CES2015
今週ラスベガスで行われているConsumer Electric Show(CES)に参加した雑感。
CESとは?
毎年1月上旬(第1~2週)に4日間かけてラスベガスで行われる世界最大の家電見本市/Consumer Electric Show(CES)。1960年代から開催されている歴史あるイベント。
例年多くの家電メーカー等のコンシューマー向けメーカーが自社製品を展示、業界のキーマンによる基調講演や各企業の新製品の発表など、コンシューマー向けプロダクトに対するその年のトレンド/方向感を示すイベントとなっている。古くは1970年のVHS、2001年のxboxなど時代を席巻した多くの新製品がこの場で発表された。
ラスベガスの街全体を会場とすることで集客規模はかなり巨大であり、昨年は延15万人の来場があった。
CESの変化
3年ほど前までは大手企業のみ参加するイベントだったが、昨今の3Dプリンタの出現や製造技術などの技術革新により巻き起こったメーカーブームによりメーカー系startupが台頭、本イベントに参加するstartupが増大。その結果、2年ほど前よりstartupのみを集めた会場ができるなど、参加者(展示側)に大きな変化が出始めた。
昨年のCESではまさにIoT元年と呼べるkeynoteが相次ぎ、ハードウェア x IT又はmobile app系の参加企業が大幅に増えた。また近い時期に行われるmotor showのみ参加してきた自動車会社の参加が昨年よりさらに増えた。
CES2015のトレンド:今年の会場に多く出展していたのは以下の分野。
<Smart Home>
PanasonicやSamsung、Phillipsなどの大手家電メーカーに加え、QualcommやAlibaba、Nest(google)等ホームオートメーションや家電管理系の展示をしていた
セキュリティ系で監視カメラ、スマートロックなど、スマートフォンと連携するソリューションを提供するstartupも多数参加していた。
ご存知の方も多いが、過去白物家電メーカーは同様のコンセプトを呼び方を変えたりしながら進めてきたが一向に浸透しなかった(一昨年samsungはevernoteをintegrateした冷蔵庫や、tweetするエアコン等だしていたが、全く受け入れられなかった)。一方Nestのようにuse caseをlaser focusした製品は成功しており、startupもこの分野で大手に対抗できる手段を見せてた。startupには家電分野は参入障壁が高いと考えられていたが、トータルソリューションではなく個別ソリューションに活路を見いだせそう。ネット系のサービスでは良くあるパターンだが、まずは一つのプロダクトでユーザーをつかみ、徐々にプロダクトのスコープを広げていく手法はsmart home分野でも成り立つ。実際Nestは空調管理の分野からsmoke detectorに領域を広げている。また、他の家電メーカーとpartnershipを結びNestをhubにしてカギや電灯、洗濯機などとの連携を発表していた(https://nest.com/blog/2015/01/05/what-works-with-nest-at-CES/)。
<Self-Drive Car/Connected Car>
今年はトータル10社の自動車メーカーが参加し、過去最高を記録。(日本メーカーはトヨタとマツダ)
Ford社長が1番最初のkeynoteに登壇、EVやその他車のハードウェアに関する話しは一切なく(※)、Smart Mobility Planというハードウェア/ソフトウェアともにオープンソースとしたOpen XCプロジェクトに基づき、3rd パーティーとのコラボレーションの話しに終始。一方で我々の投資先であるDashのような非メーカーとしてconnected carに参入している会社の展示は皆無だった。(※同社CTOが個別の講演でself driveやself parkingに関する発表を行っていた)
メルセデスがself driveに関するコンセプトを発表。audiも昨年発表したself drive carでサンフランシスコ~ラスベガスの自動走行を実施し無事CES会場まで到着したと発表した。
Fordは自動車メーカーとして次のステップに進む必要性の認識とコミットを感じた。BMWやAudiはandroid auto/car playへの積極的な関与が聞かれるが、展示を見る限りまだ踏み込んで外部との連携をしていくようには見えなかった。
self driveに関しては各社実験段階で有るもののメルセデスのように参入を決定したメーカーが増えてきており、当面は各社独自技術で実現すると見られるが、カメラや各種センサー、GPS/地図情報のinput情報の生成とそれをprocessするbigdata処理関連技術、個別のパーツを見ていけばstartupが参入可能な領域と見ている。
自動車は非常に多くのプレーヤーが存在し、各レイヤー(アプリ/カーナビ/OS/通信/コンピューティング/車本体)からto Cとしてのサービス/プラットフォームの領域を狙っている。
<VR/AR>
Oculusを筆頭に、samsung、Panasonic、Sony、東芝などの家電/AV系メーカが商品を展示。周辺機メーカーのRazorも製品を出してきた。どのブースでも体験デモには長蛇の列が並んでおり、関心は引き続き高い。
既に昨年depth sensorを搭載した3Dカメラは多く出たようで今年はあまり出展がなかったように見えるが、Intelが新しいdepth sensorと制御ソフトを提供を発表し、今後安価に3Dカメラがスマホ/タブレット/PCに入っていく事で、一般ユーザーが簡単に3Dコンテンツの作成ができたり、gesture controlなどの新しいUIが体験できるようになる。
