Las Vegasにstartupを −地方活性化に向けて−

先般、Las Vegasで行われたcollision conferenceに行ってきた。このイベントは元々zapposの会長であるTony Hsiehが地元Las Vegasの振興に向けて進めているプロジェクトの一貫で始まったtech event。2014年に第1回が開催され、今回が2回目。今年から運営がヨーロッパで同じようなtech eventを行っているWeb Summitが行っている。

今回は千を越すstartupが集まったようで、投資家陣も有名どころが集まっていた(同じ期間にNYCでTechCrunch Disruptが行われていたにも関わらず)。欧州のイベント屋が開いた為か、フランス、スペイン、フィンランド、イギリス、ドイツなどヨーロッパ全域からのstartupも多数参加していた。

会場はLas VegasのダウンタウンにあるWorld Market Centerという催事場を使って2日間に渡って行われた。会場内はDowntown(コンシューマー向けサービス)、Marketing、Enterprise、Buildersというカテゴリに分かれ整然とstartupがブースを構えており、1日交代で入れ替えされていた。

事前にスクリーニングされたstartupはpitchに登壇し、それぞれのビジネスプランを競った。今回優勝した会社はre3Dという非常に大きなものをプリントできるgigabotという商品名の3Dプリンターを提供している会社だった。

個人的には、pitchに参加していなかったが、ブースを2日間歩き回って一番気に入ったのは電気で駆動するジェットエンジンを搭載した2人乗りの飛行機を提供するドイツの会社、Lilium Aviation

写真は合成。まだ試作機の段階で人を乗せた検証までできていない。
翼を折り畳む事ができ、自動車として走行も可能となるよう設計する予定らしい

完全に投資対象からは外れるが”大きな夢”としては、かなり面白い部類のプロダクト。2人乗りで500km飛行できるらしい。追加のバッテリーを搭載した場合(その分乗員数は1人になるが)、理論上最長で3000kmを飛行できるようになるとの事。垂直離陸もでき、動力は違えど電気自動車としても機能する。そもそもまだ模型もできていない状態ではあるものの、夢がある。

というような結構面白いstartupも参加していたeventではあったが、何故Las Vegasなのかしかもstripではなくdowntownなのか、と言う疑問が頭をよぎった。冒頭にTony Hsiehのプロジェクトの一貫と述べたがこのような取組みを行っているようだ。

とあるインタビュー記事の中でTonyは

Hsieh’s goal is to make Vegas the most “community-minded,” smartest city in the world. He also wants to make it a tech hub.

と言っている。今VegasはStripと呼ばれるダウンタウンから車で10–15分離れたLas VegasBlvdを中心にBellagioやMGM、Ceasers Palaceなどの超大規模高級ホテルが立ち並ぶ一体が栄えており観光客が集まるだけでなく、世界最大の見本市であるCESが開催される場所にもなっている。Stripが栄えていく一方でダウンタウンは色あせた街になりつつある。(実際立ち並ぶホテルもStripのそれに比べるとひどく古ぼけ、煤けた印象をうける)

そんな街の廃退を止めるべく、2010年からプロジェクトを開始。2013年にはHendersonというLas Vegasに近接した街にあったZapposの本社もLas Vegasダウンタウンの旧市役所跡に移転し、1500名もの社員もダウンタウンに引越させたようだ。台湾で生まれて、San Franciscoで育ったTonyが何故Las Vegasに力を入れているのか不明ではあるが(インタビューでは、Downtownにあるバーが気に入っていつでも通える距離にいたいと行っていたが本当かどうかは定かではない。。)、個人資産$350Mもの資本を投資しており、その本気度がうかがえる。その$350Mの使い道だが、内訳は以下のようだ;

  • $200 million in residential and real estate
  • $50 million in tech startups
  • $50 million in small businesses
  • $50 million in arts, education and culture

2点目のtech startupsへの投資だが、既にvegas tech fundとして90社以上への出資を行っている。我々も出資しているAnyperkに共同出資を行っているが、彼らのポートフォリオをよく見ると必ずしもLas Vegasの会社に限った話しではないようだ(AnyperkもSFの会社だし)。また、音楽やアートのイベントも頻繁に開催されたり、もの作りやクリエイティビティ、アントレプレナーシップを体験を通じて教えるような小学校にも協賛しているようだ。

これらの活動を通じてどれほどの人がLas Vegasに興味を持ち、実際に移住してきているか数字は確認できなかったが、地方活性化・再生に向けて一つのベンチマークとなる取組みをだと思う。今はTonyを中心としたネットワークの中で口説いた人たちがあつまるようになってきているとの事だが、ネットワークエフェクトで人が人を呼ぶような流れができれば、彼の言うcommunity-minded smart cityの実現もできるのではないか。一人の人間の行動で街がどこまで変わっていけるのか、非常に興味深い取組みである事に間違いない。

翻って日本の各所でstartupを軸とする地方創生・再生に向けた取組みが実施されているようだが、結局は人を引きつけるコミュニティが作れるかどうかが大きな鍵となると思う。ましてや今やstartupバブル・ブームの域を出ない状況で、きちんとしたstartup communityを創り出せるかどうかは、金や箱物以外の”魅力”をどのように作っていくかによって決まって来るだろう。ある意味startupが作るプロダクトと同じで、きちんとしたproduct market fitを創り出せるのかどうかにかかっている。さもなければ持続的な事業とはならず、バブルがはじけ、ブームが去った後は何も残らないだろう。

Downtown Project自体まだ始まって5年程であり、街を見る限りまだまだ途上である事は否めないが、10年後、20年後の街がどうなるのか楽しみだ。日本でも同様のワクワクするような地方活性化の取組みが出てくる事を期待したい。