語を話さないので、ちょっとした度胸は必要ですけどね。

この店に勤めて43年のエミリオさん。とりあえずプロシュット・ディ・パルマを注文。

ナポリ

ナポリは治安の悪さが有名な街ではありますが、それでもピザという光輝くスターが人々を惹きつけてやみません。もしイタリアに行ったなら、ピザのためだけにナポリに行くのは全然アリな選択だと思います。やはり別モノですね。

観光:強いて言うなら卵城かな。

治安:言われるほど悪くはない。危険で有名なスペイン地区などに足を踏み入れないなどの最低限の注意さえ守ればそこまでビクつく必要はないという印象。ただしクラクションは常に鳴りっぱなし。

行くべき店

Sorbillo:言わずと知れたナポリピザの名店。いつ来ても凄まじい人気。1時間は並ぶことを覚悟する。ここのピザは私の人生の栄えあるベストピザに輝いております。(ちなみにナポリでは店の前に受け付け係がいるので、その人を強引に(←重要)捕まえて名前と人数を告げると番号をもらえる。その番号札が呼ばれると中に入れるというシステム。イタリア語で100までをどのように言うかは分かっておいた方がいいかも。)

照明が非常に暗く、内装がださいので、全くフォトジェニックではないのです。ただ味は絶品。

Pizzeria da Michele:こちらも有名店。安定の人混み。ちょっぴり殺気立つ客達。

やってみるべきこと:ピザ屋めぐり。

とびきり美味しくて安いピザ屋がそこら中にあるので、ひょいと飛び込んでみるのもいいかもしれません。

特記事項:世界屈指の公共交通機関ダメダメ都市だと思います。基本的に説明不足でサービス精神不足という感じ。普通の路線バスを待つのに1時間半ほどかけたこともあります。さらにバスのチケットがどこでも買えるわけではないという謎の仕組み。仕方なくチケットなしで乗ったら交通警察にしょっぴかれて50ユーロの罰金を食らいました。観光客を狙い撃ちしている警察に腹が立ったので、「他の乗客のチケットも確認するべきでしょ」と主張すると、他の乗客から「何を言ってんだ、さっさと降りろ!」というブーイングが巻き起こってしまいました。絶対みんな無賃乗車だよ、これ。

カターニア

やってきました、シチリア島。カターニアは東側に位置する主要な街です。イタリアでもう一度行きたい場所はどこかと聞かれたらカターニアと答えるぐらいに好印象です。コンパクトな街づくり、気さくな人々、美味しくて多様な食材などなど挙げだしたらきりがありません。

観光:迫力満点の魚介市場 Piazza Alonzo di Benedetto

治安:私の感覚ではイタリア随一のレベルで良いです。夜道を歩いていても全然大丈夫。

行くべき店

Antica Sicilia:魚介の使い方がやっぱりウマイ。魚介のもつ可能性の奥深さを感じさせる料理の数々。

FUD:カターニアとパレルモにある次世代ハンバーガーショップ。店内はとても洒落ていて勢いがある。シチリアの地元の食材に誇りを持っていて、それを広めていこうという野望に燃えている。肉も各種(ロバやバッファローやウマも!)選べるほか、ビールにもこだわっていて、どれも全部めちゃめちゃ美味しい。

右:あまりのおいしさにビックリしている顔

やってみるべきこと:魚市場でお買い物

是非この活気を自分の肌で感じてみるべきだと思いますね。もしできるなら実際に触ってみたり、店員としゃべって交渉したりして、実際に買ってみることをオススメします。とっても新鮮で美味しい素材がとっても安く手に入りますよ。

なぜか市場にはゴツいオジサマばかりなのです

パレルモ

パレルモはシチリア島の北側にある港町です。私達は数日しか滞在できなくて、さらにその数日がほとんど雨だったので、正直あんまりうまく楽しむことができなかったのが心残りです。ほどよい田舎な感じが好きな人は好きかなという印象。

観光:なんかあるかな?大きな市場とか?

治安:裏道に行くとちょいワルな感じ。

行くべき店

Bisso Bistrot:古い建物を最小限の改装でそのまま使っていて、内装がとても洒落ている。料理もどれも美味しくて、パレルモ名物の豆のペーストを揚げたものが印象深い。

Cioccolateria Lorenzo:裏通りにある知る人ぞ知る人気店。カフェなのに夜にめちゃ混む不思議な店。結構全体的に味が甘めなので、甘党の人はぜひ行って頂きたい。店主のロレンツォがご機嫌ならホットチョコレートがもらえるかも。

カリアリ

カリアリは地中海に浮かぶサルディニア島の一番大きな街。古くからイタリアだけでなく他の地域ともやり取りがあった影響もあり、独自の食文化が発展しています。とくに魚介類をふんだんに使う料理が有名で、いずれもまぁ美味しいのです。ちなみにペコリーノ・ロマーノの産地でもあります。車で走っていると島中にヒツジ・ヤギ・ウシをたくさん目にすることになります。サルディニア島ももう一度行きたい場所のひとつ。

観光:コンパクトな坂の街とか城とか

治安:良好!