コンシューマーがコンテンツを作れるようになることで、今のところ利用用途や場所が限定されるが、新しい使い方をユーザー自らが創り出すトレンドが出現すればさらに飛躍的に発展していくと思われる。
<fitness/healthcare(activity tracker)>
今回の展示の中で最も数が多かった分野がactivity tracker(正直お腹いっぱいなほど出ていた)。fitnessであればFitbit/Jowborne、watchであればPebble/sony/samsungで趨勢が決まっているように見えるがstartupを含め多種多様なプロダクトを展示していた。仔細にプロダクトを比較した訳ではないが、できる事はどれも変わらないように見えた。
そうなると差別化の要因としては情緒面(デザイン)もしくはアプリ側のUX(レコメンデーションの精度など)に絞られてきてると感じる。一方でFitbitのアクティブユーザーが2013年以降漸減しており、fitnessという人の行動習慣を変える必要がある分野の難しさを露呈している。fitnessに限らずITで人々のmindや行動習慣を変えられた事例はまだ出てきていないが、近い将来必ずbreak throughが出てくると期待したい。
<Drone/無人航空機>
AIを搭載し特定の人物/ものをターゲットに追従できるものや、超小型のdrone、堅牢性/パワーを強化したものなど、最初のdroneの発展系が数多く出品されていた。active trackerの次に出展が多かった分野。
なかでも中国系のstartupが数多く出展していたが、廉価版としての位置づけ。新機能や新しい技術を使ったものはなかったように思う。
つい先日FAA(日本の国土交通省相当)がDroneの不動産広告での利用を一部許可するとの報道があったが、基本的に商用利用は規制により大きく制限されており、ユースケースがまだ出てきていない中ハードウェアだけが多くの進化を遂げている。一方で安全性、信頼性、事故が起こったときの対処など解くべき課題/問題点はまだまだ大きい。
<その他>
Dishによるinternet TV(Sling TV)の発表について多くのメディアが取り上げているとおり大きなインパクトを与えた(best of ces awardも受賞)。このサービスにより通信<>放送のregimeを大きく変えていく転換点になる可能性は高い。
Privacy/Security関連ではまだmobile payment系のサービスが出てきていたが既存のクレジットカードの補完サービスとしての位置づけで、新しい取組みのものはなかった。
以下は展示のハイライト
<Smart Home>
・Alibabaの展示のフォーカスをsmart homeに持ってきていた。
<Connected Car>
BMW: connected carを唱っているが非常に限定的なアプリケーションのみ。fordと違いまだまだ疑心暗鬼な状況が読み取れる。
新しいヘッドライトのソリューション(コンセプト)。スピードや周囲の明るさに合わせライトが照らされる状況を自動で変える事ができる。スピードが出るとライトの照射範囲を増やす(上向き)が、前方に車が走っていたり、対向車を認識するとそこにライトが当たらないように調整する。また赤外線を使い、街灯のない道の路肩に駐車してある車や動物を認識するとそこにライトをあて注意を促すなど、ライトにもインテリジェンスが組み込まれる。
mobility serviceを実現する為のコンソール(車はi3)。
<VR/AR>
OclulusやRazorの体験デモには長蛇の列
<Wearable>
昨年末に大型の資金調達($40M)を実施したmisfit. まだstartupながら、メイン会場にかなり大きいブースを構えていた。
彼らの特徴は、毎日身につけるwearableだからこそ無機質なgadgetではなく、デザインを含めた情緒面でのコンセプトを押し出して他と差別化をしている。会場ではスワロフスキーとのコラボを展示。様々あったactive tracker系で唯一デザインを重視しているプロダクトとなっていた。
<大手メーカー系>
Samsung, Sony, Panasonic, Whirpool, Philipsなどの老舗メーカーに加えHaier, Hisenseなどの中国系メーカーも大型なブースを構えていた。
・Samsung
最も大きなブースを開いていた会社の一つ。スマホ/テレビの主力商品の他にVR/AR系のヘッドマウントディスプレイや白物系など網羅的に展示
展示の中央に昨年買収したsmart homeプロダクトを提供するsmart thingsのコーナーを置き注目を集めていた。
・Sony
ソニーも非常に大きな円形のユニークな形のブースを構えていた。主力はsamsung同様スマホ、テレビ、AV機器やカメラ。8Kテレビの展示をしていたが、個人的に気になった製品は残念ながらなかった。
・Qualcomm
IoE(internet of everything)の提唱者である為かチップメーカーでありながら展示は多岐にわたる。smart home, connected car, activity tracker, droneなど非常に広範囲のユースケースを展示。
<Drone/無人飛行機>
数多く無人飛行機関連の企業が展示していたが、老舗Parrotが一番大きなブースを構えていた。
<その他>
cloudfundingのIndiegogoもブースを出展。同プラットフォーム上で資金調達に成功したプロダクトが周りに並んでいる。
日本からは大阪商工会議所、JETROがstartup/中小企業をまとめて展示。JINSやRing、Whillは個別にブースを構えていた。JINSはCESのDigital Trends Top Tech awardを受賞
Originally published at dminamid-jp.tumblr.com.