行くべき店

INU:サルディニアワインをいかに美味しく飲むかがテーマのバー。出てくるおつまみも流石サルディニアという感じで美味しいし、ワインがやっぱりウマイ。店員もフレンドリーで良い印象。

La Tavernetta:これぞイタリアレストランというお店。地元の人にオススメを聞いた際に名前が出てきたので行ってみたらかなり美味しくて、ありがとーって思いました。今でも忘れられない一皿。日本で言うカラスミに相当するボッタルガを使ったパスタなんて、逸品の一言ですな。

Dulcis Pasticceria:カフェ的なところだとココがオススメ。軽食もあるし、紅茶がクスミティーを使っていて美味しい。内装もイマドキな感じで洒落ています。

やってみるべきこと:サルディニア島を車でまわる。市場に行く。

  • サルディニア島はイタリア本土とは比較的離れているという土地柄もあって、言葉も食事も自然環境も他ではみられない独自なものになっています。もし一日ぐらい時間があればそこらへんでレンタカーを借りて島のあちこちに遊びに行くのも面白いと思います。
  • 市場はここでもかなり面白いです。名前は忘れましたが、街中にかなり大きな2階建ての市場があり、すごい活気が渦巻いています。

イタリア編のまとめ

こんな感じで、イタリアではいくつかの街をめぐる旅をしていました。

イタリアは一言でいうと、「伝統」と「多様性」の国でしたね。

「伝統」の部分でいうと、例えばコーヒーは深入りのエスプレッソが主流(というかほぼそれ。ウンカフェと言うとエスプレッソが出てくるので注意)で、日本やアメリカで見るようなハンドドリップ(プアオーバー)なんて見つけるのは相当難しいです。お店もきっと50年以上前からあるのだろうなという店構え&スタッフの様子ですし。(ちなみに車はいまだにほとんどがマニュアル車です。)チーズやハムといった伝統的な食品はDOP(Denominazione di Origine Protetta)という制度で厳しく管理・保護されています。DOPとは

原産地保護呼称。素材、生産、加工の工程すべてが指定地域で行われ、伝統的製法による特有の製品であることを保証。人工着色や添加物の使用などは一切禁止されているほか、製品ごとに細かく規定されている。(by 輸入代理店アサヒグラント株式会社HP)

というもので、要するに「プロシュット・ディ・パルマ」とか「ペコリーノ・ロマーノ」みたいなもののパクリモノを排除していく仕組みのことです。生産工程に非常に厳しい規定を設けたうえで、それをクリアしたものだけに認証を与えることで、原産地に根付く食文化や伝統を守ろうというものですね。

伝統を保護するというのは一側面からみるときっと素晴らしいことなのですが、他の側面から推測するとおそらく参入障壁が恐ろしく高いのだと思います。例えば街中の飲食店で20〜30代の若者がオーナーとしてやっているところは非常に限られるように見受けられます。また他のヨーロッパ諸国では普通に見られる移民がオーナーの店も(エスニック料理店以外は)ほとんどないように思いました。ちゃんとインタビューしたわけではないので推測ですが、家族経営が根っこにあって、オーナーが年老いたときに家族の誰かにその座を譲るという形で多くのビジネスが続いてきたのだと思います。だから「革新」という概念があまり育っていないということも言えるでしょう。

「多様性」という部分でいうと、ローマ帝国以来、イタリアはずっと都市国家乱立という形で歴史を紡いできた地域でして、ようやく「統一」されたのがほんの150年前のことです。統一以前は外圧に対抗するための一時的な同盟関係などを結ぶことはありましたが、基本的に「あの山までがウチ、山向こうはソト」みたいな世界がイタリア中に広がっていました。そういう環境では食文化もそれぞれの地域ごとに独自の発展を遂げることになります。今でこそ「イタリア料理」というと一つのジャンル(パスタ、トマトソース、ピザ、ラザニアなどなど)のようなものをイメージしますが、本来そのようなものは存在しないのです。強いて言うなら、「ローカルのものや旬のものを手数をあまりかけずにシンプルに味わう」というのが「イタリア料理」の本質と言えるかもしれません。パスタとかピザとかはその哲学のひとつの表現にしか過ぎないのです。

そういう背景もあって、イタリア人は自分の出身地域こそが自分のアイデンティティであり、イタリア全体のことまではそこまで意識しないという部分もあるように思います。そして他の地域をこき下ろすことが一つの大きな娯楽として機能しているのも面白いです。

色々と良いところもそうでないところも好き勝手に書いてきましたが、世界がMORE, FASTER, BIGGERな感じになっている昨今、イタリアみたいな国があることはきっと素晴らしいことだと思うのです。「100年前にこのやり方で美味いチーズが作れたんだから100年後もそのやり方でいいじゃん」という国。あ、そうそう。ちなみにその国がダモンテを生んだのでした。